テラーノベル
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それでは、
どうぞっ。
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私の恋人は、どこからどう見たって生真面目だ。
私が一目惚れした高校一年生の時から、無遅刻無欠席は当然で制服は一切着崩さず、遅くまで自習室で残っているのにも関わらず下校時刻まで守る徹底ぶり。
部活動でも弓道部の部長として土日は道場にこもっていたらしい。
それは大学生の今でも変わらず、もう大学2年生だというのにも関わらず夜遊びの一つもしない。
ラインで23時には『おやすみ』とくるのだ。
その時間の私は友達と徹夜でゲームをしようと通話しているところなのに。
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🧡「…高校3年生にもなってこの単元で躓いているの?」
💜「うるさいな、だって公式覚えても意味分かんないもん。合成ってなに?」
🧡「はあ、だからこれは……あ、ベクトルの考え方は習った?それを使ってやってみれば視覚的に…_」
💜「ああもう、分かんない!いいよ、私数学使わないで大学行くもん、!!」
そう言ってヤケになると美咲はまた何か小言を言い始めた。
そうやって捨てようとしてもどうせ大学に行っても使うとか、努力を辞めたらその癖がつくとか、うるさいことばっか。
せっかく家に呼ばれたと思ってちょっと可愛くしてきたのに、部屋に入ると広げられていたのはデートプランが描かれたメモ帳じゃなくて青い数学の問題集。
使い込まれたんだなと分かるそれに緑色の付箋紙がまた追加されていく。
私が解けなかった問題の部分だ。
そんな付箋どこで見つけたの?
てか、違う。もう数学したくない!
💜「ねえ、もう少し恋人っぽい…え、?」
まだシャーペンを手放さない美咲の腕を掴み、そろそろいちゃつく時間もあって良いんじゃないかと顔を覗き込んだ時。
美咲の左耳が不自然なのに気がついた。
🧡「え、何?」
急に黙り込む私に首を傾ける彼女の髪を耳にかける。
すると、左耳だけ幾つものピアスホールが空いていた。
耳たぶに四つ、インナーコンクから軟骨に二つ、インダストリアルまで。
自分で開けたわけでもないはずだし、それならどうして?
💜「ねえ、美咲…」
穴を一つ一つなぞっていくとくすぐったそうな声を漏らしながら、ああ。と納得したように笑った。
🧡「元カノが、開けたいって言ったから。」
どすんと心に何か落ちてきた感覚がする。
世界で1番と言っても過言ではないくらいに真面目なこの人の左耳にこんな風に傷を残せる女性がこの世に居るのかと思って絶望だけが胸を支配した。
シャーペンが右手から滑り落ちて、なんとも言えない不快感がおさまらない。
私が付き合えたのが半年前だから、それ以前のあの生徒会長時代からこれを隠して生きていたのか。
どこまでも清廉潔白だと思っていた美咲がこんな澱んだ感情を押しつけられても受け入れていたことも衝撃だし、隠そうと努力を怠らなかったのも嫌だった。
それに、ピアスホールが綺麗な所からしてまだ付けているんだろう。
💜「美咲、…塞がないの?」
🧡「まあ、勿体無いかなって。」
どうして、昔の女につけられた傷をまだ丁寧に保存しているの?なんて、そんなことは聞けなかった。
私は、多分、そこまで好きになってもらってないから。
今後もきっとそうにはなれないから。
end.
コメント
1件
このエピソード、めっちゃ刺さりました…。真面目な美咲さんの左耳だけにあるピアスホール、それが元カノのためって知った瞬間の絶望感、すごく伝わってきた。「私、多分、そこまで好きになってもらってないから」っていう主人公の諦め、重いけど美しい嫉妬と劣等感が詰まってて、胸が苦しくなった。続きが気になります…
#創作