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コメント
24件
なんか気づいたら泣いてました…😭 ひーくんその確かめ方は辛いってぇ😭
やばいどストライクのいわふかすぎますぅぅ🥹💖

号泣です😭 2人の性格でややこしいことになって😅 ゆり組ナイスアシストです🙏 いわふかは一緒にいてくれないと🥹 より深まってよかったです🥰
ゆんしょ
3,875
#ご本人様とは一切関係ありません
海星
147
#こじあべ
ゆんしょ
40,675
珍しく🔞なし。
❤️💙も出てきます。
💜said.
好きだったんだ、ずっと。
いつからかなんて覚えていないほど。
隣に居るのが当たり前で、くっついているのが当たり前で。
きっと俺らは何も変わらない。
そう思っていたから、どこかで何かが足りなくなっていたのだろう。
言葉を交わさずとも分かり合えてると思っていたのは、きっと俺だけじゃなかったはずなのに。
唇を重ねるのも、指先が触れ合うのも、お前が俺を求めてくるのも、言葉なんて要らなかったから。
過信していたのかな。
それとも俺は、甘えすぎていた?
なぁ、照。
本当に俺らはこれで終わるのか。
その日は本当に唐突にやってきた。
ラジオの収録が終わり、ヘッドフォンを外して一息つく。
ペアだったラウールが「お疲れ様」と水を渡してきたのを手に取って、蓋を回した。
30分という短いラジオでも、喋り続ければ喉は乾く。
今日は特に頭の回転が早く、テンポがいいラウールとふたり。
MCの血も騒いで収録は大盛り上がり。
スタッフの笑い声が耐えないほどだった。
「今日、調子良かったね」
「ラウが居てくれたからだよ」
「楽しかった。ふっかさん、これから岩本くんのとこ?」
「ん…、多分。どうだろ、連絡来てると思う」
ペットボトルを机に置いて、マネージャーにアイコンタクトを送り、携帯を取ってもらう。
ロック画面を開いてズラリと並んだ通知の中、照の名前が埋もれていた。
3件分、連続で送られてきていた内容を見るためにタップしてアプリを開く。
ラウールが口角を上げながら俺を見ていた。
「……なんて?」
「俺の家で待ってるって。珍しいな」
「岩本くん明日早かったよね?大体こういう時ふっかさんが泊まりなのにね」
ラウールの言うとおり、俺らは互いの仕事の時間によって、朝が早い方の家に泊まる事が多かった。
スケジュールは全員把握してるから、日程を合わせながら大体この日は泊まりだろうなという目星はついていて。
お互いに言わなくても当日に連絡がくればやはりな、という感覚だった。
照から来てたのは『終わった?』『今日、俺がそっち行くから』『早く帰ってこいよ』の短いメッセージが3つ。
ふっ、と緩んだ口元が少し上がるのを自覚した。
「…ニヤけてるよ」
「分かってる」
「好きだねぇ〜、岩本くんのこと」
「そりゃあね」
鞄の中にペットボトルを放り込んで、肩にかけた。
スタッフに一礼をして、ラウに手を振って、先にマネージャーと一緒に車まで。
後部座席に座り込んで、マネージャーが運転席のシートベルトを締めて車が走り出す。
ぼんやりとした暗さの中、照に返事をするために再度携帯を開いた。
『今、帰ってきてる。15分くらい』
それだけを打って送ると、すぐに既読がついた。
了解の2文字が返されたのを見て、画面を閉じて窓に頭を凭れかけた。
瞼を閉じて、少しの仮眠。
きっとこの後、帰ったら照に抱かれる。
玄関を開けた先、俺の家で迎えてくれる照に抱き寄せられて、靴も脱がずにそのままキスされて。
