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時刻は23時00分。
この場所で、お前らの帰りをずっと待ち続けて何年経つのだろうか。
私だけを置いて、お前らは自分たちの進みたい道へと歩み続けはじめ、自分の周りはいつの間にか一人になっていた。
前まで狭いなと思っていたこの部屋も、気がついたら異様に広く感じていて。
自分に課せられた、やるべき事を進めればアイツラは戻ってくると勝手に思ってた。
でも、どれだけ頑張ってもアイツラは戻ってこない。
ただ、国民たちの言葉だけが自分の背中にだんだん積み重なっていって、足枷を付けられたのかと思わせるほど一歩一歩の移動が重く感じる。
暇な時間で情報をかき集めても、”あの日”までの記録しか集まらなかった。
私は、
……俺は、
時に忘れられて、そのままとり残された死体だ。
いつからアイツラが居なくなったのだろうか。
突然、嫌な予感がして慌てて身体を起こし、いつもアイツラと会う食堂という場所で待ち続けた。
この嫌な予感から、目を逸らし続けながらずっと。
でも、どれだけ時間が経ってもアイツラが来ることはなかった。
昼になっても、夜になっても、次の日の朝にまで時間が進もうと、アイツラの影すら見当たらなかった。
国の総統になったからには、こんな必要のない気持ちまで捨てたはずなのに、なのに。
待ち続けている間、怖くなんてなかったのに足の震えが止まらなかった。
待ち続けることを面倒くさく思い、アイツラの部屋へ足を運んだ。
ただ、どの部屋もノックをしても反応はなく、扉を開けて中を見ても人の気配など無かった。
俺の仲間が過ごしていた部屋は、何もなかったかのようなただの空き部屋と化していた、誰も住んでいなかったと思わせるほど汚かった。
アイツラがこの世界から消されたようで、神のいたずらのようで、
……また俺は焦り始めていたか。
…話を戻そう。
誰も居ないはずだが、何故か誰かいるような感覚がしている。そのせいか、また自分が経験したことを話そうと思った。
話したくないはずだったのだが。
……その、仲間の部屋を探索したんだ。
俺を除き14名の部屋を、全て。
どれだけ探しても、アイツラが生活していたであろう痕跡や物など何も置かれていなかった。
アイツラが居たという記録も、存在も、全て消されていた。
ただ、アイツラが居なくなったと気付いた時は自分の記憶に影響など何もなかった。
最初はドッキリか何かだろうと思った。
何故なら仲間の中には悪戯が大好きな奴がいたりするから、そいつの仕業だと勝手に思っていた。
でも、何日も、いつも通り仕事をして、食い物を自分の口の中へ無理やりねじ込んで、現実から逃げるようにベッドへ逃げ込んで、また起きて、いつもみたいに同じ事を繰り返し続けてもアイツラの姿を見ることはなかった。
そしてある日、ふと気付いた。
国民はこの異常事態に気付いているのだろうか、と。
そして街へ出かけた。
誰も居なかった。
いつも訪れていたケーキ屋を見ても、何度もお世話になっている仕立て屋を見ても、賑やかな声が聞こえてくる噴水を訪れても。
この国にある全ての場所へ、休まず自ら足を運んだ。
人を探すように、でも。
人の姿、いや、影すら見当たらなかった。
まるで自分だけが取り残されたような世界だった。
植物以外の、生きているもの全てが見当たらなかった。
今までどんな事があろうと、こんなに恐怖に襲われることはなかったのに、
一日一日が楽しく思えたのに、人が居ないと気付いた日から、……いや、自分が気付いてなかっただけで本当はアイツラがいなくなった時からだった。
生きることが楽しくないと思い始めたのは。
「 ……不味い。 」
どれもこれも不味い。不味い。不味すぎる。
今は、何かを胃の中へ入れたいなと思った為、久しぶりに自分の大好きだった甘いものへ手を伸ばしてみた。
でも、やはり一人の食事は寂しいものだ。
今まで一人で食べていたときもあったのに、それでも美味しく感じたのは身近に信頼できる仲間が、自分が楽しく居られる仲間がそばに居続けてくれたからだろう。
「 …そろそろ帰ってきいや。 」
「 帰ってこーへんと、お前らの仕事どうするんや…ッ 」
思わず地元弁が出てしまった。
だが、この場には誰も居ないから別に出してもいいだろう。
