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🌸ぷちひなフレンズの恋愛日記:春風にのせて
春。空気が少しだけ柔らかくなって、花の匂いがどこからかふわりと漂ってくる季節。
町の公園の桜並木は、満開の花であふれ、小さな花びらが風に乗ってゆっくりと舞い落ちていた。
ベンチに座るひなこちゃんは、その風景をスケッチブックに映し取っていた。
鉛筆の音だけが静かに響く中、集中して描くその横顔は、どこか夢の中にいるようだった。
「おーい、ひなこちゃーん!」
ぱたぱたと足音が近づき、にぎやかな声がその静けさをやさしく壊す。
声の主は、いむくんだった。元気いっぱいの彼は、今日はリュックを背負って登場だ。
「今日、みんなでお花見ピクニックしようよ!ぼく、おにぎり作ってきたんだ!」
「それ、ぽんたくんが作ったんじゃないの?」
と後ろからのんびり歩いてきたのは、ぽんたくん。いつも通りの優しい笑顔で、手には包みをぶら下げている。
「へへ、まぁ、ぼくが“持ってきた”って意味でさ!」
「それ、持ってきただけじゃん。調理ゼロだな」
公園の木陰からひょこっと現れたのは、ゴッキーくん。クールで落ち着いた雰囲気の彼は、いつも鋭いツッコミで場を静かに盛り上げる存在。
「うぐ……! でもオレ、“食べる係”だからなっ!」
そんな仲間たちに囲まれて、ひなこちゃんは自然と笑顔になった。
「うん、じゃあ私も絵を片づけて、行くね。ぷちぷちくんは……?」
「──ここにいるよ」
桜の木の下、ひなこちゃんのスケッチを静かに覗いていたのは、ぷちぷちくんだった。
彼はひなこちゃんと目が合うと、ふわっとやさしく微笑んだ。
「ひなこちゃんの絵、今日もすごく綺麗。春の風がそのまま描かれてるみたいだね。」
「……ありがとう」
ひなこちゃんの心臓が、そっと音を立てた。
公園の広場に敷かれたシートの上には、ぽんたくん特製のおにぎりがずらりと並ぶ。
いむくんがはしゃぎながら配り、ゴッキーくんはすみっこでスマホをいじっているように見えて、実はみんなの様子をよく見ている。
「梅、鮭、ツナマヨ……あと、いむくんが変なのリクエストしてきた“チョコ味”もあるよ」
「おいしいよ!意外と合うってば!」
「うわ……勇気あるな。俺はノーコメントで。」
ゴッキーくんが肩をすくめて小さく笑うと、みんなもつられて笑い出す。
そんな和やかな空気の中、ひなこちゃんとぷちぷちくんは、少し離れた場所で静かに座っていた。
「……こうして、みんなで集まるのって、いいね」
ひなこちゃんがつぶやくと、ぷちぷちくんはうん、と頷いた。
「でも、僕は──ひなこちゃんと二人でいる時間が、いちばん好きかも」
「……えっ?」
突然の言葉に、ひなこちゃんの手がピクリと止まる。
「前からずっと思ってた。ひなこちゃんの絵を見てるとね、なんか自分の心も整理されるっていうか……やさしくなれるんだ。」
「そんな……私の絵、そんなに……」
「そんなに、素敵なんだよ」
そう言って、ぷちぷちくんはそっとひなこちゃんの手に触れた。
その手は、あたたかかった。
午後の陽ざしがゆっくりと傾き始めるころ、ゴッキーくんは桜の花びらを拾い集めていた。
誰にも気づかれないように、ちょっと離れた場所で何かをこしらえている。
いむくんが気づいて声をかける。
「ん? なにしてるの、ゴッキー?」
「んー、ちょっと……こういうの、ひなこちゃん似合いそうだなって思ってさ」
彼の手の中には、小さな桜の花冠。枝を編み込んで丁寧に作られていた。
「お、イケメンムーブじゃん!」といむくんが茶化すと、ゴッキーくんはそっぽを向きながらつぶやいた。
「……別にそういうのじゃないし。似合うと思っただけだし。」
恥ずかしそうにしながらも、彼はそれをひなこちゃんにそっと差し出した。
「……これ、あげる。つけてみなよ。」
「えっ、これ……ゴッキーくんが?」
「まあ。……よく見たら花が勝手に輪っかになってたんだよ。うん、自然現象だよ。」
「ふふ、ありがとう。すごく綺麗」
ひなこちゃんは、少し照れながらも嬉しそうにそれを受け取った。
桜のトンネルの下を、ひなこちゃんとぷちぷちくんは並んで歩いていた。
風がそっと吹き抜けて、花びらがふたりの肩にふわりと乗る。
どちらからともなく手が触れ合い、そして自然に重なった。
「ひなこちゃん……」
「うん?」
「君のことが、ずっと好きだった。友達としても、もっとそれ以上にも。……もし、迷惑じゃなかったら、これからもずっとそばにいたい。」
ひなこちゃんはぷちぷちくんを見上げて、やさしく笑った。
「わたしも……同じ気持ち。ぷちぷちくんといると、心が静かで、あたたかくなるんだ。」
重ねた手を強く握りしめ、ふたりはゆっくりと、これから始まる関係を確かめ合った。
その日の帰り道、夕焼けに染まる空の下。
みんなで並んで歩く中、ひなこちゃんとぷちぷちくんは手をつないでいた。
いむくんが「ねぇねぇ、なんかふたり、近くない?」と声を上げ、ぽんたくんは「もう、言わなくてもわかってたよ」と微笑む。
ゴッキーくんは、ちらっとふたりの手元を見て、
「……ま、いいんじゃない?春だしね」
とポツリとつぶやいた。
春は、恋と友情が重なる季節。
また来年も、きっとこの桜の下で──
みんなと一緒に、そしてあの人と隣で笑っていたい。
そんな想いを胸に、ひなこちゃんはそっと空を見上げた。
──恋が始まった春の日を、ずっと忘れないように。
🌸 おわり🌸
コメント
3件
ゴキひな!? 初めて見たカプです! けっこう…いいですね…