テラーノベル
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目が覚めた。
闇だ。
何だ、まだ夜か。
目を閉じる。
眠りに落ちる。
深く、深く。
目が覚めた。
闇だ。
何だ、まだ夜か。
………。
……、……違う。夜じゃない。
今、俺は、きっと、闇の中にいる。
上半身を起こしている筈なのに全くその感覚がないのは、零距離で纏わり付く黒のせい。
空気はどちらかと言えば澄んでいるのに酷く息苦しいのも、黒の…せい。
辺り一面、真っ黒。
何が合って、何が起こっている…直近の記憶は連絡を受けてめめの家に行った事。見えなくなった、そう言っていた目が見えるようになって…あぁ、そうだ。水を貰おうとして扉を開けた、それが覚えている限りの最後。でもおかしい…めめの家のリビングはこんなに暗かったか?…否やだ、陽光が窓から入り込んで寧ろ眩しかった。なら、此処は……。
つ…と額から顎へと汗が伝う。喉仏を頻りに上下させて潤そうと試みる、が、返って乾きを鮮明にしただけで。次にゆっくり、ゆっくり、首を巡らし光を追い求め……そして、永遠に続きそうな暗闇に絶望した。
無意味と分かっていて瞬きを繰り返す。やがて目を開けていようが閉じていようが変わらないと改めて気付かされ、結局俺は瞼を閉じたんだったか。それすらもどうでもいいくらい黒に押し潰されそうになったその時。聞き馴染んだ声が背中をねっとり撫でて、開いていたらしい目が刹那で後ろへ走った。
「喉が乾いてるの?なら…はい、これどうぞ」
「め……め」
仄白く浮かぶのは肌か。髪も服も漆黒の中唯一判別可能な顔であろうそれは、見紛う事のない愛した、逢いたかった容貌。
……めめ、だ。
「め…め?それ、俺の事?…可愛い響きだね。俺に名前はないから、アナタの好きに呼んでいいよ」
「な、に…冗談言ってるの。悪いけど…笑える気分じゃないんだ」
「ん~…冗談、冗談か……俺ね、存在してから嘘言えない仕様になっててさ。笑って済ませられればいいんだろうけど、生憎此処がアナタの現実で、過去も未来も此処で始まって、此処で終わるんだよ」
鼻先に指を宛てがい虚空を見る癖。姿も仕草もめめそのものは、愛しい声で理解し難い言語を吐く。揶揄っている風でもない紡ぎを脳内で反芻し、実際呟き、必死に海馬を探る。意味は分からないままだが今は問題はそこじゃない。微妙に食い違う語調と見詰めて来る双眸の冷たさが確信を俺に報せ、険を孕んだ上目をそいつへ据えた。
「君は、誰…?」
「めめなんでしょ?さっきそう呼んだじゃん」
「…ううん、やっぱり違う。めめのようでめめじゃない君は何者なの?」
「待って、睨まないで聞いて。俺はアナタが望んだ姿をしてるだけで意図は一切ないんだって。証拠にほら、さっき飲みたいって思ってたのこれだよね?」
差し出されたのは、無意識に視界から外していた一組の茶器。湯気が漂うそれは多分ロイヤルミルクティー。香りで分かるアッサムは、俺が飲みたいと一瞬思ったもので違いない。けれど流石に手が出せずに眉間を寄せてめめのそっくりさんを見る。困ったように笑う表情は悔しい程焦がれる人に瓜二つで、別人相手に心が揺れてしまう自分自身に無性に腹が立つ。嫌になる。
そして、押し黙ったまま俯く。
アッサムの香りがより近くなり、数秒経って漸くめめらしき何某かがしゃがんだのに気付く。先程とは異なる上目を馳せて伺えば、酷く優しい目で見詰められていた。鼻の奥がツンと痛み、耐え切れずに顔を両手で覆う。
「…止めて、見ないで。その目で俺を見ないで……っ!」
「…ねぇ、名前教えて。アナタって呼びたくないって、俺の中の俺が言って来てるんだ」
「……あべ…りょうへい」
コメント
1件
うわあああ第11話読み終わったよ〜!!😭💦 最初の「目が覚めた→闇だ」の繰り返し、もうゾワゾワした…まさか夜じゃなくて“闇の中”ってオチになるとは思わんかった…! めめのそっくりさん登場からの、あの“愛しい声で理解し難い言語”が逆に怖すぎて背筋凍った…「欲しいものを差し出す」仕草も優しいのに冷たい目線も、全部が不気味で切なくてエモすぎるんだが!? 最後の「阿部…亮平」で余韻がやばい…続き待ってるよ篝火さん!!🌸
ゆぴ
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