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5話 更新されない工事期間
駅前の仮囲いは、
今日も同じ位置に立っていた。
薄手のシャツに、
肘までまくった袖。
手首には何も付けていない。
時間は、
掲示を見る前に確認している。
髪は分け目だけ整えられ、
横に流れている。
風が吹いても、
乱れにくい。
掲示板の文字は、
前と同じ。
工事期間
未定
その下に、
小さな追記がある。
ご不便をおかけします
安全確保のため調整中
日付は、
なにも書かれていない。
通り過ぎる人は、
もう見ない。
視線は自然に、
仮囲いを避けて流れる。
作業音は聞こえるが、
急ぐ気配はない。
始業と終業だけが、
きっちり揃う。
昼に戻ると、
掲示は変わらない。
夕方も、
夜も。
端が少しだけ、
新しくなっている。
貼り替えたのだと、
分かる。
でも、
内容は同じ。
未定。
誰かが、
毎日確認して、
毎日そのままにしている。
終わらせる判断だけが、
保留されている。
帰り道、
仮囲いの前で立ち止まる。
不安はない。
困りもしない。
ただ、
期限が書かれない理由だけが、
気になる。
更新されない工事期間。
日常は、
そのまま通れる。