テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
🎀
950
#さのじん
自分夢の中
3,722
舜side
画面に映る『面談のお願い』の文字が、夜のロータリーの冷たい空気の中で、そこだけ熱を持ったように白く光っていた。
舜「め、面談……? これって、そういうことか!?」
柔「……うん。ただの1次審査通過じゃない。編集部が直接、俺たちに会いたがってる」
柔太朗の綺麗な顔に、さっきまでの不安は微塵もなかった。
代わりに宿ったのは、見たこともないようなギラギラとした野心の光だ。
俺たちの世界の色が変わる。その予感は、確信へと変わった。
◇
数日後。俺たちはガチガチに緊張しながら、大手出版社の重いロビーの門をくぐった。
案内された会議室で待っていたのは、いかにも「できるキャリアウーマン」といった風貌の担当編集者・神楽坂さんだった。
神楽坂「単刀直入に言うわね。あなたたちの『マジカル・バディ』、編集長以下、満場一致で大絶賛よ。特に、男子高校生が描いたとは思えない、この女児の『憧れ』を完璧に捉えたプロットと、泥臭いほど熱い作画の化学反応が素晴らしいわ」
机にドン、と置かれたのは、俺たちが必死で描いた原稿のコピー。
そこには付箋がこれでもかと貼られていた。
神楽坂「そこで提案なんだけど。次号の増刊号に、読み切りとしてこれをそのまま掲載します。読者アンケートで3位以内に入ったら――即、本誌での連載決定よ」
舜・柔「連載……!?」
頭を殴られたような衝撃だった。
デビューを飛び越えて、いきなり連載を賭けた大勝負の切符が、俺たちの目の前に差し出されたのだ。
神楽坂「ただし、締め切りは2週間後。ページ数は今の倍。やれる?」
普通の高校生なら、ここで怖気づくかもしれない。
でも、俺の隣にいる相棒は、不敵に、そして最高に美しく微笑んだ。
柔「やれます。俺たちの漫画の面白さは、こんなもんじゃありませんから」
舜「(……言うたな、この王子様!)おう、やったるわ! 読者アンケート1位、かっさらって見せます!」
◇
そこからの2週間は、まさに地獄、いや、アドレナリンにまみれた天国だった。
学校が終われば柔太朗の部屋に直行し、朝まで机に向かう。
柔太朗の紡ぐプロットはさらにキレを増し、俺のペンは原稿用紙が擦り切れるほどの勢いで最高の表情を描き殴っていく。
そして迎えた、雑誌の発売日。
SNSで『作画と話の熱量が少女漫画の枠を超えてる』と瞬く間に拡散され、トレンドに「マジカル・バディ」の文字が躍った。発売から3日後、俺のスマホが文字通り爆発するように鳴り響いた。
画面には「柔太朗」の文字。
舜「もしもし、柔太朗! SNSのトレンド、見たか!?」
柔「……舜太くん、今、神楽坂さんから連絡があった。……本誌での連載、決定したよ」
舜「ーーーっっっしゃあぁぁぁぁ!!!!」
自室で思い切り拳を突き上げる。涙がボロボロと溢れて止まらなかった。
俺たちの声が、熱意が、あの赤いポストを通じて、本当に世界に届いたんだ。
嬉しくて、心臓が破裂しそうで、受話器の向こうの相棒にさらに捲し立てようとした。
舜「なぁ、アンケート何位やった!? やっぱり1位か!?」
しかし、柔太朗の返答は、予想に反して少しだけ静かだった。
柔「……いや。結果は、堂々の『第2位』」
舜「え……2位?」
柔「うん。1位は、現役の看板作家の星野先生。……俺たちは、あと一歩、届かなかった」
2位で連載決定。
それは新人として、異例中の異例の快挙だ。
普通なら大手を振って大喜びするべき結果。
それなのに、受話器を握る俺の手に、ぎり、と力がこもる。ものすごく嬉しい。
頭が狂いそうなほど嬉しいのにーー胸の奥に、じわじわと、黒くて熱い「もどかしさ」が広がっていく。
天下を獲るって言ったんだ。
1位じゃなきゃ、俺たちの『マジカル・バディ』が世界一だって、胸を張って証明したことにならない。
舜「……柔太朗」
柔「うん」
舜「……めっちゃ悔しいわ」
俺がポツリと溢すと、電話の向こうで柔太朗が「ふっ」と、低く笑ったのが分かった。
その笑い声には、諦めなんて1ミリもなくて、完全に『戦闘モード』の火がついていた。
柔「そうだね。俺も、死ぬほど悔しい。……2位なんかで満足してたら、俺たちの漫画に失礼だ」
柔太朗の声が、ゾクゾクするほど冷たく、そして熱く響く。
柔「本誌連載が始まったら、今度こそあの看板作家を引きずり下ろして、完璧な1位を獲ろう」
悔しさが、そのまま二人の爆発的なエネルギーへと変わっていく。
もどかしさに、完全に火をつけられた。
舜「おう……! 2位スタート上等じゃボケェ! ここから一気にぶち抜いたるわ!」
冬の夜空に、俺たちの新たな闘志が燃え上がる。
男子高校生二人の、本当の逆襲が、今ここから爆発する。
fin
コメント
3件
諦めるんじゃなくてそれを強みにするのがすごく好きです!💕
うわ、第8話……! ラストの「めっちゃ悔しいわ」からの柔太朗の「2位なんかで満足してたら俺たちの漫画に失礼だ」って流れ、めっちゃ熱いですね。2位で連載決定って普通なら大喜びの快挙なのに、1位にこだわる青さっていうか、純粋な野心がまぶしい。神楽坂さんの「男高生が描いたとは思えない女児の憧れの完璧さ」という評価も納得で、設定もキャラもちゃんと機能してる。2位スタートをどう逆襲に変えていくのか、続きが気になりすぎます……!