腰と頭に回された腕が俺をキツく抱き締めて逃さないまま、執拗なキスに溶かされるんだろう。
そんなことを想像するほど、俺だって求めてる。
少し反応してしまった自身のモノを落ち着かせるように深呼吸をした。
自宅の前について、マネージャーと別れて自室までの長い廊下を早歩きした。
歩幅が段々と広がって、ちょっと息切れしたのを悟られないように、インターホンを押す前に息を整えた。
緩む頬を軽く叩いて、インターホンを押そうとしたところで、ドアが開いた。
見えたドアの隙間、照と名を呼ぶ前に吸い込まれるように中へと引かれた。
そのまま壁に押しやられて、唇が重なる。
ほら、やっぱり。
なんて思って、首に腕を回して唇を少し開けた。
けれど予想よりも短く、すぐに求めていたものが離れた。
「ンぁ…照…?」
「ねぇ、ふっか」
次いで出た言葉に頭が真っ白になったことだけは覚えてる。
浮かれてた心が一気に冷えて、何を口にしたかなんて覚えてない。
いつの間にか照は居なくて、ひとり暗く静かなベッドの上で、呆然と天井を眺めていた。
『俺ら、別れよう』
照の言葉が反芻する。
なんで、どうして。
そう問えたのか分からない。
ただ、理由としては、好きな人が出来たから。
それが深く心に刺さって、涙すら出なかった。
問い詰めることも出来なかったのは、いつかそういう日が来てもおかしくないと、どこか覚悟していた自分もいたのかもしれない。
男同士の恋愛だ。
どう足掻いたところで異性には適わない。
ここ最近、忙しい上に色んな人との共演もある。
男の俺なんかよりずっと、素敵な人はいるだろう。
だから、あっさりと受け入れた。
強がりでもあったかもしれない。
もしくは、夢であれと思って何度も目を閉じた。
でも現実は残酷で。
朝起きて、洗面台の鏡を見て思わず「うわ」と声が出た。
コンディションは最悪だ。
腫れぼったい目、そもそも顔が浮腫んでる。
収録あんのにな…なんて思いながら湯船を溜めた。
昨日入る気力もなかったから、余計に湯船に浸かりたくて。
少し早く起きて、いつものルーティンをこなしていく。
携帯を開いても、照からの連絡はない。
朝のおはようもなければ、昨日のが嘘だという弁明もない。
それが正しく現実であることを示していた。
携帯の画面を閉じて、諸々の準備を済ませているとお風呂の通知が鳴った。
軽く身体を洗って、湯船へと足を入れる。
熱めのお湯が、じんわりと身体を温めていく。
パシャッと顔に水をかけて、髪をかきあげた。
水面が揺れたのは動いたせいか、それとも視界が揺らいだからか。
ようやく実感が湧いてきて、自然と涙がこぼれ落ちた。
「おはよ〜」
「あ、ふっかさん来た!おはよー!」
楽屋のドアを開けるなり、ラウールがいつも通りニコニコと俺に声をかける。
きっと昨日の惚気でも聞きたいのか、俺が荷物を置いて椅子に座ると隣に座ってきた。
純真無垢、という言葉が似合う、かわいい末っ子。
俺と照の関係を知っているのはラウールだけではない。
みんな知っている。
だけどその中でも一番、俺の味方で、俺らのことを一番大切に思ってくれているラウは別格だった。
ふたりが仲良しだと俺も嬉しいからと、泊まりの翌日は話を聞きたがるのだ。
そんなラウの頭を撫でると、びっくりした顔で俺を見た。
「…ふっかさんが、頭撫でた…!」
「そんな驚くかよ」
「え!なに!?何かあった?」
「……ごめんな、ラウ。別れた」
「はぁ!?」
へらっと笑いながら、重くならないようにそう伝えると、ラウの声が楽屋に響いた。
