テーブルを真ん中にしてアカネとアオイ、反対側にはリュウトとヒロユキが座っていた。
まさかの【勇者】全員集合である。
「さて!ヒロユキも揃った事だし、改めて自己紹介をしよう」
端から見るとその言葉も相まって合コンの風景に見えるかもしれないが、本当は今男三人に女一人だ。
「俺の名前はリュウト、この世界では冒険者を職業にしてる勇者だ」
何だかんだアオイがリュウトと会うのは最初を除けばこれが初だった。
勇者と聞いてアカネは当然の様に何も反応を示さないのはそこら辺の事情も聞いているのだろう。
「それでこっちが__」
「……ヒロユキ」
特にそれ以上何もヒロユキは言わない、が、そんな性格だとみんな知っている。
「私はリュウトさんの奴隷のアカネと言います」
「……ネコミミ」
ヒロユキはアカネの猫耳に反応するのは兄弟の血なのか……
「?」
そして……
「……」
「……」
「……」
みんなアオイを見る。
「………………………………………………………」
アオイは静かに胸に手を当て、深い息を吐き出し深呼吸する。
彼女の内部では思考が徐々に回復している中、彼女は頭の中で理解しているのだ。
「もう、そろそろ……また頑張らないとね……」
頭の中の悪い考えをガラスを破る様に排除し、口を開いた。
「僕の名前はアオイ!勇者だけど奴隷をやってます!」
そう言ってる彼女の目は、以前の人形では無く、小さな心の光が宿っていた。
それを見てリュウトは安堵の笑みを浮かべ、めったに感情を出さないヒロユキも口元が少し上がっていて、そして____
「ぶわぁぁぁぁん!よがっだぁぁぁあ!!!」
アカネはおもいっきり泣いてまた抱きしめた。
「うわ、ちょ、アカ姉さん!痛いって!」
「!?、今姉さんって!?うわぁぁぁん!やっだぁぁぁあ!!!!」
アカネの嬉し涙で水溜まりができそうな勢いだ。
「へ、へへ……」
そんなアカネの喜びを素直に恥ずかしながら喜べるアオイ。
「アカネ、そろそろ注文をしてそれから話そう、えーっとメニューは……」
「はい……ほんと良かった……」
「あ、ありがとう」
解放されてアオイは自分のところにメニュー表があるのを気付いた。
「あ、ここにメニューあったよ、みんな何が良い?」
何事もなく聞いたアオイだがリュウトは慌てて__
「いいよいいよ、アオイさんは女性なんだから!そういうのは俺達男組に任せて!」
そう言った後、メニューをアオイから取る。
「あ、はは……ありがとう、紳士だねリュウト君は」
元男としては複雑な気持ちで心の中で謝りながらも感謝の言葉はしっかりと出していく。
「そうですかね?ふへへ」
褒められ、顔を赤くしながら照れているがリュウトは進行を進める。
「えーっと、まずは飲み物ですね……ちなみにお酒__」
「__飲めるよ!!!!!!」
お酒という言葉に食い込み気味に反応するアオイ。
「う、うん……アオイさんは飲めるんだね」
それもそのはず、アオイにとっては此方の世界に来て飲むのが初めてになるのだから
「リュウト君は飲めるの?」
「日本じゃ駄目だったけどこっちだと良いみたいでした」
「ほぇー」
「ヒロユキは?」
「……飲める」
「じゃぁみんな飲めるって事で、俺はこの《トライクフリー》を頼むよ」
「……同じく」
「私もそれで」
「アオイさんは何か気になるものがありますか?」
メニューを逆さにしてアオイに見せた。
お酒のメニューも豊富であるが、1番目立つものをアオイは頼む。
「じゃあ僕はちょっと違うの頼もうかな?この《ドレスワルツ》で!リュウト君のも気になるから後で一口飲ませてね?」
「え?は、はい!もちろん!ごちそうさまします!」
「???」
リュウトはアオイの口元を見て一瞬固まった後、慌てて目をメニューに戻し指先で文字をなぞる。
すると机の上に魔法陣が展開されてお酒が出て来た。
「すごい!どうなってるの!?これ!」
「フフ、始めてみたときは俺も驚きました【転送魔法】って奴みたいです、便利ですよね」
「うん!」
それぞれグラスを持ったのをリュウトは確認する。
「では、記念すべき第一回【勇者会議】を開きます!乾杯!」
「乾杯します」
「乾杯~」
「……乾杯」
こうして勇者会議が始まり、お互いのこれまでの経緯を全て話した。