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エイバスの街へ戻った俺とテオは、まず冒険者ギルドへと向かった。
まだ早い時間ということもあり、ギルドの中はかなり空いていた。
テオを待合スペースに残し、俺1人でカウンター窓口に並ぶ。
「お待たせいたしました。ご用件は何でしょうか?」
窓口の担当は、午前中と同じ女性職員。
「ドロップ品の換金をお願いします」
「ではアイテムをお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「はい」
【収納】からドロップ品を取り出して、カウンターへと全部並べた。
女性職員はアイテムを鑑定しながら、手早く買取希望価格を算出していく。
「『鉄鉱石』の小が56個、中が8個。『石炭』の小が21個。あとは『古びた戦斧』ですね……それではまとめて、こちらの金額ではいかがでしょうか?」
提示されたリストがこちら。
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■買取希望金額一覧
鉄鉱石・小 1R×56=56R
鉄鉱石・中 2R×8=16R
石炭・小 2R×21=42R
古びた戦斧 1200R×1=1200R
合計:1314R
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事前に【鑑定】スキルで確かめておいた売却目安価格の通りの買取金額。
文句など付けようもない。
「……はい、問題ないです」
「ではこちらのリストへサインをお願いします」
リストの受領欄に署名し、ずしりと重い代金を受け取ってからテオの所へ戻る。
テオは待合スペースのいつもの席で、本を読みながら待っていた。
「終わった?」
「ああ」
「初めての換金は、どうだったかい?」
「改めて……ウォードさんに感謝せねばと思ったよ……」
「だよねぇ」
俺の言葉にうんうんと頷きまくるテオ。
ウォードが倒した魔物のドロップ品・古びた戦斧の売却価格は1200R。
俺にとっては、相当な大金であった。
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その夜。
用事があるというテオといったん別れた俺は、約束通りウォードと合流。
彼行きつけの酒場へと向かう。
昔ながらの繁華街。
飲食店が立ち並ぶ一角にある『赤の石窯亭』。
窓から暖かな光と賑やかな声が漏れ出す、小さな煉瓦作りの建物だった。
入口の扉を開けたウォードは混雑した店内の中を見渡すと、店員に一声かけた。
そのまま空いているテーブル席を陣取って、笑顔で俺を手招きする。
「ほらタクト、あれ見てみろよ」
ウォードが親指で指したのは、店員が忙しそうに料理を作る厨房。
その中央には、赤い煉瓦で作られた立派な『石窯型の魔導具』が置かれていた。
「店名にもなってる『石窯』で焼き上げた料理がたまんねぇんだ。ここのは肉も魚も野菜も全部安くてうめぇし、どれ頼んでもハズレねぇから安心しろよ。ま、1番の名物は何といってもピッツァだと思うぜ!」
「確かに皆さん頼んでますね」
「だろ? ここに来たら、やっぱアレは食わねぇとな!」
大声でいくつか注文するウォード。
すぐに陽気っぽい店員が、木製ジョッキ入りのビールと小皿料理を運んできた。
まずはビールで乾杯し小皿のピクルスをつまむ。
少し温めのビールは苦み控えめでさっぱりして飲みやすい。
オリーブやキュウリ等のピクルスは旨みも塩気も強くて、酒が進む味付けだ。
キンキンに冷えた日本のビールに慣れた舌には、最初少し違和感があった。
だけどグビグビ喉を鳴らして飲み進めるウォードにつられて、俺も一口二口と飲んでいくうち、「これはこれで美味いかも」と思えるようになってきた。
「……エイバス近郊は1年を通して温暖で過ごしやすい気候で、土壌も豊かだから農作物を作るにゃ凄くおあつらえ向きな土地ってわけだ」
「確かにこの野菜、どれもおいしいですね」
「野菜だけじゃねぇぞ。海に面してるから魚介類もよく捕れるし、税金も安いから船での輸出や輸入も盛んで、色んな国の名産品も入手しやすいんだよな……タクト、これがどういうことか分かるか?」
