テラーノベル
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#独占欲
#ワンナイトラブ
ランディリック越しにではあったが、やっとリリアンナと視線が合った。
でも、それはほんの一瞬だけで……すぐに、その瞳は伏せられた。
(……リリアンナ嬢)
この国の皇太子アレクト殿下から、リリアンナのことを妻としてマーロケリー国へ迎えたい旨は伝わっているはずだ。
なのに……この態度は余りにも不自然だ。
(ライオール卿がリリアンナ嬢を、という噂は……もしや本当なのか?)
決定打には、まだ至っていない。だが、――この場の空気が、それを物語っていた。
「国境はすぐそことはいえ、お疲れになられたでしょう」
ランディリックが言葉を重ねる。
「まずはお茶でもいかがですか」
「気遣い痛み入る」
応じながら、セレノは視線を外さない。
あくまで穏やかに……だが、焦点は定めたまま。
「――リリアンナ嬢、僕との約束を覚えてる?」
唐突にも思える一言。
だが、もちろん意図的だった。
場の流れを、一度崩すために。
ランディリックの隣へ腰かけたリリアンナの指先が、わずかに強張る。
「……はい」
返答は、即座だった。
「覚えております」
だが……温度が、ない。
言葉だけが整っている。
あのときの、『楽しみにしています!』という雰囲気は、微塵も感じられなかった。
(……二人きりになれれば)
そうすれば、何かが戻るのではないかと――思った。
「では早速――」
「殿下」
そんな目論見を持ったセレノの言葉を、静かに遮ったのはランディリックだった。
声音は穏やかだ。
だが、はっきりと割って入る意思がある。
「実はリリーは、体調が万全ではありません」
やわらかく告げる。
「……大事な身ですので、無理をさせるわけにはいきません」
庇う言葉。だが、そのセリフに隠された意味を、セレノは無視できなかった。
「それは……どういう……?」
「そのままの意味です、殿下。お察しいただきたい」
セレノに視線を向けられたリリアンナの肩が、ほんのわずかに揺れる。視線が、静かに伏せられる。
腿の上でギュッと握りしめられた両手が、どこか無意識に身体を守るような仕草に見えた。
「申し訳ありません、セレノ殿下。本当に……体調がすぐれないのです。約束を守れない非礼をどうかお許しください」
丁寧な拒絶。
言葉こそ慇懃だが、一度も視線がセレノを向かない。
(これは……)
考えたくない確信が、胸の奥で固まっていく。
ともするとあどけなくすら思えたリリアンナ嬢が、今はどこか艶めいた色気さえ纏っている。
その変化に、セレノとて心当たりがないわけではなかった。
沈黙が落ちる。
先ほどよりも、重く、そして、冷たい沈黙が。
「セレノ殿下、アレクト殿下からリリー宛に書簡が届いたのですが、そのことについて、わたくしと二人きりで改めて話しませんか?」
ランディリックの言葉に、セレノはうなずくことしかできなかった。
コメント
2件
リリアンナは妊娠しているのかな?
ドキドキ。 リリーを手籠?にしたって言っちゃうのかな🥵