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『首すじに落ちる熱』
夜のスタジオは、静まり返っていた。機材のランプが点滅しているだけで、音も光もほとんどない。その中で、彼だけがやけに鮮やかに見えた。
「……疲れてない?」
ソファに座るあなたの隣に、大森元貴がゆっくりと腰を下ろす。
「ううん、大丈夫」
そう答えたつもりだったけど、彼は首をかしげた。
「ウソ。目、ちょっと赤い。」
気づかれていたことに少し驚いて、視線を逸らす。でも、その一瞬の隙を突くように、彼の顔がぐっと近づいた。
「……こういうとき、無理しないで?」
囁かれる声が、耳の奥に優しく落ちていく。次の瞬間、彼の手があなたの髪をかき上げ、首元が露わになった。
「ご褒美、あげる」
何のことかもわからないまま、返事もできないうちに――
彼の舌が、ゆっくりと、首すじをなぞった。
「……っ!」
あまりに突然で、身体がびくんと跳ねる。くすぐったさと、熱と、くるおしいほどの羞恥が混ざって、声にならない声が喉奥で詰まる。
「……やっぱ、ここ、弱いんだ」
彼が小さく笑った。
「かわいい」
その声があまりに優しくて、苦しくなってしまう。けれど、抗うことなんてできなかった。彼の唇が、もう一度、首筋に触れる。さっきよりも深く、甘く、熱を落とすように。
音も光もないスタジオで、あなたの世界は彼だけになっていく――。