ふと、窓の方を向く。
変わらず辺りは真っ暗で、満月が昇っていた。
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20XX年、9月30日──────
『 やっと出会えた 』
人が異様に集まらない古びたとある絵画へ目がつられる。
その絵は、タイトルは明るいのに絵からは悲しみ、恐怖、不安など、ネガティブな感情しか伝わってこない作品で、気味が悪かった。
でも、何故か目を逸らすことができなかった。
それは、今日同じく美術館へ訪れた同僚達も同じようだった。
その絵画に目を凝らすように。まるで何かに取り憑かれたようにジーッと見続ける。
外国で見つかった絵なのだろうか。絵の中にいる人物の髪色は金髪寄りで明るく、でも服装は真っ黒なスーツみたいな、偉い人のような服装をしており、何かを怯えているように蹲っているように描かれていた。
初めて見た絵なのに、どこか既視感があった。
「 なぁ、これなんか見たことない? 」
「 あーなんかわかるかも 」
「 初めて見る絵ですが……妙ですね 」
「 どこで見たか覚えてないんすか?兄さん 」
「 いやぁ〜……さっぱり覚えてねぇ〜… 」
「 え、なんかこわすぎません…? 」
「 いや、多分記憶違いやろ!おん…… 」
「 おいおい、ビビってんのかぁ〜?w 」
「 は、はぁ?!ビビってねぇし?! 」
「 静かにしろ!一応俺等がおるん美術館やからな? 」
「「 …ごめんなさーい、ママ 」」
「 誰がママじゃゴラ 」
「 wwwwwwww 」
「 んー……とりあえずここにいる時間も限られますし他の絵も見に行きません? 」
「 せやな、気になる奴はまた今度見ろっちゅーことで 」
「 草 」
同僚達と会話を交わしながらその場を離れ、他の絵画の方へと足を動かす。
多分、既視感があるのに覚えていないのはよく幼少期で経験したことがあるデジャヴ現象だと思う。
いやぁ……この年でもまだこういう現象があるということはまだ若いんやろな。
……なんかジジイみたいな感想やけど嬉しいな(?)
「 おーい、はよ行くでー? 」
「 …あぁ、すまんすまんw 」
「 ほら、アイツラが帰りたいからって先に行っとるから急ぐで?! 」
「 いやアイツラなにしてんの!?w 」
賑やかな声が去り、二人の男が、また絵画の前へ訪れる。
「 ……やっと見つけたで。 」
「 …w、題名と絵の差が…ww 」
「 ア”ーッハッハッハッハッハッハッwwwwwwwwwあいつらしいな!wwww 」
「 ちょ、声でかいって 」
「 すまんすまん!……にしても、懐かしいな 」
「 ほんとに。しかもさっきの人達も懐かしいよね〜 」
「 せやな!! 」
太陽のように明るく、金髪の男は眩しい笑みを浮かべながら絵画へ語り、
同じく絵画へ語りかけながら優しい笑みを浮かべる白い服を身にまとった黒髪の男。
「 さて、目的は果たしたし帰ろっか 」
「 せやな。 」
んじゃ、元気でな。
そう絵画の方を向きながら声をかけ、男たちはその場を去る。
最近発見された『 やっと出会えた 』という絵画。
とある国が、立ち入り禁止区域にしていた荒廃した建物を探索している際に発見されたものである。
作者は不明であり、絵画の近くにはとあるボイスレコーダーが置かれていた。
発見された絵画は良いものではあったが、欠点が1つあった。
それが、”見たいと思わない”という不思議な点である。
素晴らしい作品ではあるものの、絵画を拝見していた鑑定士の殆どが何故か”見たくない”、と拒んでいたそう。
ただ、一部の人間の目を惹き付けるほどの魅力があるそう。
この現象を、心理学者はただの「感情移入の恐怖」だと述べているそう。
なお、同じく発見されたボイスレコーダーに記録されていたのは、とある音楽であった。
その音楽は、絵画から伝わる世界観などと真逆である明るく、ピアノのみで構成されていたものだった。
現在、絵画の方は佐山県の方にある美術館で展示されている模様。
ボイスレコーダーの方は、欲しい。と手を挙げた方が買い取り、現在はそちらの方にある模様。
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※全てフィクションです。
※二次創作