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「次は…影獣か。」百鬼が低い声で呟く。
「影獣って何だ?」透が疑問の声を上げる。
「影に潜む獣。闇そのものを司る存在だ。物理的な存在じゃない、影そのものが身体だ。」朱音が資料を読みながら説明する。
「つまり、攻撃が効かないってことか?」透は眉をひそめた。
「影獣は姿を変えることができる。獣じゃない…奴は生きた影のようなものだ。」朱音の顔には深刻な表情が浮かんでいた。
白川は冷たい笑みを浮かべた。「そんなもの、俺が焼き払えば終わりだ。」
だが、朱音は首を振った。「白川、お前の『白焔』は確かに強力だ。でも、影獣には直接的な攻撃が通じない。奴の本体は影の中に潜んでいて、姿を捉えられないんだ。」
「そんなもん、見つけ出してぶっ潰せばいいだろ。」白川は相変わらず自信に満ちた態度だった。
夜が更け、拠点の周辺が不自然に静まり返っていた。月明かりも薄れていく中、黒い霧のような影が地面から湧き出し始めた。
「来たか…」透が不安そうに周囲を見渡す。
その瞬間、巨大な影の獣が現れた。影獣は形を持たない黒い霧の塊のようで、異様な低音が辺りに響き渡る。
「気をつけろ!奴は影そのものだ!」朱音が警告する。
白川は構えることなく、影獣を睨みつけた。「そんな奴、俺の前じゃ雑魚だ。」
影獣は言葉を発することなく、意志を持ったように動き出した。闇が獣の形を成し、鋭い影を白川に向けて放ってくる。
白川は「白焔」を放ち、影獣に向けて火の球をぶつけた。しかし、影獣は火の球を受け流すように身体を霧に変え、まるで何事もなかったかのように再び姿を現した。
「やっぱり、物理攻撃は通じないか。」百鬼が呟く。
「このままじゃ、何もできない!」透が焦燥感を滲ませる。
「そんなはずがないだろう…」白川は冷静に次の手を考えていた。
「朱音、奴の本体はどこにある?」白川が短く問いかけた。
「それが問題なの。奴の本体は影の中に潜んでいて、簡単には見つけられない。」朱音は答えた。
「だが、本体があるなら、そこに隙があるってことだな。」白川はふと笑みを浮かべた。
「おい、まさか…!」朱音が何かを察知し、叫んだ。
白川は無視するように地面に手をつけ、術式を展開した。すると、周囲が一気に変わり、白川の足元から黒い火焔が巻き上がる。
「お前がどこに潜んでいようが、俺には関係ない。」白川は冷たい声で呟くと、次の瞬間、彼の全身から炎が噴き出した。
「白焔・無限拡散!」
白川が放った術式は、周囲の空間全てを包み込み、影そのものを燃やし尽くす勢いだった。影獣は形を変えて逃れようとしたが、火焔はそれを許さず、影の奥深くに潜む本体を直撃した。
「見つけたぞ…」白川が冷たく呟き、影獣の中心部へと向かって炎を集中させた。
影獣は抵抗するかのように呻き声を上げるが、白川の前では無力だった。影獣は完全に形を失い、黒い霧のように消えていった。
「白川、本当に…お前は…」朱音は驚きと恐怖の入り混じった表情で白川を見つめた。
「何だよ。俺が全部片付けたんじゃねぇか。」白川は平然とした表情で言い放つ。
「だが…」透が言葉を詰まらせる。「こんな戦い方で、いつまで持つんだ?」
「お前らには関係ねぇよ。」白川は冷たく笑みを浮かべ、皆に背を向けて去っていった。
影獣は倒された。しかし、特別部隊の面々には一抹の不安が残った。白川の力があまりにも強大すぎる。その力が制御できなくなった時、次に敵となるのは彼自身かもしれない。