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「……詩織のやつ、絶対に後悔させてやる」
夜道をふらつきながら、俺は毒づいた。
着の身着のままで家を追い出され、手元には一円の金もない。
会社はクビ、莉奈には裏切られ、まさに踏んだり蹴ったりだ。
だが、俺にはまだ「最後の切り札」がある。
どんな時でも俺の味方で、俺を「直樹ちゃん」と呼んで甘やかしてくれる、世界でたった一人の理解者。
……母さんだ。
「母さん!俺だ、直樹だ! 開けてくれ!」
実家のチャイムを壊れんばかりに連打する。
しばらくして、重々しく門扉が開いた。
いつもなら、俺の顔を見るなり「どうしたの!」と駆け寄ってくるはずの母さんがそこに立っていた。
だが、その目は見たこともないほど冷たかった。
まるで、道端のゴミでも見るような……
いや、得体の知れない不審者を見るような目だ。
「……何の用かしら、不審者さん」
「な、何言ってるんだよ母さん。詩織のやつに追い出されたんだ。あいつ、俺の金を隠し持ってて…!とにかく中に入れてくれ!腹が減って死にそうなんだ」
玄関に足をかけようとした瞬間、奥から現れた親父に、思い切り胸元を突き飛ばされた。
「敷居を跨ぐな!この恥さらしが!」
「な……親父まで、どうしたんだよ!?」
「お前が悪いんだろう」
「は?俺が何したってんだよ…」
「これを見ても、そんな口が叩けるのか!」
親父が投げつけた厚い封筒が、俺の足元に散らばった。
そこから滑り落ちたのは、目を疑うような光景の数々だった。
莉奈との不倫旅行の写真、生々しいLINEのやり取り、俺が積み重ねてきた「遊び」の全記録。
「……お前、私の『退職金代わりの積立』まで、詩織さんに嘘をついて引き出させていたそうじゃないか」
親父の低い声に、心臓が跳ねた。
顔の筋肉が引きつるのが自分でもわかる。
……まずい。
詩織の貯金を使い込むついでに、母さんが
「老後のために」と詩織に預けていた管理費の一部も、言葉巧みに詩織を騙して引き出させていた。
あいつは何も疑わず、俺の言う通りに金を渡していたはずなのに。
「詩織さんから電話があったわよ」
「アイツから…?」
「『直樹さんがお義母様の分までギャンブルと女に使い込んでしまいました。守りきれなくて申し訳ありません』って、泣きながら……!」
母さんの肩が怒りで震えている。
俺を自慢に思っていたはずの母さんにとって
俺はもう「可愛い息子」じゃない。
自分の資産を食いつぶした「加害者」なんだ。
「違うんだ、母さん! あれは……!」
「警察を呼ぶ前に失せなさい。近所の人に見られたら、私たちの顔に泥が塗られるわ!」
バタン!
目の前で無慈悲に扉が閉ざされた。
絶望的な音と共に、実家の外灯が消える。
深夜の住宅街。
真っ暗闇の中に、俺はたった一人で放り出された。
その時、ポケットの中でスマホが震えた。
詩織からだった。
『直樹、お義母様には本当のことを伝えておいたわ』
『あ、そうそう。あなたが莉奈さんに贈ったあのネックレス、お義母様の誕生日に買うはずだった宝石のデザインとそっくりね。お義母様、とても悲しんでいらしたわよ』
「……あ、あああああああ!」
俺は路上で頭を抱えて叫んだ。
社会的地位も、家族の信頼も、帰る場所も。
あいつは、俺が「ある」と信じ込んでいたすべてを、完璧な手順で奪い去ったんだ。
家計簿という名の檻に閉じ込めていたつもりだった。
だが、本当の檻の中にいたのは、俺の方だった。
逃げ場を失い、一円の価値もなくなった俺は
ただ夜の闇を彷徨うことしかできなかった。
【残り86日】
#ざまあ
#裏切り
#モテテク