テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その細っちい白い腕を掴んだ。
掴んで、余る指にドクドクと指から伝わる脈。
消えてしまいそうな彼にドクドクと血液を素早く回す心臓に目眩がした。
「ひ、ばり…っ」
「セラお?どしたん?そんな顔して…それにこんな時間__」
それは俺の台詞だよ、なんて口から出れば良かった。出たのは震えて、酷く掠れたまるで呼吸を忘れた鳥のさえずりのような音で。
爛々と輝いているのにどこか憂いを帯びた瞳を見れなくて俯けば、頭を撫でられて、するりと掴んで手首が離れる。
手に残った熱に、思わずその背中に手を伸ばす。
サクサクと砂の上を軽く歩いて進んでしまう雲雀。どうして、どうしてこんなに足が重いのだろう。砂が靴に入ってくから?
違う、まるで蟻地獄にハマったように足が動かない。
(行かないで…お願いだからっ…行かないで)
「せら、だぁいじょぶ…大丈夫よ」
こちらへ駆け寄ってきた雲雀を捕まえるように、蛇が巻き付くように離れられないように抱きしめて、その肩へ頭を埋める。
じわりと視界が滲んで、一度、二度程度しか感じたことないくらい心臓が早く動く。
(あぁ、どうか…海の冷たさなんて知らないで)
絶え間なく溶けてしまいそうな程真っ直ぐに与えられる熱に、奥から溶けていく感覚。
ドクドクと血の巡る感覚をいつの間にか無意識に確認するようになったのはいつか。
突然、込上げる寂しさと不安を誤魔化し始めたのはいつなのか。
「セラお、帰ろ」
なぁ、セラお。
俺さお前の温もり以外知りたくないよ。
ほんの少し緩んだ腕をとって、手を絡めて所詮恋人繋ぎをして歩き出す。きっとセラおは俺が死にたいと言えば共に死んでくれる。
けど、きっと…
(生きてと言っても、聞いてはくれないんやろな)
「…雲雀、」
「セラお、ねぇ…帰ったらさ俺の事抱いてや」
この不安を全部セラおの熱でとかしてよ。
セラフの言葉を遮った雲雀はただ懇願するように震えた声でそう言ってただ、足を止めた。
ギュッと腕を引かれてそのまま自分とは数センチしか変わらないはずなのに、酷く分厚くて筋肉質な自分とは正反対の体に包み込まれる。
「…いいの…?」
「うん、いっぱい…さっ、あいして?」
「雲雀が要らないって思ってもやめてあげれないよ?」
「ええよ」
「酷く…しちゃうよ?」
「うん」
「…俺多分、止まれないよ?」
「…うん」
それで良い。それが良い。
海野の水の冷たさより、大好きで堪らない悲しくなるほど優しい温もりが良い。
雲雀は自分を抱きしめるその腕に力が篭もり、肩に埋められた顔がほんのりと熱くなるのがわかる。
「かわいーね、セラおは」
俺なんかより、ずっと…可愛くて、優しくて…温かい
「…っ…せら」
「…雲雀」
醜くて、こんなんでごめんな。
没
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!