私は、取り敢えずスマホを机の上に置き
今 起こっている状況を頭の中で整理した
「えっと……このメールは、未来の私を名乗る人物から送られて来て…その未来の私が言うには…… 私は、未来で自殺する…って事だよね」
何だか…怖く感じた
勿論……メールだから顔は見えないし
送信者が 嘘をついて未来の私を演じている可能性だって有り得る
「……はぁ…困ったな 」
本当なら 親に相談したいところだけれど…親はきっと「そんな奴 無視しときなさい」としか言わないだろう
「……ブロック……する?」
そんな案が頭の中にふと思い浮かび
私は、送信者をブロックした
「……これで…安心…かな?」
私は、顔から流れてきた一粒の冷や汗を腕で拭った
「………明日は…学校か……面倒だな」
本音がポロリと口から零れた
決して 学校生活が嫌という訳では無い
だが…ずっと笑顔で居ることに最近…疲れてきたのだ
「……人は、第一印象が大事らしいし…入学当時からずっと笑顔で頼り甲斐のある優等生を演じて来たからな~…」
自分を偽るのを辞める事も可能だが…その辞め時が分からなくなってしまった
「………まっ…そんな事言っても仕方ないか よ~し明日も頑張るぞ~」
私は、椅子を降り 鞄の中に 明日必要な物を入れ始めた
「……明日は…そうだ 美術の授業があるから 色鉛筆とスケッチブック持っていかなきゃな…」
机の引き出しを開き 鮮やかで秀麗な色鉛筆と
「sketchbook」と白い文字で描かれた 新品のスケッチブックが姿を現した
すぐに手に取り 色鉛筆が全色揃っているかを確認する
「……よし全部揃ってる」
すぐに色鉛筆を元々入っていた小柄なケースに入れ スケッチブックと一緒に鞄の中に入れた
「……後は___」
他に必要な物が無いかと
確認表を見ると…付けたはずの無い 青いシミが付着していた
「………何だろ…これ……」
シミを指で擦ってみるが…取れない
「………絵の具使ってる時に付いちゃったのかな…」
もしそうだったなら…別に大した事では無い
“その仮説が正しかったら”の話だが……
「……考え過ぎかな?」
私は、そのシミを別に気にせず
確認表に書かれた必要な物を鞄の中に次々入れていった
「おはよう」
教室の中に入ると 幼なじみの「夏絵菜」が落ち着いた口調で挨拶してくれた
「おはよう
夏絵菜 昨日の英検は どうだった?」
私は、笑顔を創り 夏絵菜に挨拶を返すついでに 英検の事を聞いた
「ん~…まぁ…大丈夫だと思う」
少し微妙な反応を見せたが……恐らくこの反応は 〘昇格〙したのだろう
「夏絵菜って今……英検何級なの?」
私がそう聞くと 夏絵菜は、小さく 栗色のロングヘアを揺らし 俯いてから
「……2級かな」
と だけ答えた
「そっか…凄いね 私…まだ英検5級だ」
少し 笑顔がくしゃっとなってしまったが…
そのまま淡々と言葉を続けた
「……そういえば…蒼唯 今日の美術の時間 何描くか知ってる?」
蒼唯は、私の名前だ
まぁ…私はあまり好きでは無い
この名前は、少し男の子らしい気がするから
「…ん~……何だろう」
私は、少し曖昧な返事を返した
「風の噂なんだけど…この前 理科の先生が海の生物について説明してたでしょ?」
「うん」
「それを絵のネタに困っていた美術の先生が聞きつけて 〘海の生物〙を描くって聞いたよ」
「海の生物…」
私の頭の中に真っ先に浮かんでくるのは、
“クジラ”
好きか嫌いかを聞かれると 好きな方に近い気がする
平穏で 優しく 海のお母さんの様な感じがして好きだ
「………夏絵菜は、何書くの?」
夏絵菜は、 少し考えるフリをしてから
「ペンギンかな~?」
と応えた
「あのフワフワの毛…一度触って見たい 」
うっとりとした目で 教室の天井を見る
「ふふっ……ペンギン可愛いよね」
私も すかさず夏絵菜に合わせる
「…そうだ」
夏絵菜は、瞳をキラキラと輝かせて
私の目を見る
チョコレートのように甘く深みのある瞳にクラクラとした
まるで…薬物を吸ったみたいだ
「蒼唯は、何書くの?」
「私…?」
「うん 蒼唯が描きたい〘海の生物〙って何だか想像出来ないから」
一瞬…教室が静かになった
「…………そうだね 私は………イルカかな?」
そうやって本当に描きたいものを誤魔化した
「…良いね 蒼唯に似合ってる」
笑顔で私に言葉を掛ける彼女が… 少し……
「…………そっか…有難う」
私は、微笑んだ
本当の好きな物を叫びたかった自分を隠す為に
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