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#バディーズ
𝓞𝓵𝓲𝓮💛🍅🐵
41
にこにこ
970
体調を崩してから、しばらく。
ようやく、愁斗の日常が戻り始めていた。
朝起きる。
顔を洗う。
朝ごはんを食べる。
そんな当たり前のこと。
以前なら何とも思わなかったことが。
今は少し特別だった。
⸻
「……。」
キッチンへ行くと。
ひでが朝食を作っていた。
『おはよう。』
「おはよう。」
『体調は?』
「今日は大丈夫。」
ひでがじっと見る。
「……。」
『本当に?』
「本当。」
『顔は?』
「普通。」
『声は?』
「普通。」
『歩き方は?』
「……。」
愁斗は少し笑った。
「にいに。」
『ん?』
「心配しすぎ。」
『知ってる。』
「認めるんだ。」
『だって心配だから。』
その返事があまりにも自然で。
愁斗は少し黙った。
昔なら その言葉を聞いたら、申し訳なさが先に来ていた。
でも今は 少しだけ嬉しいと思えた。
⸻
休日。
二人で買い物へ行くことになった。
特別な場所じゃない。
近所のスーパー。 ただそれだけ。
でも 愁斗にとっては不思議だった。
家族と買い物をする。
何を買うか相談する。
カゴを持って歩く。
そんな普通の時間。
知らなかった。
⸻
野菜売り場。
ひでがトマトを手に取る。
『これ買う?』
「好きなの?」
『愁斗が好きだろ。』
「……覚えてたの?」
『当たり前。』
その一言が また胸に残る。
覚えてくれている。
自分の好きなもの。
苦手なこと。
体調の変化。
全部。
⸻
帰り道。
袋を持つひでを見ながら 愁斗はふと思った。
「にいに。」
『ん?』
「 普通の兄弟って、こういう感じなのかな。」
ひでは少し考えた。
『たぶん。』
「たぶん?」
『俺も分からないから。』
そう言って笑う。
『でもね、 俺は今、楽しい。』
愁斗も少し笑った。
「俺も。」
⸻
家に帰る。
買ったものを片付ける。
夕飯を作る。
テレビを見る。
本当に何でもない一日。
でも 夜。
布団に入った時、 愁斗は思った。
昔欲しかったものは。
大きなものじゃなかったのかもしれない。
特別な何かじゃなくて。
「おかえり。」
「ただいま。」
「おやすみ。」
「おはよう。」
そんな言葉を交わせる場所。
ただそれだけだったのかもしれない。
⸻
その夜、 リビングから声がする。
『愁斗。』
「ん?」
『明日、何食べたい?』
「急だね。」
『考えてなかった。」
「にいにらしい。」
『なんだそれ。』
二人で笑う。
その笑い声が 家の中に響く。
愁斗は目を閉じる
まだ慣れない。
でも 少しずつ。
この場所が 帰る場所になっていく。
そんな気がした。
コメント
1件
第34話、ほんとに良かった…! 「普通」ってタイトルがもう刺さるんだけど、朝の「心配しすぎ」→「知ってる」のやりとりとか、トマト覚えてたエピソードとか、全部がじんわり沁みた。 特別なことじゃない「おかえり」「おやすみ」が、愁斗にとってこんなに尊いものなんだなって思うと、胸がギュッと締め付けられたよ。最後の笑い声で終わるのも最高でした。にいに優しすぎる😭