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(深澤視点)
「……ん……」
小鳥の声で、俺は目を覚ます。
カーテンから差し込む光が、やけに眩しくて、思わず目を瞑る。
「……腰…いたぁ…」
布団から起き上がろうとしたら、すごく腰が痛い。
そうだった…
俺は昨日、照と身体で繋がったんだった…
この腰の痛みは、幸せな痛みだね。
「………んふふ…」
思わず笑みがこぼれちゃう。
起き上がれないし、なんもできないから、俺はまたベッド・イン!
照は、もう起きのかな?
ベッドの上には、微かに照の匂いと温もりが残ってる。
隣に、いてくれてたんだ…
そういえば、照と一緒のベッドで寝たのは初めてだったな…
いつも、照が床で寝るって言って聞かなかったから。
微かに残る照の温もりに頬をすりつける。
温かいな…
すごい、幸せだよ…
ガチャ
「……!」
部屋のドアが開いた!
照かな?
ワクワクしながら、できる範囲で身体を起こす。
「おはよう、ふっか。」
やっぱり!
ドアの前には、柔らかく微笑んでる照がいた。
「照!おはよー!」
足をバタバタさせて、照を隣に座るように促す。
できることが少ないから、ちょっと幼稚な方法になっちゃってるけど…
でも、照にはちゃんと伝わってる!
少し笑いながら、俺の隣に来てくれる。
「ふっか、体調はどう?」
「問題なーい!めっちゃ元気だよぉ。」
「よかった。朝食は食べれそ?」
「めっちゃお腹すいてる!」
何気ない雑談も、なんだか久しぶりな感じがするな。
もう、頭は冴えてるけど…
寝起きって言い訳して甘えてやろうかな…?
俺のこと、今まで寂しくさせてたんだ!
俺を寂しくさせたらどうなるか、ちゃんとわかってもらわないと!
「ひかるー!んっ!」
思いっきり両腕を広げてみせる。
「歩けないの、抱っこして!」
いつもの俺なら、絶対言わないセリフ。
少し恥ずかしいけど…
今は、照に甘えたいから。
照は、一瞬目を見開いた。
でも、すぐにくしゃって笑う。
その笑顔、大好き。
俺のことを軽々と持ち上げる。
「あっは!お姫様抱っこかよ!わら」
「これが1番運びやすいの。」
そのまま、俺は照の腕の中に全身を預ける。
やっぱり、照の体温が1番落ち着くなぁ…
「はぁ…失敗、ですわね。」
芙月は、チェス盤を眺めながらため息をつく。
「せっかく上手くいっていたのに…残念ですわ。」
そして、白いキングをただのポーンへ変える。
「彼も、所詮ただのポーンでしたか…」
芙月が、岩本に声をかけた目的。
それは、岩本が気づいたように、岩本を自分の元へ引き込むことによって、かつてフードの男が深澤に味あわせていた感情にさせる。
それによって、漆黒の龍が出現した状態を再現しようとしていたのだ。
だが、それは失敗に終わっている。
「どうしましょう…私の中で、彼が1番の秘策でしたのに…」
芙月は、珍しく焦ったため息を漏らす。
芙月の中では、岩本が最も深澤を壊すための強いカードだったとのだ。
それが崩れてしまえば、新しい策を1から考える必要がある。
だが…
「あの男に、クイーンを直接的に壊す権限が私にはないと言ってしまいましたし…」
フードの男との条件に、芙月が深澤を直接的に壊さないというものがある。
芙月は、白いクイーンを手に取る。
「……様子見、ですわね。」
芙月は、余裕を取り戻したように笑う。
それと同時に、
「”友情”…相手を思う気持ちは、やはり興味が湧きますわ。」
怪しく瞳を光らせた。
リビングには、久しぶりに9人全員がそろっていた。
岩本と深澤がリビングに降りた時に、すでに7人はそろっていた。
岩本に姫抱きされている深澤を見て、
「うわっ!朝からイチャイチャしてる!」
「アツアツじゃーん!」
など、佐久間、ラウールを中心にからかわれていた。
久しぶりに9人で集まれたのは、偶然、今日は仕事が休みであったから。
そして、9人集まり、何をするかというと…
