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「部長,あの人と付き合ってるんですか??」
部下の杉本と煙草休憩中,唐突な発言をされ菊田は思わずむせ返る.
「いや…!!付き合ってない.昔そうなりそうでならないまま,部署異動で離れ離れになったんだ.」
「えー??なんかもったいない.あんな美人な人と付き合わなかったなんて.」
「…だよな.何で俺,あいつに告白しなかったんだ…??」
「急にマジトーン!!」
先行きますね!!と喫煙所から出る杉本のあとを追いながら,あの頃のことを思い出す.そういえば1回だけ….
「部長,お客様来てますよ.」
部署に戻るなり,部下の宇佐美が応接室の前で菊田を呼ぶ.その隣にいるのは🌸.
「待たせてしまって申し訳ない.」
「いえ,アポも取らず来てしまった私の方こそ申し訳ない.」
「すまんな宇佐美,もう戻って大丈夫だ.」
「タバコ休憩も程々にしてくださいよ??」
と宇佐美は飄々と自分のデスクへ戻っていく.
「で,用件は.」
「そうそう….」
テンポよく話しながら自然と近づく距離.
ソファに腰かけることも忘れ,話に夢中になっていく.
「っと…立たせたままで悪かった.」
「あ,大丈夫…つい話に熱が籠っちゃって.」
お互いようやく気づいてソファに座りクールダウン.
「…とまぁそういうことなので,提出期限厳守でお願いします.」
「分かった.」
菊田は立ち上がって出口へ向かう🌸のためにドアを開けた.
「じゃあまた.」
「また….」
🌸を見送ったあとスマホが鳴る.🌸からの食事のお誘いだったので,思わず顔が綻ぶ.
「(いかんいかん.そうだアイツの様子を見にいくか….)」
そして終業後.エントランスで待っている菊田のもとに🌸がかけ寄る.
「お疲れさま.待った??」
「いや,さっき来たばかりだから.」
「今日は何食べる??」
「前行ったカレー屋のサイドメニューに挑戦したいな.」
「いいね,行こ行こ!!」
お互いの部下の話をしながら,お店に着くと早速メニューを見ながら.
「タンドリーチキンは外せないわね.」
「チーズ入りナンうまそうだな.」
決まった料理が運ばれてきて,あれやこれやと愚痴も言い合いながら箸を進める.
「ねぇ.明日休みだし,もう一軒行かない??」
「いいね,行っちゃうか.」
お店を出た頃,🌸の提案を受け入れバーを探すため街を練り歩く.そして見つけたビルの中に佇むバーへ.
「🌸,酒強かったんだな.」
「強いのかな.」
「全然赤くなってないから.」
「顔は赤くならないけど,酔いはそれなりにまわってるよ.」
とカルヴァドスを1口.さっきまでインドビールを飲んでたのに,ここにきてブランデーなんて.
「(中々の酒豪だよ🌸….)」
その言葉をハイボールと一緒に飲み込んだ.
さらにロングカクテルを飲み干した🌸は.
「アイリッシュコーヒーで最後にするね.」
とチェイサーの水を飲む.
「俺もそれ飲みたい.」
2人そろってグラスを交換してもらい,アイリッシュコーヒーを注文する.
「今日は付き合ってくれてありがとね.」
「こちらこそ.楽しかったよ.」
少し足下がおぼつかない🌸.
「家まで送るよ.」
「だーいじょうぶ,1人で帰れるから….」
と言うが,どう見ても危なっかしい.
「とりあえず電車乗るぞ.」
と駅へ.電車内はそれなりに人が多く通路の吊革に掴まって.
「どこで降りるんだ??」
「次の次の駅.」
菊田を見上げふわふわと笑う🌸はあどけなくて.
「(あの頃の🌸に戻ったみたいだ.)」
仕事中の凛々しかった立ち振舞い.部署異動してから色々あったのだろう.
「ほら降りるぞ.」
「菊田君もこの駅の近くなの??」
「そうじゃないけど….」
🌸が他の乗客にぶつからぬよう寄り添って歩く.
「ねぇ,甘いもの買ってっていい??」
「いいよ.」
と🌸は改札を出たすぐのコンビニへ.
「菊田君も食べる??」
「え??いや俺は…!!」
断る間もなく🌸は高級アイスやケーキを2人分かごに入れてお会計を済ませた.
「(なんかデジャブを感じる.)」
🌸の先導のもと夜道を歩く.
「着いたよ.」
「そうか.じゃあ俺はこれで….」
「アイス溶けちゃうよ.食べてからでもいいんじゃない??」
「…良いのか??」
「良いよ??」
言われるがまま🌸の部屋にいざなわれた.