コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
麻弥の結婚のお披露目パーティーの後、近々ある計画完成に向けて準備作業をしている場所へ確認しに行く。
ようやく準備が整い最終確認も出来て、少し気持ちも晴れやかになる。
そして、オレはいつものように電話をかける。
「もしもし?」
『もしもし?』
「修さん? 今から店行って大丈夫?」
直接じゃなくても久々に透子の顔が見れて、準備もようやく整ったことで、今日は少し気分も良くて飲みたい気分。
『あぁ。式終わったんだってな』
「あぁ、うん。・・・ってもしかして今・・・いる?」
オレが修さんの店に行く前にわざわざ電話する理由。
『あぁ。少し前から透子ちゃん来てる』
透子と鉢合わせしないように、透子が店にいないか修さんへの確認。
透子と出会った店が、あの店で、しかもお互い常連として通っている店。
何度か足を運べば、あの店で出会ってしまう確率は高くて。
だからオレは透子に会わないように、いつも店に行く前に修さんに確認して、いないとわかってから店に行くようにしていた。
会社でも、あの店でも、部屋も、少しでも近づきたくて、少しでも一緒にいたくて、この共通の近すぎる距離が、今までは幸せだったはずなのに。
いざ離れようとすると、案外いろいろ都合が悪かったんだなと改めて実感した。
どれだけオレと透子はいろんな場所で偶然なのか運命なのか繋がっていて。
離れようとすればするほど、実際は困難で。
近づきたくてあんなに苦労したのに。
だけど気持ちが残ってる分離れるのにも苦労がいる。
「そっか。透子・・来てるなら、また今度に・・・」
いつもと同じように今回も透子が来てるなら店に行かないでおこうと思ってたら・・。
『樹。今は来ても大丈夫だぞ』
「えっ?」
『透子ちゃん相変わらず今日もいい感じに酔い回って、さっき酔い潰れて寝ちゃったから』
「何? また荒れて変な飲み方してるとかじゃないよね・・?」
まさか、北見さんと何かあった・・・とか?
『さぁ? 直接確認しに来れば?』
「いや・・・でもオレは・・・」
ここまでずっと会わずに来たのに、例え今は寝ていても、もし起きたりなんかしたら・・・。
オレも今はまだこのタイミングで会うのは・・。
『へ~そう~? かーなり無防備で透子ちゃんヤバいくらいになってるけど・・・。そういえばさっき透子ちゃん誰か声かけられてたなぁ~。今日透子ちゃん一段と綺麗にしてるからな~。なんか危なっかしいよな~』
そう言って修さんが脅かしてくる。
修さんのこういう言い方、大抵オレを煽って来る時の言い方で、大袈裟に言ってるんだとは思うんだけど。
だけど、その言葉を単なる冗談だとは聞き流せなくて。
確かに、透子は酔い潰れると、気弱になって、甘えたになって、無防備になって・・・。
あんな姿、他の男に見せたくない。
あーくそっ!
会わずにおこうって決めたくせに、いざ透子がそういう状況になってるって聞いてしまうと、いてもたってもいられなくて落ち着いていられない。
嫌なんだよ・・・透子がオレじゃないヤツに甘えるとか、あんな表情見せるとか・・・。
透子が酒飲むのも、酔い潰れるまでそんな風になるのも、今のオレは何も言う資格ないけど。
だけど、やっぱり離れてることで、こんなこともしかしたら何度もあったのかもしれないということにも気付いてモヤモヤする。
「修さん。今から行くから、透子なんもないようちゃんと見張ってて」
『りょーかい』
そう修さんに伝えて携帯を切り、オレは店に急いだ。
ずっと固くしていた決心なんて、結局こんなもんで。
透子に何かあったと聞いたら簡単にこの気持ちも揺れ動いてしまう。
だから、やっぱり今まで我慢してて正解だったかも。
あんなカッコよく別れの言葉伝えたくせに、結局は透子が気になって今までのオレといつまでも同じだなんて、カッコ悪すぎでしょ。
ホントは、今透子に誰も男がいないことは知ってる。
逐一、修さんに透子の様子は確認していたから。
正直気になるから確認していたのもあったけど、その反面、もし誰かそういう男が現れても、オレには止める権利はないことはわかっていたから、いざそうなった時は、自分の気持ちを諦められるように持って行きたかったっていうのもあって。
だけど、やっぱり。
ただ会わないようにしていただけで、ただ今は離れているだけで、オレが透子を好きな気持ちは全然変わってなくて。
それどころか会えなくて、話せなくて、触れられなくて、気持ちが変わらないのに、それを意識してしまうとまた何もかも抑えられなくなってしまう。
あれだけ自分で制御していたのに、今こうやってなりふり構わず店へと急いでいるのは、透子が心配だからなのか、ようやく環境が整ったからなのか、それともこの気持ちがもう抑えられなくなったのか、どれが強くなってしまったのかはもうわからないけど。
なんて・・・。
きっとその全部。
ただ今は透子が放っておけなくて、心配で・・。
ただ会いたい、それだけ。