「俺らが集まってやること…」
阿部が真剣な表情で佐久間に視線を送る。
佐久間も、阿部からの視線を受け、真剣に頷く。
そして、緊張した空気の中、佐久間が叫ぶ。
「ボードゲームやりまぁす!!」
「イエーイ!!」
緊張した空気は一瞬で消え去り、岩本、深澤の2人以外が楽しそうにのる。
「………ぇ?」
何も聞かされていない岩本と深澤は、何事だ?と目を丸くさせる。
「ちょっとちょっと、おふたりさーん?何浮かない顔してんの?」
ラウールがニヤニヤしながら、岩本と深澤に話しかける。
「いや…え?だ、だって、この流れでボードゲームって…」
深澤が顔をひきつらせながら状況の理解にはげもうとする。
岩本も、顔に手を置きながら考えようとする。
「久しぶりに集まったんだよ?」
「”まず”は、遊びたいやん!!」
渡辺と向井が笑顔で答える。
「あと、いわふか交際おめでとうの会もしないとだしね。」
目黒も楽しそうに笑う。
「せっかくだから、ケーキでも作ろうか。」
宮舘も楽しそうに答える。
メンバーの言葉に、岩本と深澤は顔を合わせる。
そして、柔らかく微笑む。
「あー!!そういえば!!!」
カードを配りながら、阿部が唐突に大声を出す。
「おうおう、あべちゃん、急に大声出してどうしたの?」
驚く7人と、冷静に理由を聞き出す佐久間。
「舘さんと翔太の交際おめでとうの会もできてないじゃん!!!」
阿部は焦ったような顔で理由を説明する。
その言葉に、渡辺から一切話を聞いていなかった、岩本、ラウール、佐久間、宮舘が固まる。
「………翔太。」
静かに、宮舘は隣の渡辺を見る。
渡辺は、顔を隠して俯いていた。
「…もしかして、先に伝えてた?」
宮舘は、周りのメンバーの反応から、渡辺が神奈川に行った時に伝えたのだろう、と悟った。
そして、渡辺は静かに頷いた。
その反応に、佐久間は
「ええええええええ!!!!?」
と大声を上げ、岩本とラウールは目を見開いていた。
「…うん、俺ら交際はじめました。」
「………///」
話を聞かされていなかった3人(主に佐久間)の怒涛の質問を超えて、ついに宮舘の口からも正式な交際宣言が出た。
これでようやく、あべさく、めめこじ、だてなべ、いわふかは、正式に交際していることが認識されたのだ。
その後は、盛大にボードゲームを楽しみ、宮舘の作ったケーキを食べて、久しぶりの9人でいることに幸せを感じていた。
全員で過ごせることは当たり前ではない。
だからこそ、9人でいる時間を大事にしたい。
それを、再確認することができる時間を過ごした。
「さて…じゃ、話し合い始めよっか。」
夜、9人は場所をカフェに変え、”任務中”の9人として座っていた。
阿部の声を合図に、今度は話し合いが始まる。
「話したいことがある。」
早速、岩本が手を挙げる。
岩本は、芙月から得た情報の全てを、メンバーに共有をした。
最初、深澤以外のメンバーは岩本が芙月と接触したことについて驚きが大きかったが、すぐに真剣に岩本の話を聞いていた。
「……第三勢力、か…」
岩本から聞いた新たな敵、空染の話。
また、厄介な敵が増えたと緊張した空気が流れる。
「でも、今のところは誰も姿を見てないよね。」
「…もしくは、気づいてないだけでもう会ってるか、だよね。」
渡辺と阿部が記憶を巡らせる。
岩本曰く、空染は少年の見た目をしているようだが…
「うーん…やっぱり、少年ってなるんだったら、阿部ちゃんが1番会ってそうだけど…?」
深澤が、口元に手を当てながら阿部の顔を見つめる。
「……探してみるね。」
阿部の職業は家庭教師だ。
もしかすると、すでに空染と接触している可能性がある。
もしくは、接触してくる可能性もある。
「俺らも、十分気をつけようか。」
目黒が真剣な表情で呟く。
その声に8人も頷く。
フードの男、芙月、空染…
敵は減らずにどんどん増えている。
全てに警戒をしなくてはならない。
こうして、会議は終了した。
「……うーん…」
会議終了後、阿部は部屋に戻った後に自身のノートを見返していた。
