テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
一旦研究所の風呂場にに人魚を入れて、類は自分の部屋に大きめの水槽を用意した
以前研究で使っていたものだ
「海藻は入れるべきだろうか…」
彼女は陸に上がっても歌っていたし、肺呼吸なのだろうか
主食がわからない以上、今は金魚の餌くらいしかそれらしいものがない
「わからないことだらけだ」
ううん、と唸りながら思考を巡らせ、人魚が起きるのを待った
「…ここは」
あれから20分ほど経ったころ、人魚は目を開き、声を発した
鈴を転がしたような、心地よい声
「…!目を」
「だっ、誰…あ」
驚いた様子で目を見開いたが、何かに気がついたように類は見つめた
「きのう、の」
「僕らと同じ言語を使えるのか…!」
「あ、あの…?」
類は人魚の手を握り、言った
「僕は神代類といいます。貴方のことを、研究させていただけないでしょうか」
「へ、ぁ…えぇ?」
困惑した様子の彼女の頬に、水が伝う
「わ、わたしはネネ…その、よろしくお願いします…?」
ネネを類の部屋の水槽に移し、類はネネに話しかけた
「まずいくつか質問をさせていただきたい」
メモ用紙と紙を机に広げ、類はメガネをかけた
「は、はい」
「まず、主食は?」
しゅしょく…と類の言葉を繰り返し、ネネは答える
「海藻、と…あと魚」
「海藻と魚か…」
類はメモ帳にペンを走らせた
「次に…」
いくつかの質問も繰り返し、類はある疑問が浮かんでいた
「…君たち人魚は、どういった生き物なんだい?」
「人魚…人間たちには、そう呼ばれているんだ」
「あぁ、まぁ…つい最近、僕がつけたものだけどね」
「そうなんだ」
ネネは顎に指を添えて、思い出すように語り始めた
「わたしたちは、そこまで歴史の古い種族じゃないんだ。人魚が現れたのは、わたしたちの中での言い伝えだと、魚に恋した人間が、魔女に頼んで半分魚にしてもらったって」
「なるほど…」
「…でも実際には、魚と人間の交尾によって生まれた、呪われた種だって言われてる。
…長老が言ってたから、たぶんそう」
「長老?」
「うん、自称だけど、自分が初めての人魚だって」
類は思った
魚と人間が交尾したとて、人魚が生まれるのか?
そんなことを思っている類の雰囲気を感じ取ったのか、ネネは言った
「わたしも、正直信じられないけど…わたしたち人魚の情報はその長老から聞くことしかできないから」
「…ネネ、お願いがあるんだけど」
類はネネをまっすぐ見つめた
「その長老、会えないかい?」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!