その声に周りのメンバーも驚いて俺らの方を見た。
この場にいないのは撮影中の照と阿部ちゃんだけ。
どうせバレるのだ。
気を遣われるより思い切って話した方がいい。
理由は言わないまま、別れた事を話すと、みんなラウールと同じように驚いてくれて。
皆が意外にも、俺らの事を理解してくれて、見守ってくれていたんだと少し申し訳なくなった。
「……ふっかさんは、それでいいの?昨日だって好きだねって…そりゃあねって言ってたじゃん」
「ん〜…まぁ、仕方ないよな。人間誰しもいつだって別れってのは来るし、そのいつかが昨日だったって話。後悔はないよ」
「本当に…?」
「本当。大丈夫だよ、ラウ」
俺よりもしょんぼりするラウールの肩を叩いて、立ち上がる。
ちょうどその時、撮影が終わった照と阿部ちゃんが戻ってきた。
パチッと目が合って、少し逸らされる。
でも話さないのは不自然だし、メンバーにも気を遣わせるから、俺は敢えていつも通りに照に話しかけた。
「おはよ、照」
「…はよ」
「阿部ちゃんもおはようね」
「おはよう、ふっか」
俺らのことを、後ろから心配そうにメンバーが見つめる視線が刺さる。
知らないのは阿部ちゃんだけなのか、それとも照から聞いてるのか。
少し眉根を寄せた俺を、小首を傾げて阿部ちゃんが見た。
その顔のあざとさも、俺が持っていれば可愛かったのかな、なんて全てを卑屈に考えて。
納得なんて出来てないのに、表面上で笑ってる自分にも反吐が出る。
心の奥底のへどろのような重たく真っ黒な感情だけが、寂しいと訴えるのも飲み込んで。
スタッフに呼ばれて楽屋を後にした。
その後ろから、舘さんが追いかけてきた。
撮影の順番でもないのに俺を引き止めて、話がしたいからと、夜ごはんに誘われた。
こういう時、グループの事を率先して気にするのが舘さんだ。
二つ返事で了承をすると、あとで場所を送っておくと言われた。
楽屋に戻る舘さんの背中を見て、俺も踵を返してスタジオへ向かった。
一通りの仕事を終えて、それぞれが個々に帰り始める。
俺も一旦帰って、準備してからまた外に出ようと荷物をまとめ始めた。
携帯には舘さんから場所だけが送られてきていて、調べれば会員制のバーだった。
ご飯というよりは、呑むのが主らしい。
やけ酒にでも付き合ってくれるのは、確かに酒に強い舘さんだから出来ること。
俺の話を聞くというよりも、呑めということなのだろう。
細やかな気遣いにふっと笑みを零して、ポケットにスマホを戻して、荷物を持った。
まだ楽屋にいた数人のメンバーにお疲れ様と声をかけて、廊下に出てスタッフにも挨拶して。
長い廊下をひとりで歩きながら、ガラス張りの窓に目を向ける。
少し雲がかかった空を見て、雨が降りそうだなと思った。
その時、ふいに反対側に手を引かれた。
驚いて振り返る間に、 そのまま部屋と部屋の間のわずかな隙間に引きずり込まれて、壁に押さえつけられた。
「なっ────ンッ…!!!」
顔を見る前に、唇が重なった。
見なくてもわかる、何度も重ねた感触。
少し乱暴なキス。
鼻の奥をつく、濃いウッド調の香り。
頭の上で両手を押さえつけられて、顎に添えられた指先は逃がさないように俺を固定して。
息をするために開けた隙間から舌が入ってきた。
驚いて目を見開いて、思わず照を突き飛ばしていた。
「───ッは、なに…っ」
「ふっか…お前、なんか言うことねぇの」
「はぁ!?何もねぇよ!お前が別れ切り出してきたんだろ…!なのに、なんで…ッ」
「……あっそ。ごめん…」
「は…?おい、照!!」
