テラーノベル
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「ピンポーン!」
土曜日の朝。チャイムの音に、すみれは玄関まで駆けていった。
玄関のドアを開けると、元気いっぱいの笑顔がそこにあった。
美玖:「すみれ〜!おじゃましまーす!」
すみれ:「来てくれてありがとう!さ、入って!」
美玖が靴をぬいで家に上がると、すみれの家の中はあたたかい木のにおいがした。
広くて明るいリビングのテーブルには、もう画用紙と色鉛筆がずらりとならんでいる。
美玖:「うわ〜、準備ばっちりじゃん!これ、全部すみれの?」
すみれ:「うん。今日は一緒にお絵かきしようと思って!」
美玖:「やった!でもわたし、絵はちょっとへたくそかも〜」
すみれ:「大丈夫。わたし、先生になってあげる!」
ふたりは笑いながらテーブルにつき、それぞれ画用紙を前にして、えんぴつを手に取った。
まずは「好きな動物を描こう!」というテーマに決めてスタート。
すみれは、猫の絵を静かに描きはじめる。
しっぽのカーブ、目の形、毛並みの流れまで丁寧に、ゆっくり、集中して。
一方、美玖は――
美玖:「えーっと……ゾウにしよっかな!ゾウってあの、鼻がびよ〜んってやつ!」
そう言いながら、美玖はにこにこ笑いながら、ゾウを大きくのびのびと描いていく。
時々、美玖がすみれの絵をチラッと見ては、
「えっ、うまっ!」
とびっくりした顔をして、すみれはちょっとはずかしそうに笑った。
すみれ:「美玖のゾウ、楽しそうでいい感じだよ」
美玖:「えっほんと?このゾウ、歌ってるの!」
すみれ:「えっ、歌ってるの!?鼻マイクなの!?」
美玖:「そうそう!ゾウ・アイドル!」
ふたりはくすくす笑いながら、色鉛筆で思い思いの色をつけていった。
しばらくして、お絵かきに疲れたふたりは、
キッチンにおやつを取りにいった。
すみれがお母さんに作ってもらったクッキーを持ってきて、
床に座って食べながら、おしゃべりが止まらない。
美玖:「ねえねえ、今度お菓子作りも一緒にやってみない?」
すみれ:「うん、いいね!わたし、クッキーは作ったことあるよ!」
美玖:「まじか〜!すみれ先生、やっぱりすごいなぁ〜」
すみれ:「そればっかり言うじゃん!」
美玖:「だってほんとなんだもん!」
笑い声がひびくすみれの家。
まるで、ふたりだけの時間が、世界で一番きらきらしているようだった。
午後になって、ふたりはすみれの部屋に移動して、絵本を読んだり、
ぬいぐるみでごっこ遊びをしたりして、時間をわすれるくらい遊んだ。
美玖:「ねえ、すみれ。もしさ、大人になっても、わたしたち仲良しだったらさ……」
すみれ:「ん?なに?」
美玖:「なんか、いいよねって思って……ふふっ」
すみれ:「うん。ずっと友達だよ。」
美玖は少しだけ、照れくさそうにすみれのほうを見て、
小さなピースサインを出した。
すみれもおなじポーズで返す。
太陽がだんだん西に傾いてきて、美玖が帰る時間になった。
玄関で靴をはきながら、美玖がぽつりとつぶやく。
美玖:「なんか、今日ずっと笑ってた気がする」
すみれ:「うん。わたしも、なんかね……しあわせだった」
美玖:「また来てもいい?」
すみれ:「もちろん!」
ドアを開けて、笑顔で手を振るふたり。
その手のあたたかさが、夕方の光に照らされていた。
つづく
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