「ただいま」
家に帰ると、誰もいなかった
今日は妹2人も部活で遅いし、両親も仕事
スマホが、通知を知らせた
見ると、ラウールからだった
『今どこ?』
『家に帰ったところ』
すぐに既読がつく
『俺も今から帰るところ』
『気をつけてね』
そう送ると、可愛い猫のスタンプが送られてきた
「ふふ……」
部屋に行き、勉強机に座る
少し気になって、あることを調べる
一時間ほど経つと、母親に呼ばれた
夕食らしい
夕飯を食べ、風呂に入り、部屋に戻る
さっきの続きをする
気づけば12時を周っていた
これ以上は夜更かししたくないので、ベッドに潜る
次の日も、学校の休み時間、隙あらばそれをやっていた
友達に、”なにやってんの”と言われても、気にしない
彼に会える日を楽しみにしながら___
1週間ほど経ち、基本的なことは覚えられた
そしてついに、今日、彼とあの喫茶店で会うことになった
放課後を楽しみにしながら、授業を受けた
放課後、喫茶店に行くと、彼はいなかった
この前と同じ席に座ると、練習をする
ドアを開ける音がして、目を向ければ、彼が入ってきていた
彼は俺と目が合うと、くしゃりと顔を崩して、俺の方に来た
向かい側に座ると、俺はスマホを取り出す
「見て欲しいものがあるんだけどね、」
それが、文字になる
すると、それまで画面を見ていた彼が、こちらを見る
目が合う
俺は、その目から視線を逸らさず、手を動かす
《オレノナマエハミヤダテリョウタデス》
彼は、目を瞠る
そして、スマホを取り出し、文字を打つ
『練習してくれたの?』
俺が頷くと、溢れんばかりの笑顔の華を咲かせる
「でも、基本的なことしか覚えてないから、まだ会話とかはできないけどね」
『それでもいいよ』
『覚えてくれただけで』
そう言って胸の前で開いた手を交互に上下に動かす
「……嬉しい?」
『もちろん』
そう言われて、俺も、嬉しかった
「これからさ、手話教えて?」
『喜んで』
それから色々なことを教えてもらった
それを使い、会話をしたりもした
それが、楽しかった
“スマホ”という道具を使わなくても、
ラウールと会話出来ることが
嬉しかった
家に帰り、手話が何か、進路に繋がるかもしれないと、手話に関する仕事を探すことにした
出てきたのは、
手話通訳士
手話通訳士とは、聴覚障害者と健聴者の会話を助ける仕事
聴覚障害者は手話で言葉を表し、それを健聴者に声で伝える
健聴者は声で言葉を表し、それを聴覚障害者に手話で伝える
そういう仕事だった
それを見た瞬間、”やりたい”そう思った
理由は、ないけど、でも、やりたいと思った
やってみたかった
今まで、誰の役にも立てなくて、挙句の果てには進路で色んな人を困らせて
でも、”手話通訳士”という仕事で、聴覚障害者と健聴者が喜んで貰えるなら
彼らに喜んで貰えるなら
やりたいと思った
母親が帰ってくる
「またスマホ?勉強は?大丈夫なの?」
「勉強してくる」
俺は部屋で、今日習った手話の復習と、新しい手話を勉強した
夕飯で呼ばれると、家族みんな揃っていた
俺は、今日ラウールから貰った紙を持ち、ダイニングに降りた
座ると、俺は両親の前に、その紙を出した
「これ、見て欲しいんだけど」
2人で紙を覗き込む
「手話教室…?」
母が呟く
「これが、どうしたの?」
母に問われる
「これに、通わせて欲しい」
「これに?どうして?」
また、母
父はじっとチラシを見つめている
「俺の友達に、耳が聞こえない人がいるんだ」
「その人と話す時は、声を文字にしてくれるやつで話してたんだけど、」
「その人は文字をいちいちスマホに打ってくれて、それを無くしたいって思ったから」
2人は黙って話を聞いてくれた
「手話なら、スマホなんか使わなくたって、会話が出来る」
「それに……」
一瞬、迷った
手話通訳士になりたいと言うことを
なにそれ?と言われ、ダメと言われるのが怖かった
でも、やりたい
手話通訳士を、やりたい
「それに、手話通訳士になりたいから」
「そこの教室は、手話通訳士資格の勉強ができるんだよ」
「だから、行かせて欲しい」
「でも……」
母が、迷う
そして、父に視線を投げる
「……いいと思う」
「涼太の好きなようにしたらいいと思う」
「じゃあ……」
「諦めずにな」
「……うん、ありがとう」
嬉しかった
早く、ラウールに伝えたかった
『はいオッケー!!』
「お疲れ様ー」
そう言ってふっかから水を貰う
「ありがと」
「これから辛いと思うけど頑張れよ」
「ふっかに言われたくないな」
「なんだよ笑」
「ふっかぁ?そろそろ戻ってきて?」
「はぁーい、じゃ、頑張れよ」
……どうやら岩本さんも嫉妬してしまったらしい
Snow Manってもしかして嫉妬する人半分占めてる?
まぁ愛情深いってことで
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