俺を見下ろす目が、一瞬悲しみを浮かべたように揺らいだ。
それから何も言わずに俺を置いて帰って行った。
ずるずると壁伝いに背を滑らせて、座り込んだ。
廊下に散らばった荷物を一瞥して、早く拾わなきゃと思うのと同時に、重ねられたキスを思い返す。
別れようと言ったのは照。
俺はそれに対して二つ返事で了承したはず。
昨日の今日だ。
それなのに、なんで。
好きな人がいるくせに、未練たらしくキスなんかしてくるな。
なんでお前が悲しそうな顔をするんだ。
折り曲げた膝に顔を埋めて、息を吐く。
「……マジで、嫌いだわ…」
強く瞑った瞼の奥に笑う照がいる。
でもその隣りはもう俺じゃない。
偽りの気持ちを吐かなければ、壊れてしまいそうなくらいに苦しくて。
もう一度息を吸いこんで立ち上がった。
廊下に散らばる荷物をひとつずつ拾い上げて、俺も出口へと向かった。
人通りの少ない道を少し歩いた先、地下へと降りる階段を下って、その奥にある扉を開ける。
こじんまりとした店内のバーカウンターに目を向けると、舘さんが気付いて手を上げた。
帽子とマスクを外して近づくと、舘さんの後ろからグラスを片手にひょこっと翔太が顔を覗かせた。
「…翔太もいんのかよ」
「居ちゃ悪いかよ」
「言い出しっぺ、翔太だよ。ふっかのこと気にしてたから」
「お前、言うなよ」
翔太が舘さんを軽く小突いて、気まずそうにグラスの中の酒を煽った。
早くに来ていたのだろう、翔太の顔はほんのり赤くなっていた。
俺も舘さんの隣に腰をかけて、とりあえずカクテルを頼んだ。
「…で?照と何があったわけ?」
おしぼりで手を拭いてると、乾杯もまだなのに翔太がぶっ込んできた。
ある程度、聞かれるだろうとは思っていたが、翔太がいたことは誤算だ。
舘さんならまず、俺が話し始めるまで待つはず。
それが翔太も居るとなると、完全に興味本位もあるだろうコイツは遠慮なしにぐいぐい来る。
舘さんも分かっていたようで、こら、と軽く翔太を制止した。
「いいよ、舘さん。話す気ではいたし。て言っても、俺もよく分かんないんだよね。昨日帰ったら唐突に別れ切り出されてさ」
「何か思い当たる節はないわけ?照を怒らせたとか…」
舘さんが少し眉根を寄せて、俺の顔を覗き込むようにして言葉を紡ぐ。
そんなの、あったら苦労はしていない。
嫉妬するのも顔に出やすい照だ。
怒っているとしても分かりやすいのに、そんな素振りもなかった。
首を横に振って、俺にもさっぱり、と言葉にした。
次いで話そうとしたところで、目の前に頼んでいたソルティドッグが置かれた。
「ふっかさんほんとそれ好きだよな」
「スノースタイルだっけ。グラスの縁についてる塩、その呼び名が気に入ってんでしょ」
「さすが舘さん。よく覚えてんね」
にっ、と笑みを浮かべて軽く乾杯をして、塩ごと酸味の効いたカクテルを喉に流し込む。
しゃりっとした塩のしょっぱさと、グレープフルーツの酸味が合わさって、口の中で甘く溶ける。
これ、照は苦くて嫌いだって言ってたっけ。
甘くなるよって教えても苦味が強いからと頑なに飲まなかったやつ。
また変に思い出して、胸が重くなった。
カウンターにグラスを置いて俺が黙ると、舘さんがマスターにおかわりを要求した。
「ふっか、モスコミュール飲める?」
「なんだっけ…ウォッカ?」
「そう、俺の好きなやつ。ライムとジンジャーエールとウォッカ。結構強めだけど」
「ん…いける」
了承を得ると、目の前で銅製のマグカップに大きめの氷がガランガランと音を立てて注がれた。
