通りにはたくさんの音が満ちていた。
行きかう人の足音や引いているリアカーのようなものの車輪の音も、叫ぶように誰かを呼ぶ声も、そのどれもが俺達の間をただ通り過ぎていた。
黙り込んだまま 幸造(こうぞう)さんは林老人を見つめているし、林老人は 俯(うつむ)いたままだ。
やがて、幸造さんが手を差し出した。その手に気がついて林老人はゆっくりと顔を上げる。
「……ありがとうな」
その言葉の意味をはかりかねたように、林老人が口を開けてから、また閉じた。
「生きて、くれて。その年まで生きてくれて。それに、迎えに来てくれたんだろ、父さんを」
林老人は泣きそうな顔で首を振る。
「俺は、俺は……逃げたんだ。母さんも、周造も置いて、逃げて……父さんが俺達を探してるって知ってたのに、逃げた。逃げたんだ。逃げて逃げて……逃げ続けた」
「そうか」
林老人の頬にとうとう涙が流れ************
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