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「本当なんです。信じてください」
「んなこと言われてもねぇ」
ほぼ全員が口髭を生やした研究者仲間はいった
「そんな生き物、存在し得るわけない」
「そうです。でもこの目で見たんです。その存在し得ない生き物が、どうやって生きているのか知りたい」
「見間違えなんじゃねえのか」
「あり得ません。この目で見たんです」
あまりの熱量に押された研究者たちは、渋々頷いた
「1ヶ月だ。1ヶ月でその人魚とやらを捕まえてこい。そうしたら信じてやる」
類はまた浜辺に来ていた
今日は歌声も聴こえない
捕まえてこいなんてそんな無茶なと思ったが、承諾してくれただけ優しいのだろう
人間はどの知能を持つのだろうか
だったら、餌で釣ることはできないだろう
言葉はわかるのか?
だとしたら意思疎通ができるかもしれない
いや、そもそも言葉を喋れたとて、同じ言語を話すのか?
疑問は膨らむばかり
今の所、人魚は歌うことができるという情報しかない
「……ん?」
考え事をしながら歩き続けていると、何かが打ち上げられているのが見えた
海藻か?
歩み寄るとそれは
昨日の人魚だった
よく見ると傷だらけだ
「噛み跡…天敵にやられたのか?」
考えられるのはサメ、シャチなどの肉食
「とにかく手当てをしよう」
類は手拭いを取り出し、大きな傷口を塞いだ
彼女の手首に指を乗せ、脈を測る
まだ生きている
呼吸はある。単なる気絶だろう
安堵の様子で、胸を撫で下ろした
『人魚とやらを捕まえてこい』
研究者の言葉を思い出した類は、人魚を抱えて研究所へ向かった
研究所へ戻ると、研究者たちは目を見開いた
「こ、こんな生き物が本当に…」
「下半身が魚…だがこんな鱗まみれの魚なんていたか?」
「海の中にいるんだろう?肺呼吸か?鰓呼吸か?」
「性器はどれだ?胎生、卵生どちらで繁殖するんだ。…まさかクローンか?」
「お、落ち着いてください」
類は研究者たちを押し除け言った
「怪我をしている。研究者はまず治してからです。バスタブに水を溜めてください」
それから、と類は続けた
「彼女の研究は、僕1人でやらせてください」