マスターの手元をジッと見つめる俺を、翔太が面白そうに笑った。
意味ありげな顔で、舘さんと俺を交互に見つめる。
「粋だね。さすが涼太」
「深い意味はないよ。ただ、ふっかと照には仲良くいて欲しいからさ」
「え、なになに?どういうこと?」
「ちなみに俺はスコーピオン」
翔太が掲げたグラスには、レモンとライムがグラスの縁に刺さり、さくらんぼが添えてある可愛らしいカクテルが揺れていた。
そのさくらんぼを手に取り、舘さんの口へと持っていく。
一瞬戸惑った舘さんが、それを歯で受け止めて、呆れたように翔太の頬を撫でた。
「え、なに?俺、振られて落ち込んでるのに、お前らのイチャイチャ見せられんの?」
「ひゃっはっは!意味わかると面白ぇぞ」
楽しそうに笑う翔太を横目に、差し出されたマグカップを受け取った。
咀嚼した舘さんが、飲んでみてとジェスチャーで伝えてきて、口元にそっと近づけると強めの生姜の香りがツンと鼻についた。
こくりと一口飲むと、先ほどとは違う辛めの味。
飲みやすくはあるが、確かに後々、胸が焼けるように熱くなる。
「ふっか、カクテル言葉って分かる?」
「なにそれ…」
ちびちびと飲む俺とは対照的に、メンバーカラーでもある赤い酒を一気に飲み干した舘さんがマグカップを指さした。
「花言葉と一緒で、カクテルにも意味があるの。モスコミュールの言葉は『喧嘩はその日のうちに仲直り』」
「は…?」
「ちなみに、翔太が飲んでるスコーピオンは『瞳で酔わせて』。俺に対する誘い文句」
「俺の中でさくらんぼ受け取ったら了承の意味にしてんの。ウケるだろ」
ケラケラと笑う翔太に、酔ってるだけだからと大人の対応をかます舘さんが、妙に余裕を持ってて。
ちなみに、と耳打ちされた言葉に、俺も思わず笑ってしまった。
翔太にはまだ教えてないらしいそれは、後々の翔太を思うと少し可哀想にも思えた。
「俺が飲んでるのはローズ。抑えきれない理性って意味」
「程々にしなよ。明日も収録でしょ」
「昼過ぎだから多分大丈夫」
「怖いわ」
お互いに冗談めかしく笑って、杯を進めていく。
頼んでくれたモスコミュールを見つめて、少し嬉しくなった。
落ち込んでるだろう俺を見かねて誘ってくれたふたりと、そんな俺に向けて出されたカクテルの意味。
出来ることなら俺だって戻りたい。
けれども簡単にはいかないのだ。
「ありがとね、舘さん。翔太。…でもさ、あいつ、好きな人出来たって言ってたし…仲直りも無理なんじゃないかなあ…」
「は?お前のことが大好きな照が、好きな人出来たって?」
「こら、翔太。ちょっと黙って」
咄嗟に翔太の口を抑えた舘さんが、翔太と同じように怪訝な顔をした。
あからさまに態度が変わったふたりの様子に、俺も手を止めて、ふたりを見る。
何かを考えて、舘さんが言いづらそうに言葉を落とした。
「…ふっか、照からそう言われた時に、なんて答えた?」
「それがあんま覚えてなくて…。ただ、俺も男だし、男同士上手くいくなんてほんのひと握りだし…仕方ないかなって受け入れた」
「あの嫉妬深い照が、急にふっかを手放すと思う…?ふっかは引き止めなかったの?」
「縋って面倒くせぇなんて思われたくなかったんだよ…」
氷が溶けていって、マグカップの中でガランと回る。
薄まっていくそれをただ見つめて。
縋ったところで、そんな姿を最後に見せて嫌われたくはなかった。
いつだって照の中の俺は、カッコよくありたくて。
女々しく泣いて別れたくないと言えば、照に幻滅されてもおかしくない。
だったら、去り際も後ろ髪を引かれないように振る舞うしか分からなくて。
