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何ヶ月ぶりか、テレビを少しみた。
そしたらニュースがやっていて、つまんないなと思いながら、他のチャンネルに変えようとしたんだ。
でも、そのニュースの1つをみたら、思わず手が止まった。
「───先日、人気VTuberの海寧あまさんが、███ビルの屋上から飛び降り、自殺したと──────」
私が好きな推し。
「自殺」ってワードに、私も流石に固まってしまった。
これまで、自殺とか殺害とか性犯罪とか、そういうことを受けたVTuberや配信者、𝗧𝗶𝗸𝗧𝗼𝗸𝗲𝗿など、ずっと見てきた。
私は固まったまま、涙も言葉も出ず、10分くらい頭が真っ白になった。
午後18時半、まだ5月なのに外は暑く、17時の時点ですごく暑かった。コタツもすぐに片ずいた。夜の寝室も異常に暑かった。なのに、今日は寒い気がした。
「雛乃〜?ご飯もうすぐで出来るけど、手伝ってくれない〜?」
お母さんの声が聞こえた時、私はハッとなって、我に戻った。
「──うん、今行く。」
私は気の弱そうな声で返事をした。
……大切な人が死んでしまったら、自分も死んでいくのかな。
そう、謎に思ってしまった。
私の生きる意味も、生きている意味も、全部……「海寧あま」だったのに──────。
「海寧あま」。
彼女は17歳の人気VTuber。事務所は入っておらず、個人Vとして頑張っていた。
VTuberデビュー2週間で登録者数20万人を突破。今では98.7万人もいる。
VTuberに興味がなかった私でさえ、好きになってしまった。
スパチャは200円でも大喜び。コメントは全て読んで、マシュマロもひとつ残らず、読んでいた。そんな、ファン思いな子だった。
彼女は企画系のテレビに2回出たことがあり、他の事務所のVTuberや顔出し系YouTuberとのコラボ動画・CM出演もあり、全国から人気だった。
みんなから期待されていた。
──────その”期待”が、きっと、彼女を苦しめていたのだろう。
Xでは、色んな人に「ぶりっ子」「死ね」「可愛い子アピール乙」など、沢山のことを言われ、「世界一やばいと言われている早口言葉ゲームやってみたっ!」と言う配信で、何回も噛んでしまったり、途中、飲もうとした水をこぼしたりして、炎上してしまった。散々な事を言われ、DMで直接悪口、また、殺害予告もされていた。
勝手に顔を晒されたり、私物を売られたり、アンチは海寧あまを攻めて攻めて攻めまくっていた。
それを、私は知っている。
私は見ることだけしかできない。これはファンとしてどうかなのか。自殺の原因は、絶対と言ってもいい程、アンチからの攻撃なのに。
でも、言い返して余計海寧あまが傷ついてしまったらどうしよう、とか、勝手に善人ぶっていた。
今思うと、あの時、言い返せばよかった。守ってあげればよかった。
そんな事ばかり考えた。
私は母親と二人暮し。私には個性や特技、得意なことはひとつもなく、逆にできないことの方が多かった。友達もなし。先生からは「自分から進んでみてはどうかね」と言われ、母親には迷惑しかかけれなくて、生きてる意味も分からない。
産まれてきたのが私でごめんねって
きっと、生まれたのが私じゃなかったら、こんなに苦しい思いもしなかったのに。
「雛乃〜もうそろそろ寝なよ〜、明日部活あるんでしょう。雛乃は1年生なんだから、遅刻したら目付けられるよ〜!明日バレー頑張って〜! 」
お母さんは自分の寝室へ行ってしまった。リビングが暗く感じた。
「私はマネージャーだってば…。」
雛乃はひとつ、大きいため息をついた。
(私の中学、マネあったからいいけど、マネージャーの私に対して3年生冷たいんだよなぁ…。他の子にも当たり強かったりするけど…)
私はそんなことを思いながら、海寧あまを何故か思い出してしまった。
(……もう、居ないのに…。なんでこんな…ホントはいるって、思っちゃうんだろう……)
「ヒナ、隈すご!」
友達の朱莉ちゃんが珍しいものを見たかのように大きな声で、私が座っている机をバンっと軽く台パンした。
「…熊?」
「そうそう、隈隈!」
「……森?」
「ヒナ?!何の話!?」
馬鹿みたいに噛み合ってない話が、何故か面白く感じてしまった。こんなの、教室入ったらすぐ始まる茶番なのに。
「…あ、てかさ!聞いてよ〜っ、VTuberのさ〜」
その言葉を聞いた瞬間、私は思いっきり立ち上がり、朱莉ちゃんの顔に近ずく。
「それって海寧あま?」
私が必死な顔で質問する。そしたら、朱莉ちゃんが少し戸惑ったように
「え?ち、違うよ〜!神谷カヤ!最近推してるの〜!イケメンなのに、ピーマン苦手なんだって!可愛い〜♡」
「……」
朱莉ちゃんの言葉といい、勢いといい、私は絶句。
「な、なによー!なんかおかしい?!」
朱莉ちゃんの少し怒ったように、ムッとした顔が私に近ずいた。
「ううん。いつも通りだなって。」
「そ、そう!?な、ならOKっ!」
朱莉ちゃんの頭上に”?”が見える。間抜けな顔。
「てか、海寧あまって誰?」
「地雷。」
「ええ!?ごめんじゃんッ!」
まぁ、”有名”じゃなくて”人気”だしな…登録者数が多ければ有名人!って訳じゃないし。そう思いながら時間が過ぎてった。
家に帰って、ぐったりして、スマホを見ていると、海寧あまという文字が目に入った。
実は自殺ドッキリ!?未遂!?もしかして意識はあった!?
そうはしゃぎながらそのニュースを見てみた。
題名っぽく、大きな文字で一番最初に書いてあったのは━━━━━
「人気VTuber・海寧あま 実は5つ年上の男性と交際していた!?」
「………なにこれ。」
交際?5つ上の男性?
そのニュースには、海寧あまのXの裏垢画像と、LINEの会話があった。
Xの裏垢では「ゆうくんだあいすき♡」「かあいいゆ〜くん♡」「おかねぜんぶあげるからけっこんしよ~ね…♡」など呟いている画像。
LINEではお互いに「すき」や、海寧あまの下着姿の画像があった。
━━━━━━━━━私は、私の中の、何かが壊れた気がした。