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百はな🍑
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植物園と言えば、恋人たちによくデートで使われる定番中の定番のデートスポット。
俺も植物園で綺麗な花を愛でながら、デートをしてみたいと憧れるが、なにせ我が国唯一の植物園は「王立」であり、王城の庭園に隣接していることもあって、「俺の家の庭の一部」な訳で、色気もへったくれもあったもんじゃない。
しかも王立植物園は国の自然環境施策の重要な役割を担っており、絶滅危惧種の保護や育成だったり、王立の学校と連携していることもあって教育機関でもある。そして、様々な植生を研究する機関で、デートする場所だけではない。
職員はみんな顔見知りだし、ある意味では仕事仲間でもある。
今日はそんな王立植物園の職員と来園者が減る冬に向けて、来園者増加を目指した冬の催し物について打ち合わせだ。
よく日焼けをした優しさが滲み出ているようなお顔の年配の職員たち2名が打ち合わせに俺の部屋を訪れる。
エーベルも一緒の席につく。
「王城までお疲れ様。植物園は変わりありませんか?」
年配の職員たちに労いの言葉をかける。
「今年の夏はかなり暑かったので温室の温度管理が大変でした」
「行ったことはないけど、砂漠ぐらい暑かったです」
ふたりの職員が口々に猛暑で植物園も大変だったことを報告してくれる。
「砂漠ぐらいかぁ」
俺も砂漠を見たことはないけど、書物での知識と砂漠の国の皇太子殿下が話していたことを思い出していた。
ふと植物園の職員の顔を見ると、2人の視線が砂漠の国の皇太子殿下に頂いたサボテンちゃんに釘付けだ。
「アーロン殿下、良いものが飾ってありますね」
ドキリとする。エーベルと俺で惜しみない愛を注いでいるサボテンちゃんがいまとんでもなく植物園の手練れの職員に目をつけられた。
さすがは植物園の職員。植物にめざとい。
俺とエーベルは思わず顔を見合わせる。
「あのサボテンは砂漠の国の皇太子殿下から頂いた大事なサボテンだ。貴重な植物だ」
「いやいや、そんな貴重なサボテンなら専門職員に栽培をお任せください。それに貴重な植物です。多くの国民にも見てもらいましょう」
悪い笑顔でニヤッと植物園の職員たちが笑う。
確実にこの可愛いサボテンちゃんが狙われている。
エーベルと再び視線が合う。お互い同じことを考えているのだろう。
(植物園にサボテンちゃんを渡したくない)
「来夏の夏に向けて企画は砂漠の植物で決まりですな」
職員たちが目を細めて来夏の催しを勝手に決めようとする。
エーベルも俺も同時に声が揃う。
「「サボテンでなくても!」」
「誰も砂漠の植物と言っただけで、サボテンとは言っていませんよ」
植物園の職員たちは揃いも揃って、お腹を抱えて笑っている。
「いや、アーロン殿下もエーベル殿もおふたりとも息ぴったりなところは小さな時から変わっておられないなと。つい嬉しくって、揶揄ってしまいました」
俺たちふたりが幼い頃に王城の庭園で遊んでいたら、日焼けした顔で優しく見守っていてくれたこのふたり。
「うん。変わっていない…よ。夏の企画なら、他にも植物はいっぱいあるだろう。蘭の花とか」
「ああ、あれね」
これまたニヤッと笑われる。しまった。触れてはいけない話題だった。
「あの蘭の花たちは大変でしたよ」
そうだよね。ここで枯らしかけて、慌ててエーベルと植物園に持ち込んで助けてもらった。
植物園を植物の病院だと思っている節が俺にはある。
本当に植物園の職員たちはすごくって、どんな植物でも上手に育てる。魔法でも使っているのではないかと思ってしまうが、それは長年培ってきた経験から成せる技。この職人のような職員が王城にはたくさん居られて、日々支えられている。
「さて、本題。冬の企画は何にしようか?」
一斉にみんなが俺の方を見る。
「クリスマス一択でしょう」
期待に満ちた目で俺を見てくる。
「俺が女性を連れて行くとでも?なにかを俺に期待してくれるのはうれしいが、そういう方面ではしばらく期待に応えられそうにないし、そういう予定もない」
「おやおや、弱気ですな。これっぽっちも?」
親指と人差し指で5センチぐらいの長さを示してくる。
「いや、微塵も」
「微塵…」
そして、なぜか植物園の職員ふたりがエーベルの方を見る。
「エーベル殿がおられるから、仕方ないか」
「エーベル殿が側にいたら、その辺の女性じゃな」
「「??」」
「いやいや、アーロン殿下とエーベル殿は阿吽の呼吸の仲。それを超える女性を見つけるのは容易くないって意味ですよ」
ふたりで顔を見合わせる。
「ほらほら、そういうところですよ」
その後の話し合いはつつがなく終了した。
ふたりの職員が席を立ち、部屋を出ていこうとした時。
俺は打ち合わせ中にずっと考えていたことを口にする。
「あのさ…サボテンを来夏の企画展示に出しても良いぞ」
「ありがとうございます!では、そのサボテンが夏の企画のメインですな!」
ふたりが晴れやかな表情で帰って行くのをエーベルと見送る。
「なぁ、エーベル、あれで良かったか?」
「わたしも同じことを考えていましたよ」
「うん。やっぱりな」
エーベルとの心地よい阿吽の呼吸。
当分、これを上回る人物を見つけるのは難しいのかも知れない。
コメント
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第18話、めちゃくちゃ温かい空気で好きだったわ!王立植物園の職員たちとのやり取り、特にサボテンを巡る攻防が微笑ましくて。エーベルとの阿吽の呼吸も相変わらずで「サボテンでなくても!」が揃うシーンはニヤッとしちゃった。最後にサボテン展示OK出すところ、頼もしくて胸熱だった🔥