嘘だよ、離れないで。
照が好き。俺以外を好きだなんて許さない。
心の中で泣いて照の服を掴んで引き止めたい俺と、笑って許す俺のせめぎ合い。
選んだのは後者だ。
傷付くのは俺ひとりで良かったのに。
「それ、逆だろ。照はお前の本心知りたかったんじゃねぇの」
大きな溜め息を吐いて、舘さんの制止を振りほどいて翔太が言った。
グラスから伝う水滴がカウンターの上で広がっていく。
マスターにそっと空いたグラスを翔太が渡して、ラムコークを、と頼んだ。
「お前さ、今まで照の何を見てきたの?照がお前以外に目移りすると思うか?」
「…分かんねぇだろ…」
「はぁ〜バカかよ。お前らと俺ら、互いにいくら長い年月過ごしてきても、不安になることくらいあるだろ。言葉にしなくても分かり合えてます、だけじゃ伝わらねぇこともあんの」
翔太の言葉にハッとした。
確かにそうだ。
俺は照を信頼してたからこそ、嫉妬も不安もさほど無いけれど、それは性格も相まってのこと。
逆に照は俺が他のメンバーと絡んだり、別の誰かとご飯に行くことすら寂しがったりするほど、嫉妬深くて不安定になりやすい。
でも何も言わなかったのは、俺に嫌われたくなかったから。
喧嘩になることもあったけれど、別れたくないと常に言っていたのは照だ。
それが急に、好きな人が出来たからと告げられて、ショックを受けているのは俺の方。
俺だってちゃんと、照の事が好きだからこそ悲しくて。
でも言葉にもしなかった。縋らなかった。
全部逃げていたんだ。
カウンターの上に置いていた手の甲に、パタッと雫が落ちた。
それが自分から伝う涙だと気付いたのは、ギョッとした翔太と舘さんが慌てたから。
泣かせたじゃんと翔太を牽制する舘さんと、言い過ぎたと慌てておしぼりを渡してくる翔太が何だか面白くて。
笑うと更に涙がぼろぼろととめどなく溢れてきた。
「アッハッハ!あー、おっかしぃ。はぁ、うん…翔太の言う通りだね」
「ふっかさんが壊れたわ…」
「翔太のせいじゃん…。ふっかが泣くなんてよっぽどだよ」
「照にばっかムカついてたけど、俺がちゃんと伝えてなかったって気付けた。でも、本当に好きな人がいるなら、俺はきっぱり諦めるよ。照には幸せでいて欲しいから」
うんと背伸びをして、肩の力を抜いた。
腹の奥で怒りと悲しみにのまれていた感情が、リセットされた気がした。
お互いに顔を見合せて、俺を見たふたりが、大丈夫だと伝えてきた。
それから、いいタイミングで出されたラムコークを、翔太が一口煽って、俺に渡してきた。
「翔太も粋なことするじゃん」
「涼太のおかげで少しは覚えたからね」
「コレは…?」
受け取ったラムコークのグラスを目の前に掲げて、透き通ったカクテルに目を向ける。
頬杖をついたふたりが、口を揃えて答えた。
「「もっと貪欲にいこう」」
それから数杯は飲んで、夜もかなり更けた頃、ようやく解散した。
でろでろに酔った翔太の肩を支えて、タクシーに乗り込んだ舘さんが、頑張れよと口にした。
軽く返事をして、タクシーのドアが閉まり、夜の街を走り出した。
それを見送って、俺も家までの道を酔い覚ましに少し歩いた。
照に連絡を入れようかとも迷ったが、話すならシラフの時がいい。
明日にでも、ちゃんと伝えよう。
照が好きなこと、別れたくないこと。
本当に好きな人がいるなら、俺はきっぱり諦めてちゃんと前を向くこと。
暫くは引きずるだろうけど、でも大切なメンバーに変わりはないから、これからも仲良くしていきたい。
ちゃんと言葉にして伝えよう。
1ミリも後悔しないように。
