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8 ◇車で出掛ける
12月の1日から働いたわけではなく、給与日を考えると
美代志の勤務した日数はひと月にも満たなかった。
それでも初めて受け取る久しぶりの給料に、美代志の胸は震えた。
しかし、そうそう喜びに浸ってばかりもいられず……社屋を後にした帰りの
電車の中では、さっそくこの先必要であろう家電のことが頭を過った。
「炊飯器と冷蔵庫買わないとなぁ~。
でも両方いっぺんに買うのはどうだろう――――」
この日は土曜の半ドンで、しかもクリスマス。
……なので、珍しく残業なしで帰れることになったため、帰宅したのは
13時過ぎだった。
家に着いて、ほっと一息寛いでいるところへ由香が夕飯のおかずを持って
顔を見せに来てくれた。
「これっ、今夜のおかずはデミグラスソース味のハンバーグよ」
そう言われて手にした透明のタッパーウェアを見るとブロッコリーの入っているのが見えた。
蓋を開けてみると大好きなポテトサラダも付いていた。
「ありがとうございます。なんか好きなものばかりで……」
美代志は素直に喜びを顔に出して礼を言った。
「そう? よかった。またガンガン作るから」
美代志が台所におかずを置いて茶の間にしている和室に戻ると座らずに
立って待っていた由香から声が掛けられた。
「美代志くん、これから家電見に行かない?」
それは会社帰りからずっと考えていたことだったので美代志にとっては
有難い申し出だった。
「あーっ、僕もそれっ、家電のこと気になってたので助かります~」
ただ、通帳からまだお金を引き出しておらず、懐には以前由香に借りているお金があるだけだった。
『足りなかったらどうしようかなぁ~。最悪不足分を少し貸してもらうしかないか……』などという
小さな不安を抱えつつ、美代志は由香の車に乗り込んだ。