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涙が枯れるまで泣き晴らして久しぶりに青井の胸の中でぐっすり寝て、この上ない幸せを感じていたはずのつぼ浦は翌日熱を出した。


「頭痛い?気持ち悪い?」


「いや別になんも、平気。」


「嘘つかないで本当の事言って。」


「本当だって、ちょい頭ボーッとしてるだけ。」


「えぇー?とりあえず病院行くか、起きれそう?」


「いや良い、寝てれば治る。」


頑なにベッドから動かないつぼ浦。仕方なく夕方まで様子を見ようと思ったのも束の間、時間が経つにつれどんどん熱が上がっていく。


「顔あっつい、辛いね熱測ろ。……は、40度!?流石にこれは見過ごせない。しんどい?」


「んーん、へいき…」


「顔はそうは言ってないな、準備するからちょっと待ってて。」


フラフラで歩くのもやっとなつぼ浦を支えて病院に行ったが風邪でも感染症でも、病気でもなく本当にただ発熱しているだけだった。


「この解熱剤が効くか少し様子を見たいからここで安静にしていてくれ。…らだお君も少しだけ検査をさせてほしい。」


かげまるがそう言って青井を部屋から連れ出した。やり忘れた検査でもあったのかなーなんて呑気な事を考えている青井とは裏腹に、かげまるは険しい顔をしている。


「こっちの部屋に……よし座ってくれ。えー、これから話す内容はつぼ浦君からは固く口止めされていたが、そうも言ってられない状況になってしまった。らだお君が寝ている間、つぼ浦君は… 」


今までのつぼ浦の様子を丁寧に、事細かに話してくれた。そんな事になっていたなんて全く知らなかった青井は顔を曇らせながら聞いていた。


「…そしてこれは1番大事な事だ。つぼ浦君は1度、自死を仄めかすような言動をしている。」


「は!?え…自死なんて……そんな、つぼ浦がなんで……その、原因?とかっていうのはやっぱり俺が襲われて寝てたから?」


「もちろんそれも一因ではあると思う。しかし聞いた話によるとらだお君や皆に迷惑をかけたと自分自身を責めているような様子だったとの事だから、そっちのほうが大きな要因かと考えている。らだお君が起きてからは特に安定しているように見えていたが、今回の発熱も精神面からきている可能性が高い。」


「迷惑なんて、つぼ浦……俺はどうしたら…」


「特別何かするというよりは日常を取り戻していく方向が良いだろう。らだお君も退院したばかりで大変だとは思うが、注意してつぼ浦君の様子をよく見ていてほしい。今は一緒に過ごす事が1番の治療になる筈だ。」




経過観察という事で夕方まで病院で過ごし家に帰ると、傍にいたいと言うつぼ浦をソファに寝かせて夕食の準備を始める。


「食べたいもんは?」


「んー…なんでも。」


「前に俺が風邪引いた時つぼ浦が作ってくれたやつ…これ?」


「えーと…そうそれ。」


「おっけ作ってみる、不味かったらごめん。」


作り終わって呼びかけるとつぼ浦はスゥスゥ寝息で返事をする。ならばと家事を済ませて戻ってくると窓を開けてバルコニーに出ていた。


「つぼ浦ー何やってんの?……えっつぼ浦!!!」


つぼ浦が手すりを乗り越えようと身を乗り出した瞬間急いで腕を引っぱり、後ろから抱きとめた。青井は全身から嫌な汗が吹き出て心臓はドクドクと変な音で脈打っている。


「…はぁっはぁ、はぁ。……ちょ、中入ろ。」


「嫌だっアオセンっ!」


「お願い、つぼ浦。お願いだから…」


「…お願い…どうしても?」


「うん、どうしても。一生に一度のお願い。」


「…そこまで言うなら、ちょっとだけだぞ。」


説得してソファに誘導する。青井はどんな時もつぼ浦を支えるつもりでいたが、いざこの場面を目の当たりにするとなんと言葉をかければ良いのか分からない。


「つぼ浦……えっと、暑い?外行きたかったの?」


「……違う、アオセンは俺のこと嫌いだから…」


「俺がつぼ浦のこと嫌い?なんでそう思ったの?」


「だって、アオセンのこと守れねぇし、こんな自分勝手で弱っちくて、迷惑ばっかかけて、アオセンも、警察の皆も街の皆も、俺のこと嫌いだから…俺がいなくなったほうが、皆嬉しいし幸せだろ。」


あの時と同じ、得体の知れない「何か」がつぼ浦の心を闇へと誘う。感情を鷲掴まれて支配されているような感覚に、無意識に胸の前に拳を握った。青井はその手を両手で優しく包み込む。


「つぼ浦、俺の話聞いてくれる?」


「…話?まぁ聞くだけなら。」


「つぼ浦が警察官になって2ヶ月ぐらい経った頃かな、署内ですれ違った時目が離せなくなったんだよね。」


「俺から?」


「そう、ずっと目で追っちゃっててさ。それからは事件対応で鉢合わせると嬉しいし、無線で声が聞こえるとニヤけるし、たまに大型対応につぼ浦が来た時はつぼ浦頑張れ、倒れるな!て思ってた。」


「なんだよそれ、贔屓すんなよ。」


「態度には出してないつもりだったよ?実際つぼ浦気付かなかったでしょ。で、なんかつぼ浦気になるんだよなーなんでかなーって不思議に思ってたんだけど、ずっと好きだったんだよね。」


「……嘘つくな…」


「嘘なんてついてない。…告白だって本当はしないつもりだったんだよ。つぼ浦恋愛とかそういうの苦手だったでしょ、困らせたくなかったから。でも俺が気持ち抑えらんなくなっちゃって、言うしかなくなった。俺のほうが自分勝手だな。」


「それは違うだろっ!俺は嬉しかった、し好きだし、だから今こうやって……あれ…」


「俺もつぼ浦とおんなじ気持ち。付き合ってからはもっともっと好きになった、毎日好きな所が増えてく。つぼ浦のこと大好きだし愛してる。これからもずっと一緒にいたいなって思ってる。…嘘だと思うなら信じてもらえるまで言わせて。つぼ浦、愛してる。」


真っ直ぐ目を見つめて言い、優しく強く抱き締める。強ばって震えていたつぼ浦の身体が少しずつ解れていく。


「……ごめん。本当は嘘なんて思ってないし、アオセンの気持ち分かってるし、あの…」


「ううん。つぼ浦は何にも悪くないし、俺もつぼ浦の気持ち分かってるつもり。……良かった、笑った。」


長い時間抱き合うと心の闇は完全に消え去った。青井の作った、少し味の薄い雑炊は2人のの身体にも心にも染み渡り暖めた。




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