そう思って歩いた足取りはほんの少しだけ軽くて、夜の街を照らす光たちがキラキラと弾けて見えた。
意気込んだのはいいものの、結局、あれから1週間経っても照と話すことは出来ないでいた。
仕事がそもそも合わない。
合ったところでふたりきりになれるタイミングもなく、話しかけるタイミングも難しい。
ラウールもあれから毎日のように気にかけた言葉を連絡してくるし、舘さんや翔太もまだかまだかとソワソワしているのが窺える。
時間が経てば経つほど、溝というものは深まっていく。
そうして蒸し返して話すことすらも、今更感が出始める。
早く話さなきゃという思いと、まだ照が俺とやり直す気があるのかという不安と焦り。
じんわりと手のひらに浮かぶ汗を服で拭って、落ち着くための深呼吸を繰り返す。
眠れない日も続いていく。
寂しさは積もるばかりで。
照に触れたい。
触れて欲しい。
好きだと言って抱きしめて、キスをして欲しい。
しつこいくらいに何度も重ねて、俺の身体を弄って。
もう十分だよと、分かるほどに俺を抱いて。
寂しいよ、照。
朝が来る度に何度も実感する悪夢。
当たり前だと思っていた日々を失うというのは、こんなにも辛くて。
あの日以来、届かない途切れた連絡に、何度も打っては消してを繰り返して送れないまま、また朝が来て。
スケジュールを確認して、今日、ようやくまた全員での収録日。
この日しかないと賭けに出て、玄関のドアを開けた。
楽屋に入ると既に皆が来ていて、一呼吸置いて、おはようねといつも通りに挨拶を交わす。
少し奥に進んで、座ってる照の前に立った。
「照、おはよう」
「…おはよう、ふっか」
「今日も頑張ろうな」
「え…うん」
精一杯の笑顔を見せた。
本当なら今すぐにでもふたりで話したい。
でも仕事が終わるまで、動揺したくない。
終わらせてから、ちゃんと言う。
そう何度も心の中で唱えた。
先に収録を終わらせて、個々のカットを撮る。
それが終われば各自解散だった。
スタッフから呼ばれる順番を待つ。
照の後であれと願ったが、先に呼ばれたのは照だった。
阿部ちゃんが終わって、照が呼ばれる。
指示通りに動いてカットを撮る様子をジッと眺めて、あぁやっぱり好きだな、なんて思って。
照が終わると、俺が呼ばれた。
先に帰られたくなくて、NGが出ないように丁寧に、急いでくださいと言わんばかりに颯爽とこなしてOKが出た。
一礼をして、楽屋へと走ろうとスタジオを出る間際、まだ呼ばれてない舘さんと翔太が行ってこいと頷いた。
俺も頷き返して、照がまだいることを信じて走った。
もし楽屋を出たにしても会う確率は高い。
正面玄関まで走ってもいい。
話したい、照。俺の話を聞いて。
バクバクと鳴る心臓を、落ち着かせるように手を置いて、深く息を吸った。
楽屋のドアの前、少し聞き耳をたてると照の声がした。
阿部ちゃんもまだ残っていたらしく、ふたりの声が微かに聞こえて、覚悟を決めて少しドアを開いた。
「……好きだからさ…」
確かに照の声でそう聞こえて、目に入ったのはソファーに座ってる阿部ちゃんの後頭部と、ソファーの背面に手を置いて阿部ちゃんに顔を近づけてる照の髪。
一瞬で頭が真っ白になった。
はく、と息が上手く吸えなくて、手が震えた。
声が出ない。
全身が固まったように動かない。
その瞬間に、照と目が合った。
「……ふっか?」
名前を呼ばれた瞬間に、我に返って走り出していた。
後ろから照の声が聞こえたけれど、顔を見たくなくて。
好きな人が出来たのは本当だった?
それが阿部ちゃんだった?
