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私達は、何かを失わなければなりません。
それは、あなたの最も大切なものかもしれません。あるいは、そうではないかもしれません。
しかし、その何かがなければ、あなたは生きていくことさえできないのです。
だから、私達の言う通りに従ってください。それが、幸せになる唯一の方法なのですから―――。
1.
「それでは、今日の授業を始めましょう」
教室には、いつものように先生の声だけが響いている。
ここは学校にある屋上。
今日も僕はいつものようにここに来て一人ぼっちでお弁当を食べている。
空を見上げると雲ひとつない青空が広がっている。その青いキャンパスにはぽつんと白い点があった。
「あの点はなんだろうか?」
不思議に思いじっと見つめているとその点が急に大きくなっていく。やがてそれは飛行機だとわかるほどの大きさになったとき、僕の意識は途切れた。
***
気がつくとそこは学校の教室だった。
窓の外を見るとまたさっきと同じように大きな翼を広げた飛行機が飛んでいた。しかし今度は僕に向かって一直線に落ちてきているようであった。
「えっ!?」
そう思ったときにはもう遅くて僕は机ごと押しつぶされてしまった。僕の人生は終わるはずだった。
なのになぜこんなにも意識があるのか。
「うぅ……ここはどこ?」
目が覚めた時、僕がいた場所は真っ白な空間だった。
辺りを見回しても何もない。
ただ白いだけの風景が広がっていた。
「おぉ! やっと目覚めたね!」
突然声をかけられた方向に目を向けるとそこには美しい女性が立っていた。
その女性はまるで女神のように美しかった。
「君は誰ですか!?」
「あぁ、ごめんなさい。私は女神よ。よろしくね」
まさかの事態、思いがけない出来事、予想外のトラブル。
病める時も健やかなる時も。
死すら二人を引き裂きえない。
運命の赤い糸を信じてみるかい? 信じる者は救われる。
信じない者に救いはない。
愛してるよ。永遠にね。
その言葉だけで十分だった。
僕たちは何もかも分かちあってきたから。
どんな痛みだって乗り越えられるさ。
そうやって二人は生きていけたのだ。
「おーっと! ここでスライム選手に異変が起きたようです!」
実況の言葉通り、僕の身体には大きな変化が起きていた。
手足がドロリと溶けだし、地面に滴っていく。それはまるで水溜まりのように広がっていき、やがて僕の全身を飲み込んでしまった。
だが不思議と息苦しさや不快感はなく、むしろ心地よい浮遊感に包まれているような気がする。
「おおっ!? なんということでしょうか! スライム選手が不定形生物ならではの軟体を活かし、自らの身体をボール状に変形させて、ゴールへと飛び込んでいきました!」
「お見事ですねぇ。あれならばたとえどんな体勢からシュートを打っても問題ないでしょう」
「なるほど! 解説ありがとうございます! さて、これで試合は振り出しに戻りましたね。得点源であった選手を欠いた相手チームに対し、勇者チームはこのまま押し切ることができるのか?」
「そうですね……っと、おっとぉ!? ここでまたも動きがありましたよ。なんと、先程ゴールを決めたはずのスライム選手の姿が消えてしまったのです」
「えぇっ!?」
「ご覧ください!なんということでしょう!今朝から降り続いていた雨により地盤が崩れ、土砂災害が発生してしまいました!」
「おーっとぉ!?こちらでは道路が陥没してしまっているぞ~?」
「うわぁあああ!!こっちにも倒れてくる!!」
「皆さん落ち着いて避難してくださーい!!」
「…………」
「大丈夫ですか?しっかりなさって下さい!!」
「……んぅ……」
「良かった……意識はあるようですね」
「……ここはどこ?あなた達は一体誰なんですか?俺はどうしてこんなところに居るんですか?確か今日は高校の入学式だったはずなのに……」
「記憶が混濁しているようですね……無理もないでしょう。あなたは昨日の夕方に起きた大地震に巻き込まれて命を落としてしまったのですから」
「えぇっ?俺死んじゃったの!?嘘でしょ!?」
「残念ながら本当のことですよ。ですが安心してください。あなたには新たな人生を歩むチャンスが与えられています。異世界での第二の人生です。しかもその世界で生きていく上で欠かせない『スキル』というものまで授けられるんですよ!」
「本当にそんなことが出来るのかよ!?」
「はいもちろん♪それでは早速あなたのスキルを決めていきましょう。まず最初に希望する能力を教えていただけますか?」
「そうだなぁ〜やっぱり魔法とか使えるようになりたいかな!」
「分かりました。では次に属性をお選びください。火・水・土・風・光・闇の中から一つ選んでくださいね」
「よし決めたぜ!俺は火の精霊使いになることにするよ!!」