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注意事項
〇本作品は、剣と魔法のファンタジー世界を舞台にしています。
〇戦闘描写、過去のいじめを示唆する表現が含まれます。
〇登場人物の間に誤解や強い憎悪、悲しみといった 感情が描かれますが、最終的には、ハッピーエンドです。
〇少女たちの複雑な関係性を描いた作品です。
〇繊細なテーマを扱っているため、苦手な方は、御自衛下さい。
〇GLの表現微妙ですが、あります。苦手な方は今すぐベッドに入って寝ましょう。
〇衝動書きですので、拙い文章です。ごめんなさい。
以上の事を御理解の上、本作品をお楽しみ下さい。
宵闇に馴染むような深い紫のフード付きのローブを着た藍那は人っ子一人居ない夜の森を歩いていた。
コツコツと刻みの良い黒のヒールの音を鳴らしながら藍那はさらに森の奥へと進んで行く。
そんな藍那の後ろから息を切らしながら追いかけて来る桜湖。
桜湖の事なんて一切気にも留めずに藍那は無表情のまま進み続ける。
「藍那!ねぇ、藍那ってば!」
月のように明るい黄色ののローブを風に揺らせながら桜湖は藍那の名を呼び続ける。
それでもなお、藍那は足を止めない。なんならさらに早く歩き始める。
「ちょっと!藍那!」
幾ら名前を呼んでも1ミリも反応を示してくれない藍那に少しムッとして桜湖は藍那の肩に手を置き、無理やり顔を合わさせる。
「ねぇ、藍那、返事してよ」
悲しそうに眉を下げ桜湖は藍那に話し掛ける。
藍那の表情は、びくともしない。
「ごめん」
「え?」
ずっと開かなかった藍那の口がやっと開いた一瞬だった。
気が付くと、桜湖と藍那の周りが闇に包まれた。
「ライト」
桜湖が光属性の魔法を使い闇に包まれた空間を照らす。
「なんで付けたの?眩しいじゃん」
藍那の真っ赤な瞳には幼かった頃とは違い
、光が無かった。
「私ね、今から貴方を殺さなきゃいけないの」
藍那の突然の宣言に、桜湖の緑色の瞳は驚きのあまり、揺れている。
「私の持ってる属性は、闇。そして、貴方の持っている属性は光。私達、つくづく合わないね」
藍那の表情は変わらない。藍那が紫のローブを脱ぎ捨てると、深海のような青色の男の子のように短い髪が見える。
藍那に続くように桜湖も黄色のローブを脱ぎ捨てる。桜湖の橙色の長い髪は昔のように下ろしてはいない。何かを決意したかのように、一つに束ねられている。
「シャドウサイス」
藍那がそう唱えると、大きな黒い鎌が彼女の右手に現れた。
「っ!ライトスピア」
藍那が戦闘態勢なのを桜湖は悲しく思ったのだろうか。悲しそうに呪文を唱えると、彼女の手には空に浮かぶ星々のように眩く光る槍が現れた。
藍那は勢い良く大鎌を振るう。桜湖は、魔法で防げる程直ぐに反応できなかった。だから、手に持っている大槍で防ぐしかない。
藍那の大鎌は、桜湖と共に居た時には想像もできないほど、強い力で、重かった。
「私ね、ずっと貴方が憎かった」
そんな藍那の言葉に桜湖は驚いて、少し、怯んでしまった。その隙を逃さまいと言いたげに藍那はその大鎌で桜湖を吹き飛ばした。
「どうして!?私達ずっと親友だったでしょ?!」
そうして二人が話している間も魔法は飛び交う。
シャドウアロー、ライトアロー、シールド、ブラックホール。二人の魔法は決して止むことは無かった。
藍那と桜湖は、魔法学園に入学したその日からの仲だ。
入学式当日、教室の隅で一人で居る藍那を見兼ねて桜湖が話しかけに行った。それが二人の出会いだ。
「あんたはいっつも、いっつも!良い子ちゃんで、私に近付いたのも、どうせ、『私良い子なんです』ってアピールしたかっただけでしょ?」
藍那の表情が初めて歪んだ。憎しみと、絶望と、悲しみで。
「そんなわけ、」
「五月蝿い!!」
桜湖が否定しようとすると、藍那が叫んで、大鎌を振り、阻止した。