「えっと……どういうことなんですか?」
「つまりこのエイバスじゃ、旨ぇもんを安く食いまくれるってことさ!」
「あぁ、なるほど!」
「俺は元々冒険者として世界各国を旅してたんだが、食い物が旨ぇところだとか、エイバスの人の温かさだとかがすっかり気に入っちまってな……冒険者を引退したらこの街に住むってずっと前から決めてたのさ」
「そうだったんですね」
確かにエイバスは、ゲームでも全体的に物価が安い街だった。
特に飲食店や食料品店が多く、値段も品揃えも魅力的だった印象がある。
街の治安もいいほうだと思う。
他の国や街と違って「歩いていて急に襲われた!」なんてイベントはエイバスでは見たこと無いし、犯罪件数も少ないっていう設定だった。
もしこの世界に『住みやすい街ランキング』があったら、たぶん上位だろうな。
「それにしても、お前《めぇ》もテオと顔見知りとはな……世の中狭いねぇ」
「顔見知りというか……今朝たまたま、冒険者ギルドで知り合ったんです。色々あって、その……しばらくパーティを組む事になりました」
「へぇ、あいつが初対面の奴とパーティ組むなんて、珍しい事もあるもんだ」
意外そうな顔をするウォード。
……そういえば。
昼前に正門をくぐった際も。
オークジェネラルから助けてもらった際も。
よく知った風なリアクションだったな。
「ウォードさんはテオと付き合い長いんですか?」
「まぁな。その昔……結構長い間、共に各地を回ってたんだぜ」
「え?」
エイバスの守衛・ウォード。
旅の吟遊詩人・テオ。
この2人に接点があるなんて、ゲームでは聞いた記憶がないぞ?
塩茹でのソラ豆をつまみながら、ウォードは昔を懐かしむように話し出した。
「最初に会った時、テオはまだ小さくてな。確か……まだ10歳かそこらじゃなかったか。4人でパーティ組んでた俺達に『旅に連れてってくれ』って頼み込んできたんだが、流石に子ども過ぎるし、俺含め仲間の大半が渋ったのさ……けどな……」
ウォードは溜息をつき、遠い目をしながら話を続ける。
「テオの事情を聞いたダガルガの奴だけが同情しちまってよ……あの巨体とデッケェ声でおんおん泣きながら『絶対連れてく!』って言い張って聞かないもんだから、仕方なく同行させることになってな……」
「あのう……ダガルガってもしかして、エイバス冒険者ギルドの――」
「おう、ギルドマスターやってるダガルガだ」
「なるほど。それであの2人、あんなに仲良さそうに喋ってたんですね」
朝のギルドでのダガルガとテオの様子を頭に浮かべると、すとんと納得できた。
「まぁ結果的には、テオのおかげで助かった場面も少なくないし、連れてって正解だったと思うぜ。割といい奴だしな。ちょっと変わってはいるが……」
何かを思い出したかのようにフッと笑うウォード。
先程の店員が、石窯で焼き上がったばかりの特大ピッツァを2枚運んできた。
受け取ったウォードは、嬉しそうに早速ほおばる。
「あっつ、うんめぇ! ……ほら、早く食え。焼き立てが格別なんだからよ。冷めちまったらもったいねぇぞ」
「はい!」
俺も早速、8等分に切り分けられたピッツァの手前の1切れを食べてみる。
ところどころプクッと膨れて焦げ目がついたピザ生地。
外はサクっと香ばしく、中はモチッとしていた。
1枚は、トマトソースに溶けたチーズとバジルが載った定番マルゲリータ。
そしてもう1枚にもトマトベースのソースが塗られているが、こちらはニンニクや香辛料が効いていて、上に載った魚の塩漬けが良いアクセントになっていた。
どちらもシンプルだからこそ、素材の新鮮な美味さがよく引き立つ。
何枚でもいけそうな味に、俺の顔は思わずニヤけた。
「……美味しいですね!」
「だろ。ここのは、ふちの耳までうまくてよ……週に1度は来ちまうんだよなぁ」
その後もウォードの冒険の思い出やら、エイバスの街の諸々についてやらの話を聞きながら、日付が変わる頃まで楽しい時間を過ごしたのだった。
あまざけ
420
#シリアス
にゃみ3
128
にゃみ3
526
#チート能力
厨二病の創破
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