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「模写…それが奴らの術式か。」朱音が神経質に呟いた。
「模写?」透が首をかしげる。
「そうだ。相手の術式や能力を完璧にコピーし、使いこなすことができる。」朱音は指で資料をトントンと叩いた。「もしも白川の術式を模写されたら…その威力は想像以上のものになる。」
「俺の技をコピーされたところで、使いこなせる奴なんていねぇよ。」白川が冷笑を浮かべながら席についた。
「そう言えるのも今のうちだぞ。模写は単なるコピーじゃない。戦略まで模倣してくる…それが奴らの恐ろしいところだ。」朱音が慎重に言葉を選びながら続けた。
百鬼が頷きながら言った。「つまり、俺たちが今まで戦ってきた技術や戦術が、すぐに奴らの手の内にあるってことか。」
その夜、静かなはずの拠点周辺に再び異様な霊圧が漂い始めた。
「来たか…!」透が窓の外を見て叫んだ。
そこに現れたのは、十二神将の一体「写影」だった。マントを纏い、仮面をつけた謎めいた存在だ。その姿からは異常な気配が感じられ、特別部隊全員が身構えた。
「俺が出る。」白川が立ち上がると、他のメンバーはすぐに制止しようとしたが、白川はすでに敵の前に立っていた。
「写影、か。俺の技を模写できるって噂の奴か?面白い、やってみろ。」白川は相変わらず挑発的な口調だった。
写影は一言も発さず、ただ静かに白川を見つめる。その瞬間、写影の手には「無限殲滅」が現れた。
「…本当に模写したのかよ!」透が驚きの声を上げる。
「まぁ、模写できるってわかっていたんだ。その使い方だ。」白川は冷静だったが、内心、多少の焦りを感じていた。自分の技が相手に使われることが、どれだけ厄介か理解していたからだ。
写影は、無表情のまま「無限殲滅」を放つ。白川が技で応じ、黒い渦がぶつかり合い、空間がひび割れるような衝撃が走った。
「こんな力のぶつかり合い、拠点が持たねぇぞ!」百鬼が叫び、朱音と透が急いで防御結界を張り巡らせる。
「くそ…、本当に俺の技を完全にコピーしやがったか。」白川は苛立ちながらも、次の一手を考えていた。
だが、写影の動きはそれだけではなかった。彼は次に、透の術式を模倣し、遠距離からの攻撃を織り交ぜ始めた。
「俺の技も…?!」透は驚愕する。
「全てを模写する。奴らの能力だ。」朱音が歯を食いしばりながら言った。
「でも、感情はない。」白川は微笑んだ。「模写できても、俺の本気はコピーできないんだよ。」
言い放った瞬間、白川は新たな術式を解放した。「黒渦」だけではない、今まで隠していた技――「白焔」が彼の手に現れた。
「これで終わりだ、写影。」白川は冷酷な声で呟くと、白焔を一気に放った。
写影はその技を模写する間もなく、白川の新たな力に呑まれ、瞬く間に消し飛んだ。
戦いが終わり、拠点に静寂が戻った。白川は息を整えながらも、疲れを感じていないように見えた。
「模写なんて所詮、真似事だ。本物の力は模倣できない。」白川は不遜な笑みを浮かべ、全員に背を向けた。
「だが、写影だけじゃない。他の十二神将も模写の術式を持っている可能性が高い。」朱音は冷静に状況を整理しようとした。
「次に来る奴は、もっと厄介かもしれないな…」百鬼が呟く。
「模写されないようにするには…どうすればいい?」透が尋ねた。
朱音は少し考え込んでから答えた。「感情や意志、そしてその場その場の戦略――模写できない要素だ。つまり、私たちは技そのものではなく、どう戦うかを考えなければならない。」
白川は部隊の意見を聞き流すようにしながら、呟いた。「どう戦おうが、俺には関係ない。俺は俺のやり方で潰す。」
その言葉に、全員が不安を覚えた。白川は確かに最強だが、強さが制御できなくなった時、彼が敵となる日も近いかもしれない。