「あんたの言葉なんて信じれると思ってるの?!周りからの言葉で、私から離れて行ったクセに!!ズッ友だって、私に言ったクセに!!」
「ごめん。ごめんね、藍那」
藍那の深い絶望と苦しみを前に、桜湖は言い訳なんてできなかった。真実なんて話せなかった。ただひたすらに謝ることしかできなかった。
魔法学園に通っていた頃、藍那はその根暗な性格と、平民の出だと言うのにその魔力量と知性の高さで最高クラスと謳われるS組に入ったのを恨んだ貴族や平民から、様々なイジメを受けていた。
桜湖は一応貴族だ。と言っても、没落したもので、ほとんど平民と変わらない。
藍那の日常には、陰口や悪口は当たり前。水を掛けられるだけなら良い日、といった具合いだったのだ。
「あんたは、あんな奴より強かった!いつまでも、ずっと仲良くしてくれるって言ったのに!!!!」
藍那の叫びはどんどん悲痛になって行くばかり。桜湖はもはや攻撃する意力も湧かず、防御ばかり。
「私が、私が強いわけないだろっ!!」
藍那の悲痛な叫びが酷くなってから、初めての反撃を桜湖はそう叫びながらした。
「藍那は私の友達なの!バケモノだろうが魔物だろうが根暗だろうが、関係ない!藍那は、私の友達なんだよ!!」
半泣きで桜湖は叫び続けた。
「シルバーレイン!」
桜湖がそう唱えると、空から光輝く刃が降り注ぎ、藍那の周りに刺さった。その衝撃で藍那は大鎌を弾き飛ばされてしまった。
「鎌がっ!」
藍那は急いで大鎌を取りに行こうとしたが、足には淡く輝くロープが巻かれており、それが地面と繋がっている。これは、桜湖の魔法だと、藍那は瞬時に理解した。
「殺しなよ。私を殺しなよ。桜湖を殺そうとした、そんな馬鹿な私を殺しなよ」
淡々は藍那はそう話す。そんな藍那の言葉を聞いて桜湖の眉間にはシワが寄る。
「大事な親友を親友に殺させる気?それこそ最低だよ?」
ザッザッと砂を蹴りながら桜湖は藍那に近付く。
そんな風景に馬鹿らしくなったのか、藍那は二人を覆った闇の結界を解いた。
桜湖と藍那は少し背の高い木に登り、星空を眺める。
「私ね、ここ数年ずっと戦場に居たんだ」
桜湖が急に話し始めた。
藍那は驚きと戸惑いと困惑と、そんな感情を隠せていないようだ。
「本当はね、藍那が行く手はずだったの。でも、闇属性もだけど、光属性もそれなりに希少だしさ、藍那にあんな場所に行ってほしくなかった。だから、私が無理を言って藍那の代わりに戦場に行ったんだ」
足をブラブラと揺らしながら桜湖は話し続ける。そんな桜湖を藍那は静かに眺め、静かに話を聞く。
「藍那になんにも言わずに行くことになっちゃってさ、変な誤解させちゃってごめんね」
少し申し訳なさそうに桜湖は藍那の顔を見た。藍那は、もう、あんなに苦しそうな顔をしていない。とてもスッキリした顔をしている。
「でね、私、2ヶ月前ぐらいに前線帰ってきたんだけど、藍那の実家に行っても居ないし、学園にも居ないし、学園長から聞いた職場にも居ないしで、すんごい探したんだから!」
「ご、ごめん」
桜湖がそんなにも自分のことを探してくれているなんて藍那は微塵も思っていなかったから、凄く驚いている。
「私ね、実戦だと結構弱いんだよね。だから、藍那の隣に立っていられるぐらい強くなりたかったんだ。戦場の前線って結構良い経験になるんだ」
爽やかな笑顔を桜湖は人生で一番の親友に見せながらそう語る。藍那もまた、少し幸せそうな笑顔を彼女の知る中で一番の親友に見せながら話を聞く。
「だからさ、改めて言わせて」
「私に、また、藍那を守らせて」
桜湖は、親友であり、桜湖が愛した人のルビーのような瞳を見つめる。
「それは、お互いさまでしょ?ずっと、二人でこの長い道のりを歩いて行こう」
藍那は桜湖の言葉に応えるように、親友であり、藍那が愛した人のエメラルドのような瞳を見つめる。
そんな二人を優しく見守るようにして、今日も星々は、月は輝いている。