私はとある国に生まれた人間であり、名前は捨てた。正確に言えば捨てられたのだが、ともかく、今の私は名前などというものを持っていない。物心ついた時にはすでに施設にいたのだから。そうでなければもっとまともな人生を送っていたのではないかと考えているが、それはまた別の話となる。
ここで重要な点として認識しておくべきなのは、私があの場所でどのような研究を行っていたのかということである。私はあのような、まるで人間が過ごすような場所を用意して何をしていたかについてだ。
今思い返せば、私は確かに自分の目的のためにあそこで研究を続けていた。しかし同時に私は研究者であったのだから、自らの研究成果についても考えるべきだったのだ。自分が何をしているかを理解せずに行う行為など存在しないというのに……。
私の行っていた実験の結果については既に君たちも知っているだろう。そう、私の研究室で見つけたあの書物に書かれた内容のとおり、私の研究によって、あの世界には時間という概念が生まれた。
ああそうだとも、つまり私は、時間を生み出すことに成功したのだよ! 君たちは、まさか時間の生み出し方を知っているかい? いいや知らないだろうね。そもそも時間というものがどういうものなのかも分かってはいないはずだ。
まぁ落ち着くんだ。時間はある意味では生まれたというよりも、最初から存在していたと言えるかもしれない。例えばだ、君たち人間は日々の生活の中で時計を使って時間を気にしているわけだが、君たちが時間を意識するまでもなく、世界は常に動いている。時間が流れているというのはそういうことだ。そして我々のような存在が生まれる時間というものは存在しないのだ。我々が生まれたのは君たちの言うところの、いわゆる神と呼ばれるものによって作られた。我々は神の道具なのだよ。
まぁ確かにそうだな。我々の存在意義は理解した。しかしそれでもなお、我々がなぜ生み出されたのかという疑問が残る。それに我々が作られた目的については聞いていない。何かしらの答えを持っているのではないか? 残念ながら、それを明かすことは出来ない。というのも君たちは神の視点を持っておらず、我々のように神の道具になることが出来ないからだ
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