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45
#ntjo組
ゆかボンド
30
朝。
「…………」
俺はベッドの上で、ぼんやりと天井を見ていた。
今日は日曜日。
大学はない。
バイトも昼から。
つまり、あと二時間くらいは寝ていられる。
「……最高」
そう呟いて、もう一度目を閉じようとした。
「らだ男」
「…………」
「らだ男」
「……んー?」
「起きて」
「あと五分……」
「お腹減った」
「…………」
目を開けた。
「お前、それ起こす理由として定着させるつもり?」
「うん」
「やめろ」
ベッドの横には、みどりが立っていた。
いつも通り。
……のはずだった。
「…………?」
俺はみどりを見つめる。
「お前さ」
「なに?」
「なんか……元気なくない?」
「そう?」
「うん」
いつもなら朝から「腹減った」と騒いでいる。
なのに今日は、妙に大人しい。
「……お腹減った?」
「ちょっと」
「ちょっと!?」
俺は思わず起き上がった。
「お前が『ちょっと』って言うの、初めて聞いたぞ」
「そう?」
「そうだよ」
みどりは小さくくしゃみをした。
「くしゅん」
「…………」
「…………」
「風邪?」
「分からない」
俺はみどりの額に手を当てた。
「熱……は分からんな」
そもそもドラゴンの平熱なんて知らない。
「どうしよう」
「どうしようって……」
俺はスマホを見る。
検索する。
『ドラゴン 風邪』
「…………」
当然、まともな情報は出てこなかった。
「役に立たねぇ……」
「病院?」
「……それも無理だろ」
受付で、
「このドラゴン、風邪っぽいんです」
なんて言えるわけがない。
俺はしばらく考えた。
「……とりあえず、今日は休んどけ」
「うん」
「飯、食えそう?」
「……肉なら」
「病人が肉を要求するな」
「食べたい」
「元気じゃねぇか」
昼。
みどりはソファで寝ていた。
俺はその隣でスマホをいじっている。
「…………」
静かだ。
いつもならテレビやゲームの音。
「腹減った」の無限ループ。
それが今日はない。
「……なんか変な感じだな」
俺はみどりを見る。
小さな身体が、静かに上下している。
すると、みどりの身体から、ほんの少しだけ光が漏れた。
「…………?」
緑色の淡い光が一瞬だけ、身体の周りを包む。
「……今の何?」
「…………」
みどりは眠ったまま。
光はすぐに消えた。
「…………」
俺は黙ってみどりを見つめた。
気のせいだったのかもしれない。
そう思うことにした。
夕方。
コンコン。
玄関をノックする音がした。
「ん?」
俺がドアを開ける。
「よ」
「恭也」
「お、らだ男。暇?」
「いや、今ちょっと――」
恭也が部屋の中を覗く。
「……みどりは?」
「寝てます」
「寝てんの?」
「今日ちょっと具合悪いみたいで」
「マジ?」
恭也が靴を脱ぐ。
「大丈夫か?」
「たぶん」
恭也はみどりのそばに座る。
「おーい、みどり」
「…………」
「寝てるか」
「うん」
「珍しいな」
「ですよね」
恭也は少し考える。
「……何か食わせた?」
「肉」
「病人に?」
「本人が要求したんで」
「それはもう元気じゃん」
「俺もそう思った」
すると。
「……う」
みどりが目を開けた。
「恭也」
「おう」
「ゲーム」
「今日は休みな」
「…………」
「なんで悲しそうなんだよ」
夜。
みどりはすっかり元気になっていた。
「腹減った」
「復活したな」
「肉」
「結局それか」
俺は冷蔵庫を開ける。
「今日は特別な」
肉を取り出す。
「やった」
みどりが嬉しそうに笑う。
その様子を見て、俺も少し安心した。
「……よかった」
「なにが?」
「いや、なんでもない」
「らだ男」
「ん?」
「ありがとう」
「…………」
「心配してくれた?」
「……まあ」
「嬉しい」
「…………」
なんとなく気恥ずかしくなって、俺は目を逸らした。
「ほら、食え」
「うん」
みどりが肉を食べ始める。
「……うまい」
「そうか」
「うん」
いつもの光景。いつもの会話。
だけど、俺は今日、見てしまった。
あの光。
あれは一体なんだったのか。
聞こうと思った。
けれど。
「らだ男」
「ん?」
「明日も肉?」
「明日は普通の飯」
「…………」
「なんでそんな顔するんだよ」
「肉がいい」
「却下」
「…………」
「その顔やめろ」
「肉」
「しつこい!!」
結局。
俺は何も聞けなかった。
――そしてその夜。
俺が眠ったあと。
みどりは一人、窓の外を見ていた。
「…………」
月明かりが、緑色の身体を照らす。
その瞳に、一瞬だけ――
淡い光が宿った。
「……ここ、どこだっけ」
小さな声が、部屋の中に消える。
「…………」
みどりは首を傾げた。
そして。
「まあ、いいか」
布団に潜り込む。
「明日も肉あるかな」
コメント
1件
第7話、読んだよ!みどりが風邪ひいて静かだと、ほんとに「いつもと違う」感じが伝わってきてちょっと切なかったな。でも「肉なら食べたい」って言い出すところでらしさ全開で笑った(笑) 恭也が来て安心感出るのもいいね。そしてラストの「ここ、どこだっけ」…あの淡い光も含めて、みどりの謎が気になりすぎる。次回が待ち遠しいです🔥