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YouTubeの撮影が終わって楽屋に戻った。今日はこれ以外の仕事はないから直ぐに帰る支度をする。さっき自販機でジュースを買ったらしい阿部ちゃんが僕の方に来てジュースを1本もらった。
「なんでジュース?ありがとう…。」
「どういたしまして。ラウこの後空いてる?良かったら同居のこと話したいんだけど。」
忘れてた。そうじゃん。いつからかも決まってないし…人と住むからには何かしらルールとか必要かもしれないしね。
「あー。そういうことね…。良いよ。どっか店で話す?」
ゆっくり話がしたかったから、聞いてみた。
「うんそうしよ!俺準備してくるね。ちょっと待ってて。」
「はーい。」
貰ったジュースを1口飲んで鞄に入れた。このジュース初めて飲んだけどちょっと好きかも。ぶどう味っていうのが良いよね。なんて考えて楽屋のドアの前で阿部ちゃんを待つ。暫くして阿部ちゃんが小走りでこっちに来た。こんな所まであざとい。
「ごめん、ラウールちょっと探しものしてて。」
「大丈夫だよ。見つかったの?」
「結局見つかんなかった。」
頭をかいてえへへと苦笑いする。何探してたんだろう。最近帰ろうとすると良く探してるけど。そんなに大事なのかな?
「ねぇ阿部ちゃん何探してたの?」
「え?」
驚いた阿部ちゃんは少し眉を下げて目をキョロキョロさせていた。
「言いにくいなら別に良いよ。僕も手伝えるかなって思っただけだから。」
阿部ちゃんは安心したように胸に手をあててため息をついた。そんなに言いにくいのかな?ますます気になる。
「何かは言えないけど。すっごく大切な物なの。」
「すっごく…。」
貰い物なのかな、そんなに大切にするってことは。誰から何を…。
「うん。すっごく。へへっまぁあんま気にしないでよ。ていうか店どこ行く?決めてなかったよね。」
自然と話を変えて本題に戻す阿部ちゃん。しっかりしてるな…。この人と一緒に住むと思うと心強い。
「僕が最近気に入ってる店行きましょう!あそこのパンケーキ格別に美味しいんですよねぇ。」
「へ〜。ラウールのそういう話あんまり聞かないからちょっと楽しみだな。」
「期待して良いです。」
「そんなに!?」
ニコニコ笑って、なんかすっごい楽しみと、今にもスキップしそうな足取り。これは多分計算あざといじゃなくて素の阿部ちゃん。素がこれだから、あざといことしても可愛いが許されるんだろうな。可愛い。
店に付き席に座る。阿部ちゃんは俺がおすすめしたパンケーキを頼んだ。俺も同じのを頼んでパンケーキが来るのを待つ。
「でさ、同居なんだけどラウールいつから来れそう?」
「うーん。明日明後日には行けると思うよ。」
「そんな早く?」
「うん」
だって持っていくものは服とか学校の課題とかだけ出し。あーでも阿部ちゃんもスペースとか作らなきゃだよね。
「やっぱ来週にする」
「え?」
「阿部ちゃんにも準備とかあるでしょ?」
「あーうん。ありがとう。じゃあ来週からね。荷物いつ運ぶ?」
「阿部ちゃんのタイミングで良いよ。忙しいだろうし、僕住まわせて貰う身だからね。」
「そっか。じゃあまた連絡するね。」
話しているとパンケーキがきた。いい匂い。
阿部ちゃんは自由に盛り付けられるトッピングに興味津々だ。
「阿部ちゃん」
「ん?」
フルーツでいっぱい盛り付けたパンケーキを1口食べようとした手を止めて首を傾げる。あ、止めちゃった。
「ごめん先食べて、食べながら聞いてて」
「うん」
止めた手を動かし、口に運ぶ。口いっぱいに頬張り頬を緩めてニッコリと笑う。相当美味しんだろう。そりゃそうだ俺が選んだんだしね。
「阿部ちゃんおいし?」
「最高!連れて来てくれてありがとう。すっごい気に入った。」
「良かった。」
「そういえば何?さっき俺の事呼んでたでしょ?」
一緒に住むうえでのルール見たいなの聞こうかと思ったけど、まだ確実に住むって決まった訳じないし、住み始めてからでいいか。
「あ〜やっぱなんでもない」
「何それ!」
「いや〜楽しみだなって」
「ん〜?んふふ。そうだね。」