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23 ◇愚かなことをした
『なんてこった』自分は何という愚かなことをしたのだろう。
まんまの凛子の本性を……目の前で繰り広げられた態度を……見せられて
彼女の傍若無人で破廉恥な振る舞いに、哲司は己のしてきた言動を
振り返らないわけにはいかなくなった。
浮気をしたことも、温子に謝罪できなかっことも、家を出て行かなくても
済むように温子の味方になることもせずオロオロするばかりで、大事な
離婚届けも凛子の言いなりになり、薄々感じてはいたがここにきていかに
自分が取るに足らない駄目駄目人間であったか……存在価値のない人間で
あるかのような振る舞いをしてきたか……
ということに改めて気づかされ、哲司は打ちのめされた。
この日から、哲司は夜も寝つきが一層わるくなり、仕事にも身が入らず
ただただ、後悔の念に襲われ続け気付くと鬱状態に陥っていた。
いうて、離婚して半年も経っていない。
まだ、間に合うかもしれない。
今度こそ、温子に謝罪をして……謝罪をしなければと思い、そんなことばかり
考えて日々を過ごすようになっていたある日のこと、比較的仲の良い職場の
同僚から声を掛けられた。
********
「な、奥さんって、家を出て行ったのか?」
「えっ、何で……」
「狭い町だし、奥さんが出て行く日に近所で懇意にしてた人とたまたま会って
自分は家族全員からいらない人間だと言われ出て行くことになったと礼を伝えて
町内を出て行ったみたいで……。
挨拶されたその婆さんとうちのお袋が知り合いでな。
お袋は随分前にその話を聞いていたらしくって。
俺はまぁ、最近知ったんだが。
お袋と婆さんの推測では、お前と妹と娘が3人でちょくちょく連れもって
歩いているところを見ていたから、お前が妹とできて奥さんが身を引いたのか、
引かされたのかだろうねぇ~なんて話してたわ。
普通は出て行くのが妹か妹とお前ってなるのに、被害者の奥さんを他の家族が
寄ってたかって追い出したんだろ? 巷で噂になってるらしいな、変な家族だって!」
―――――――― おまけ XXX シナリオ風 ――――――――――
〇 街中・ある日の午後/哲司の独白
哲司(心の声)「なんてこった……」
「俺は、なんという愚かなことをしてしまったのだろう」
凛子が男と連れ立って歩く様子を目撃する哲司。
凛子は哲司に気づくも、素っ気ない態度)
哲司(心の声)
「あれが……あれが本性だったんだ……」
「何故、もっと早く気づけなかったのか。いや、気づいていたのだ。
気づきながらも、見て見ぬふりを……」
〇 哲司の自室・夜
(回想)
哲司(心の声)「浮気した……謝れなかった……
温子の味方にもなれなかった……
離婚届にサインまでさせられて……
俺は、俺は……なんて情けない」
〇 職場・昼休み/柳田との会話]
柳田「なぁ、お前……奥さん、出て行ったってホントか?」
哲司「えっ、なぜ……」
柳田「町内で見かけた人がいたんだよ。出て行く日に近所の婆さんに
『自分は家族全員からいらない人間だと言われて家を出る』って挨拶したらしい」
哲司(驚いて)「……そんなことを……」
柳田「それが、俺んとこのお袋経由で聞いてな。
妹とお前が娘と一緒に歩いてたのを見た婆さんが言ったんだよ。
『普通、出て行くのは妹か妹と旦那だろう』って。
まったく、変な家族だって噂になってるぞ」