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ミズキは屋敷に戻ってきた。
5日程度離れていただけなのに、随分と懐かしく感じる。
水谷部隊の訓練の続きは瓜生が引き継ぐことになった。
「ミズキ、入るよ?」
「はい。」
叶が部屋に入ってくる。お盆の上には薬と水が乗っていた。叶はミズキのおでこを触り、体温計を渡す。ピピッと電子音が聞こえ、36.6と表示されていた。
「熱も下がってきたし、明日からは訓練参加できそうね。」
「迷惑かけてごめんなさい。」
「迷惑じゃない。きちんと休むのも大切なことよ。」
そう言って叶はミズキが薬を飲むのを見届ける。
「明日からは3人揃って瓜生さんの訓練ね。」
「周参見大将の部隊は? 」
「遠征中。平野大将の部隊も合同みたいだから大丈夫と思うけどね。」
なにか嫌な予感がする。
「襲撃?」
「•••そうね、ちょっと規模の大きいやつ。」
叶がなにかを濁しているのがわかる。
「とにかく!ミズキは体を治すこと!わかった?」
「•••うん。」
叶が部屋を出る。そこには花村がいた。
「•••言ったのか?」
「•••言えるわけないでしょう。あの子達の育った場所が壊滅したなんて。」
「•••だよな。」
奇襲のかけられた場所は幼少期3人が育ったあの施設。
生き残りは誰もいなかった。
「一区切りついたか。」
瓦礫の広がる町で周参見が呟いた。
「そうですね。しかし、彼らのお陰で一般人の死者がいなかったのは幸いでした。」
平野が答える。
2人が残党がいないか見ている間、他の隊員達があの老人達の遺体を並べていた。
「そうだな、先輩方は最後まで戦ってくれたんだ。」
「しかしあの狂信者どもレベルであれば殺されることはなかったと思うんです。 」
平野はチラリと捕虜にした狂信者達をみる。喚く者、狂ったように笑う者、沈黙を貫く者、様々だ。
「だからこうして俺達で見回ってるんだろう。」
周参見はため息をついて周囲を見渡す。その先にはミズキ達の育った施設の瓦礫が積まれていた。
所々血痕がある。
血痕のある瓦礫をどけると、そこには武器だけが残っていた。
「•••回収するか。」
そうして武器に手を伸ばそうとしゃがんだ瞬間、平野が周参見を抱きその場から移動させる。
その直後、周参見の居た場所に雷が落ちる。周参見はすぐに体勢を立て直す。
「すまない、平野。」
「いえいえ、本当に面白そうな相手が来ましたね。直前まで気付けませんでしたよ。」
「ほう、少しは出来る人間もいたようだ。」
2人の前には破壊神が立っていた。
その夜、ミズキは久しぶりにハルとトウマと再会した。
「ミズキ、大丈夫か?怪我は?」
「無事で良かった。」
「ありがとう、大丈夫だよ。」
「崖から落ちたって連絡きた時の叶さんと瓜生さんをなだめるの大変だったんだよ。」
トウマが遠くを見つめている。なんとなくハルとミズキにも想像はついた。
「そういえば、ミズキ、もう管理棟行ったか?」
「ううん。明日からようやく屋敷から出してもらえるからまだだけど。」
「じゃあ明日行ってみろよ!」
「確かに、ミズキ驚くと思うよ。」
珍しくトウマもニヤニヤしている。
そんな時、部屋のドアが開く。
そこに瓜生が立っていた。しかし、いつもの柔らかい雰囲気はそこにはなかった。
「トウマ、ミズキちゃん、すまないが一緒に来てもらえるかな?」
「瓜生さん、どうしたんだよ。」
ハルが聞くが、向けられたのは戦場で見たあの冷たい視線だった。
「確かめないといけないことがある。」
「わかりました。」
「ミズキ、トウマ。」
「ハル、大丈夫だから。」
そう言ってトウマとミズキは瓜生に着いて行った。
残されたハルに花村が声をかける。
「俺は小さい頃から3人を知ってる。けど、それより前のことは知らない。ハル、知っていたら教えて欲しい。」
「なにを?」
「2人が破壊神となにか関係があるのか。」
その一言にハルの中のなにかが切れた。花村の胸ぐらを掴む。
「あるわけねぇだろ!俺達は、あの場所で一緒に育ってきたんだ!親にも、世間にも見放されて!捨てられても!一緒に!」
「ハル、落ち着け。」
「落ち着けるか!なんだよ•••なんで疑うんだよ•••!そんなに俺達のことが!」
「ハル!」
花村の声にハルがようやく我に返る。掴んでいた手を離した。ハル自身、自分が泣いていたことにも気付かなかった。
「だからお前達のことは小さい頃から見てきたつったろ。大丈夫、今少しみんな混乱してるだけだ。だから、大丈夫。」
「•••なにがあったんだよ。」
「ミズキとトウマが破壊神の子どもかもしれない。」
ミズキとトウマが連れて来られた場所は一ノ瀬の部屋だった。
そこには水谷、平野、周参見の姿があった。
「お久しぶりです、ミズキちゃん。」
そう言って平野は手を振ってくれているが、周りの雰囲気が振り返せるようなものではなかった。
「瓜生、ご苦労。2人とも、よく来てくれたね。座って座って。」
一ノ瀬の声で2人は椅子に座った。
「さてさて、周参見、報告を。」
「はっ。」
周参見と平野は破壊神と向き合う。
「破壊神様!」
「破壊神様だ!」
「はははははは!ようやく救いの時が!」
「•••鬱陶しい。」
そう言って止める間もなく破壊神の手から光が放たれる。その光は捕虜となった狂信者達を貫いた。そして2人を見た。
「我は今探しものをしていてな。貴様らは持っていなさそうだ。気が変わらぬうちに立ち去れ。」
「探し物、ですか。手伝って差し上げましょうか?」
破壊神から殺気は感じられないが警戒は解かないまま平野が聞いた。
「そうか、ならば聞こう。我が子らを探している。昔、人の子に我が子らを紛れ込ませたんだが。」
「なんのために!」
「なんのため?馬鹿なことを聞く人間だ。」
その一言に周参見が攻撃をしようとしたが、それを平野が止めた。
「理由などない。気まぐれだ。しかし、そろそろ我が生まれ変わりの時が近い。その子らを戦わせ、生き残った強い方を取り込もうと思ってな。」
「そうですか。神様も大変なんですね。その子達に名前はあるんですか?」
「ミズキ、トウマだ。貴様は知っているか?」
その名前はずっと聞いてきた名前だ。
「知っていますが、あいにく、そのお話を聞いてしまっては教えられませんね。」
「そうか、歯向かうか。」
破壊神が手を2人に向ける。
(さっきの閃光か?あの速さ、避けきれるか。)
(おやおや、これはピンチですね。)
その時、声が聞こえた。懐かしいような、優しさを含んだ声だ。
『加護を』
その声と共に2人の体が光に包まれた。
「•••忌々しい女だ!」
そう言い残し、破壊神の姿が消えた。
「以上です。」
周参見の話にミズキとトウマに動揺が走る。そして一ノ瀬が2人へ向き合う。
「そこで2人に問う。虚偽を述べれば即刻その首をはねる。2人は破壊神となんらかの関係があるのか、覚えていることはあるかな?」