阿部が、家庭教師をする上で作ったノートだ。
勉強のポイントやどのように教えるかなどがびっしりとメモされている。
その中には、今まで教えてきた生徒の名前と特徴まで書き込まれていた。
「…やっぱり、情報が少ないな…」
だが、岩本から聞いただけの情報では辿り着くのは難しい。
もう少しだけ探してみようかと思い、ノートをもう1冊取り出す。
「あーべちゃん!」
だが、佐久間に後ろから抱きつかれ、止められる。
「一緒に寝よ!」
「あー…ごめん、もうちょっとだけ待っててもらえるかな?それか、先に寝てて。」
佐久間には申し訳ないが、阿部はもう少し作業がしたかった。
だが、佐久間は強制的に阿部をベッドに連行。
「ちょ、佐久間!?」
「あべちゃんさ、そうやって無理すんでしょ?だったら、俺が止めないと。」
佐久間にグイグイ引っ張られながら、無理やりベッドに投げ込まれる。
「今日は寝る!続きは明日にしようよ。俺も手伝うからさ。」
「…佐久間…」
今の佐久間は、何を言っても聞かないだろう。
阿部は、ため息を吐きながら、佐久間の隣に座り直し、一緒に寝ることを選んだ。
翌日、佐久間が目を覚ますと阿部がすでにいなくなっていた。
「…?あべちゃん?」
今日は仕事がなかったはずなので、周りをキョロキョロ見渡す。
すると、机の上に書き置きが置いてあった。
『急遽仕事が入っちゃった。タイミングとか考えると、噂の空染な可能性もあるから注意して臨むね。普通の仕事かもしれないから、佐久間はあんまり心配しないでね。 by阿部』
「………ふ……」
佐久間は、机の上に置かれたメモを手に取り震える。
「ふざけんなぁ!!!!!」
阿部が書いたメモは破らずに、思いっきり机に叩きつける。
「さっくん!?どしたん!?」
その声に、部屋が隣の向井が慌てて部屋へ入ってくる。
「こーじ!行くぞっ!!」
佐久間は、向井の腕を引っ張る。
「え!?ちょ、待ってやぁ!!」
何も分からないまま、向井は佐久間に連行されていった。
(阿部視点)
まずいな……
さっきからずっとスマホが震えてる。
…絶対に、佐久間だ。
いや、1人で行くのもまずいかなって思ったけど…
表面上、あくまで仕事だからね?
流石に佐久間連れてくわけにもいかないじゃん…
震えるスマホを恐る恐る手に取る。
やっぱり、全部佐久間だ。
並ぶ不在着信がここまで恐ろしいとは…
スマホをマナーモードにして、スーツのネクタイを整える。
そして、目的地に着いたみたいだね。
えっと、インターホンは…
あったあった!
ゆっくり押して…
「ごめんくださーい!ご連絡頂きました。本日担当する、阿部亮平です。」
俺の挨拶が終わると、ゆっくり玄関のドアが開いた。
「阿部さん、ですね。本日はお願いします。」
玄関から出てきたのは、今日担当する子の母親だった。
この人は、白だろうな。
もしここにいるのが空染だとしたら、脅されてるか、操られるか、もしくは作られた存在なのか…
「本日はお願いします!」
営業スマイルは忘れない。
笑顔こそ、相手の警戒を解けるからね。
「息子は、二階の部屋にいます。」
「わかりました、ありがとうございます!」
母親に案内されながら、俺は部屋の前に着く。
さて、何が出てくるかな…?
部屋のドアを母親が開ける。
「失礼します。」
部屋に入った先にいたのは、
「今日はよろしくね、阿部先生。」
机の上に頬づえをついて、俺に手を振る少年だった。
3,266
はれる.
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
コメント
1件
あーもう、この回は最高に尊くてにやけたわ…! 深澤が照に甘えるシーン、普段のツンツンした感じからは考えられないぐらいデレてて、そりゃ照も姫抱っこしたくなるよな。芙月の不気味な動きも気になるけど、ボードゲームで騒ぐ9人の日常に癒された。最後の阿部の仕事、もしかしなくても空染じゃない? 次回が待ち遠しい!🔥