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#ドアマットヒロイン
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長兄でありながら、私はあまりにも無力だった。
品行方正、頭脳明晰、剣技や魔法も右に出る者はいない。次期国王として申し分ない──などともて囃されているが、弟たちを助ける知識も技術も持ち合わせていない愚者だ。
それに比べて弟や妹は、第三王子カリストと第四王子アウジリオの黒蔓痣死呪を解くため幼い頃から努力してきた。
第二王子ルーファスは幼い頃から薬学の勉強を始め、第五王子ジルベールはお祖母様と共に魔導具の研究を進めた。
第一王女クローディアは治癒魔法の修行に出て、上位治癒魔法や解呪方法を習得したのだ。
シュプゼーレ聖魔法国の王家には、代々黒い痣を持つ者が生まれる。いつしか黒蔓痣死呪と呼ばれ、どんなに手を尽くしても30まで生きられないと記述には記されていた。
第三王子カリストは間に合わなかった。幼い頃から数学を愛していて、様々な書物を書き記していた。とても頭の良い、心優しい子だった。
二十歳という若さで亡くなった時、私は辺境地の討伐で死に目には会うことは叶わなかった。葬儀の時、第四王子アウジリオは「次は自分の番だ」と覚悟した姿が痛ましくて、何も出来ない自分が心底悔しくて、腹立たしくて堪らない。
第四王子アウジリオは本を読み、物語を書くのが好きなのようで、私や兄妹たちのことを書き記すとその日から日録を付けることが増えた。それと子供用の夢物語も書いている。
本当は冒険家になって外を旅したいのだろう。昔、こっそりと自分の夢を話してくれたのを覚えている。
「弟一人守れない者が王など……っ」
***
年を重ねるごとに焦っていた。
カリストを失うだけでではなく、アウジリオまで逝ってしまったら。そう年々不安な空気が王城内に漂っていた。
しかしそれをアッサリと解決する者が現れた。第五王子、ジルが婚約したという天才魔導具技師の令嬢が作り出したという。彼女は王家の秘宝とされている魔導懐中時計の修復だけではなく、その中に秘匿されている知識を全て理解していたという。
さらにアウジリオの健康回復を考えたレシピに、ルーファスが陥落した。「ジル。彼女を師として仰ぎたいのだけれど、是非その叡智を間近で学びたい」と言い出し、命の恩人であるアウジリオの好感度は天元突破している。
クローディアはジルの婚約者というだけで、無条件で受け入れていた。早く会いたいと浮かれていた。まあ、私としてもジルが選んだ人なら間違いは無いだろう。会うのが楽しみではある。
問題はアリーシャ・クレスター公爵令嬢だ。
なんとしてもジルの婚約者から守らねば!