TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

初恋サンセット

一覧ページ

「初恋サンセット」のメインビジュアル

初恋サンセット

21 - 第21話*演技派彼氏と雨の記憶*9

♥

39

2025年07月15日

シェアするシェアする
報告する



声にならない否定の言葉を飲み込み、息を吐くと僅かに車が揺れエンジン音が響く。


ふ、と。 隣を見る。

纏う空気。

さっきの航平の言葉を振り返る。


「機嫌が悪い……」

「ん?」


シートベルトを締めながら、私を見る彼の顔。

昨日と違う点といえばなんだろう。うーんと思い悩みながら。


「柚、どうしたの?」

「…………あ、顔じゃなくて」

「ん?」


声だろうか。

声に覇気がなく、これは多分。

機嫌が悪いというよりは。


「なんか疲れてますか?」

「…………え?」


優陽の瞳が見開かれた様子が、横顔からでもわかる。


「いえ、昨日よりオーラがないというか、覇気がないというか」


シートベルトを締めながら伝えると、頷きながら優陽はゆっくりとアクセルを踏み込む。


「ああ、うん、昨日は色々気を張ってたからね、これでもさ」


(何に?)


と、もちろん思ったけれど、自分が柚にめちゃくちゃな脅しとも取れる提案をすること。少しは疑問に思ってくれていたりしたのだろうか?

しかし、それを聞いたとて、素直に答える人だとは思えないから。

流してしまう。


「……そうだったんですか? そんなふうには、とても見えなかったです」

「ほんと? だったらよかったな」


ホッとしたようにそう言いながら、左手で器用にマスクを取りカーナビの下にポイっと投げて「これも」と言いながら笑う。


「これ?」


柚が尋ねると「そうそう」と、前を見たまま優陽は軽く数回頷いた。


「マスクも忘れて店に入ったし他誰もいなくてよかったよ。一応確認はしたつもりだったけどね店内」

「やっぱり有名な方は大変ですね」

「顔が知られてるとね。ま、俺はアイドル売りされてないから全然、まだマシな方」


やれやれ、と肩をすくめる動作を見せて「でも最近は、うるさくなってきたけどね。 マネージャー」なんて言いながら、ははは。 と乾いた笑いを付け加える。


その笑い声で、また気付く。

うまく彼のペースにのせられて話を逸らされたこと。

即ち、疲れているのか。 という問いには答えたくないということなんだろうか。




この作品はいかがでしたか?

39

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