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#Paycheck
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
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シャワーの音が流れ始める。
エリオットは鏡の前で顔を冷やしながら、ぶつぶつ言っていた。
「……なんであんなこと……」
その時。
コンコン
「……エリオット」
「っ!?」
ドアの向こうからチャンスの声。
「なに!?」
「タオル忘れてる」
「え」
一瞬止まる。
(……ほんとだ)
焦って振り返る。
その隙に――
ガチャ
「ちょっ――!!」
ドアが開く。
「届けに来た」
平然と入ってくるチャンス。
エリオットは一瞬でパニック。
「いやいやいや待って!!」
「何が」
「さっきの会話覚えてる!?」
「覚えてる」
にやっと笑う。
「あとでなら、だろ?」
「言ってない!!」
「言った」
距離がじわっと詰まる。
シャワーの音と湯気。
逃げ場がない。
チャンスが少しだけ顔を近づける。
「で?」
低い声。
「どうする」
エリオットの顔が真っ赤になる。
湯気が立ちこめる浴室。
シャワーの音がやけに大きく響く。
エリオットは後ろにじりっと下がる。
「ちょっと待ってって……!」
でもすぐに壁にぶつかる。
逃げ場がない。
チャンスはそのまま一歩、距離を詰める。
手にはタオル。
なのに渡す気配はない。
「ほら」
「なにがほらだよ!」
「タオル」
差し出すふりをして――引く。
完全に遊んでる。
「……っ、性格悪」
「今さら?」
にやっと笑う。
エリオットの心臓がまた跳ねる。
(近い……)
距離が近すぎる。
水音と、湯気と、視線。
全部が混ざって頭がぼんやりする。
チャンスが少しだけ首を傾ける。
「で?」
低い声。
「さっきの、続きどうすんの」
エリオットは一瞬言葉に詰まる。
思い出す。
“あとでなら”
自分で言った言葉。
「……あれは」
「冗談?」
被せるように言われる。
エリオットは少しだけ睨む。
でもすぐ逸らす。
「……っ」
否定しきれない。
その反応を見て、チャンスの目が少しだけ変わる。
さっきより、ほんの少し真剣。
「……逃げんなよ」
ぼそっと落ちる声。
ドクン、と心臓が強く鳴る。
エリオットは一瞬だけ固まる。
それから。
小さく息を吐いて――
視線を戻す。
「……逃げてないし」
強がり。
でも、ちゃんと目は逸らさない。
チャンスは少しだけ目を細める。
そのまま手首を軽く掴む。
さっきより優しい力。
でも、離さない。
「じゃあ」
ゆっくり近づく。
「試す?」
距離がまた縮まる。
息がかかるくらい。
エリオットの鼓動が一気に速くなる。
でも今度は――
逃げない。
むしろ。
ほんの少しだけ、自分から距離を詰める。
「……タオル、渡す気ないでしょ」
わざとらしく言う。
チャンスが一瞬だけ止まる。
その隙に。
エリオットはタオルをひょいと奪う。
「っ」
一歩下がる。
でも、すぐには離れない。
タオルを持ったまま。
じっと見る。
少しだけ笑って。
「……入るなら」
わざと間を置く。
チャンスの反応を見ながら。
「ちゃんと入ってくれば?」
挑発。
完全に。
チャンスの眉がぴくっと動く。
一瞬の静寂。
それから――
一歩、踏み込む。
「言ったな」
低い声。
さっきより、少しだけ本気。
エリオットの背中にまた壁。
逃げ場ゼロ。
でも今度は。
逃げる気がない。
むしろ。
少しだけ楽しそうに笑う。
「……どうするの?」
その一言で――
空気が一気に変わった。