女じゃなかった。
同じメンバーだった。
嘘だと信じたいのに、話さなきゃいけないのに、また俺は逃げた。
もう戻れないと確信して、涙が溢れた。
「────っ、ふっか!!!!」
ぐんっと後ろに引かれて、振り返ると同じように走って追っかけてきたのだろう、少し汗ばんだ照が俺の手首を掴んでいた。
泣いてるのも見られたくなくて、必死に抵抗しても離さない。
「ッ、やだ!離せ!!」
「ふっか!」
照が俺を強く抱きしめる。
その腕の中、縋りつきたいのにつけない。
苦しい。痛い。なんで。
柄にもなく、声をあげて泣いた。
そんな俺を、照は抱きしめたまま離さなくて。
「……ふっか、ふっか。なんで泣いてるの…」
照もまた、泣きそうな優しい声で俺の名前を呼んで問う。
阿部ちゃんにキスしたその口で俺の名前を呼ばないで。
阿部ちゃんに好きだと言ったその声で俺に話しかけないで。
まだ未練たらしいのは俺だから。
勘違いさせないでよ、照。
「追っかけて、くんなよ…ッ、阿部ちゃんのとこ…行けよ…っ」
「なんで阿部が出てくんの?ねぇ、ふっか、なんで逃げるの」
「さっきキスしてたろ…!好きだって…阿部ちゃんの事が好きだから、俺を振ったんだろ…!」
照の胸を押しながら、腕の中から逃れようともがいた。
びくともしない照が抵抗する俺の腕を掴んで、唇が重なった。
嫌だと何度も叫んでも、それを飲み込むように何度も重ねられて。
濃いウッド調の香り。
乱暴なキス。
俺を好きだと伝えるような抱きしめる腕の力。
絆されるように力が抜けていく。
「……阿部にキスなんてしてないし、好きだって言ったのはふっかの話。妬いてくれたの、嬉しい」
ちゅ、とリップ音をたてて離れた唇が、弁明をするように言葉を紡ぐ。
照の服を手繰り寄せるように掴んだ手が震えた。
見上げた照の顔が、ふっと緩んだ。
俺にしか見せない優しい照の顔。
「…ねぇ、ふっか。泣いてくれてるってことは、俺の事…まだ好き?」
下唇がつきでるほど、泣くのを耐えても涙は零れ落ちて。
俺の頬を手のひらで掴んで、変な顔だと照が笑う。
その余裕さもムカつくけれど、どうしたって俺はこいつが好きで、離れるなんて無理なんだ。
それは照も一緒。
言葉を交わさなければ分からない事もある。
分かっているようで、伝わらない事もある。
「好きな人が出来たなんて、嘘だよ。ごめん…。ふっかが居ないなんて、俺の方が無理なのに…」
「…俺も…照が居ないと…寂しい…ッ」
「ふっかの本音…やっと聞けた」
こつ、と額が当てられる。
不安だったのはお互い様。
安堵したように照が息を吐いて、またぎゅうっと抱きしめられた。
今度は俺も、背中に腕を回して抱きしめ返す。
「撤回させて…ふっか。もう一度、俺と付き合って欲しい」
「俺から離れるなんて、もう絶対許さねぇから…」
強がりで出た言葉に、照が嬉しそうに「うん」と答えた。
もう一度落とされたキスは、優しいものだった。
手を繋いで楽屋へと戻ると、全員がまだ帰らずに残っていて、俺らを見たラウールが泣きながら抱きついてきた。
舘さんと翔太もやれやれと言った顔を見せて、安堵の息を吐く。
阿部ちゃんも気まずかったのか、おずおずと俺に近づいて、服に絡まった糸を取ってくれただけだと誤解させてしまったことを必死に謝ってきてくれた。
「逆に、私情でみんなに迷惑かけてごめん」
そう言って頭を下げると、照も一緒に頭を下げた。
それからお互いに顔を見合せて、ふっと笑いが出て。
照がまた指を絡めてきて、強く握りしめる。
俺も答えるように握り返して。
一度離れたからこそ、より伝わる。
優しい嘘は、もう重ねない。
これからたくさん伝えていくよ。
好きだという気持ちも、不安に思うことも、ちゃんと口にして。
今度はもう間違えないから。
この手は二度と離さないと誓って。
END.
しのちゃまはカクテル大好きで
カシオレが大好きです(◜𖥦◝ )
でも最近、麦焼酎のカルピス割りの美味しさに気づきました(何の話)
カーディナルのカクテル言葉、ぜひ調べてくださいな✌️
ちなみに舘様に似合うのはキール・インペリアルかな(◜𖥦◝ )
マティーニも良き……
約1万2000字読んでいただきありがとうございました!