髪の話3
青井ラディの髪
自分の髪が嫌い。
この世の何よりも嫌いな家族と同じ、青色なのが憎かった。
だから親の言う事を無視して校則の緩い高校に入学し、髪を染めた。
父には怒鳴られたし、母は失望したように口を聞かなくなった。
兄は、兄だけは、何も言ってこなかった。
染めて帰ったその日、俺の方をチラリと見てそれだけ。
あいつは元から俺に興味なんてなかった。
ロスサントスに行った。
あいつがいると聞いて、その様を見たくて。
てっきりギャングにでもなるのではないかと思っていたのに、あいつは親と同じ、公務員、警察になっていたんだ。
ここでも親のいいなりか、お前はいつまでも両親の玩具のままなんだな。
そう、思って。
それ以上その街に居るのをやめた。
家に帰って、白いフードを脱ぐ。
玄関の姿見に映る自分の髪は茶色くて、根元は新しく生えた髪で青くて、不格好で。
腹の奥底で何かがぐるぐると渦巻いていて、何故だか涙がでた。
あいつと同じ顔で、同じ声をしているのに、あいつになれないことが悔しかった。
両親はいつもいつも兄を、兄だけを見ていた。
俺は、
「俺はお前になりたかったよ……っ。」
俺はこの髪が嫌いだ。
何故青い服を着ていたの?
お兄ちゃんに気づいて欲しかったのかな。