テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
北実side
差し込む光で、俺はゆっくりと目を覚ました。
北実(……もう朝か?)
昨日は、能力測定の余韻もあって、
気づけばすぐに眠ってしまっていた。
廊下に出ると、すでにあちこちから人の気配がする。
誰かの笑い声、足音、扉の開く音。
今日は──自由行動の日だ。
中庭に集まると、自然と顔ぶれが揃っていく。
南実「今日はどうするー?」
日向「特に予定は決まっていませんね。」
国雲「我は街をもう少し見たいアル!」
そんなやり取りの中、
誰ともなく、同じ名前が出た。
「「不思議の国のアリス」」
北実(……やっぱり、あそこだよな。)
結局、全員が同じ結論に落ち着く。
そこへ、エイラが小走りでやってきた。
エイラ「皆さん、確か今日は自由行動の日ですよね?」
北実「うん。街に出ようと思ってる。」
エイラはにこっと笑い、
小さな袋を差し出した。
エイラ「それなら、こちらを使ってください。」
袋の中には、
この世界の通貨らしき硬貨が入っている。
エイラ「勇者の皆さんには、生活費が支給されますから。今日は、これで足りると思います。」
米太「おっ、サンキュー!」
米太は受け取った硬貨を覗き込み──
その瞬間、ほんの一瞬だけ、表情が止まった。
米太「……ん?これ…?」
不思議そうな顔。
だが、次の瞬間には、いつもの調子に戻る。
米太「まあいっか! 行こうぜ!」
北実(……今の、なんだ?)
気にはなったが、
誰も特に何も言わない。
エイラも、特に気にした様子はなかった。
準備を整え、一行は寮を出る。
目的地は、もちろん「不思議の国のアリス」
あの、少しこぢんまりとした喫茶店。
北実(今日は、どんなことが起きるんだろうな…)
俺はそんなことを思いながら、
仲間たちと並んで歩き出した。
街のざわめきが、少しずつ近づいてくる。
そして、一行は喫茶店へ向かう。
俺たちは「不思議の国のアリス」に向かって歩き始めた。
街は相変わらず賑やかで、
行き交う人の声や露店の呼び込みが途切れない。
南実「またあの喫茶店か。でもなんか落ち着くよね。」
北実「まあな…」
そんな会話をしていると、
通りの向こうから、黒いローブの男が歩いてくるのが見えた。
レイヴン「……偶然だな。」
南実「あ、レイヴン!」
日向「お久しぶりです。」
特に驚く様子もなく、
レイヴンは自然に俺たちの横へ並んだ。
米太「また一緒かよ! なんか縁あるな!」
廉蘇「偶然だろ。てか、お前はもう少し静かにしてろ。」
レイヴンは何も答えず、
ただ歩調を合わせてくる。
そのまま数分歩き、
見慣れたこぢんまりとした建物が見えてきた。
──不思議の国のアリス。
木製の扉と、少し古びた看板。
前に来たときと、何も変わっていない。
…その時、陸斗がふと足を止めた。
陸斗「……待て。」
俺はその声に反応して、
扉の横へ視線を向ける。
そこには──
何もない。
南実「どうしたの?」
陸斗「……いや、何かいる。」
太希も眉をひそめる。
太希「……気配が、妙だ。」
その瞬間、
レイヴンが小さく息を吐いた。
レイヴン「……気づいたか。」
陸斗の言葉に応じるように、
扉の横の何もない空間が、
わずかに歪んだ。
次の瞬間──
そこに、巨大な影が現れる。
黒い体躯。
三つの頭を持つ、ケルベロスのような魔物。
ただし、牙も爪も、今は伏せられている。
南実「……は?」
米太「え、ちょ、でっか……!」
レイヴン「俺が召喚したやつだ。姿は消しておいていた。」
俺は思わず息を呑んだ。
北実(……ずっと、そこにいたのか?)
陸斗「……なるほど。警戒用か。」
レイヴン「店に入る前に、外を任せていただけだ。」
ケルベロスは一度だけこちらを見て、
静かに座り直す。
──敵意はない。
陸斗はそれを確認すると、
小さく頷いた。
陸斗「問題ない。行こう。」
何事もなかったかのように、
俺は扉に手をかけた。
そして扉を押し開けた次の瞬間、
ロン「いっけぇぇぇ!!」
甲高い声と同時に、
ロケット花火のような何かが、一直線に俺へ向かって飛んできた。
北実「──っ!?」
避ける間もない、と思ったその瞬間。
俺の目の前に、半透明の防御結界が一瞬だけ展開し、
ロケット花火はぶつかる寸前で止まり、そのまま床に転がった。
太希「……ったく。」
太希が腕を下ろす。
ロン「うわっ!? あっ、あれ!?」
奥から、慌てた足音。
リン「ロン!! 何やってるの!!」
金髪を一本結びにしたメガネの女の子、リンが飛び出してくる。
リン「またお客さんに向かって撃って、何やってんの!!」
ラン「ご、ごめんなさい……!」
ふわっとした口調で、
低い位置で金髪を二つ結びにした女の子、ランが頭を下げる。
その後ろから、
ルン「……騒がしいと思ったら。」
レン「またロンかよー!」
少し真面目そうなルンと、
いかにも元気なサッカー少年風のレンも姿を見せた。
ロン「だって! 開いたから反射的に!!」
リン「反射で撃つな!!」
──いつもの光景だ。
俺が苦笑していると、
横にいたレイヴンが小さく息を吐いた。
レイヴン「……相変わらずだな。」
ラン「あ、レイヴンさん!」
リン「いらっしゃい。今日は一段と人数多いんだね。」
ロン「あ、レイヴンさんだ!」
レン「また来てんじゃん!」
ルン「常連ですしね。」
レイヴンは軽く手を上げただけで、それ以上は喋らない。
俺は少し意外に思った。
北実「……知り合いだったのか。」
リン「まあね。この人、よく一人で来るから。」
ラン「静かで、でも優しいお客さんなんですよ〜」
レイヴン「……盛るな。」
そのやりとりを見て、
なんとなく場の空気が緩む。
俺たちは席に案内され、
それぞれメニューを開いた。
──なかなか種類が多い。
小さなきのみのタルト
星形のクッキー
色が変わるソーダ
もちもち串
焼き菓子〈団子風〉
抹茶のクリームタルト
空色パフェの金平糖かけ
南実「これ可愛くない? 形が猫だよ!」
愛蘭「……この焼き菓子、構成が面白いね。」
米太「俺これ全部行くわ!!」
わちゃわちゃと注文が決まっていく。
しばらくして料理が運ばれ、
笑い声が店内に広がった。
満足するまで食べて、話して、
俺たちは店を出た。
外に出ると、
街は昼の賑わいを増していた。
全員で並んで歩き、
露店を巡り、
道端の魔道具を眺める。
米太「なあなあ! あれ欲しくね!?」
清雨「無駄遣いアルよ。」
そんなやりとりをしながら歩いていると、
大きな建物が視界に入った。
剣と盾の紋章。
出入りする人々は、武器や防具を身につけている。
北実「あれ……」
日向「冒険者ギルド、でしょうか?」
国雲「そうらしいアルね!」
レイヴン「……興味あるなら、入ってみるか。」
ギルドの扉を押し開けた瞬間、
一気に音が押し寄せてきた。
笑い声、怒号、酒の匂い。
依頼書を叩く音、剣を床に置く金属音。
ここが「冒険者の巣」だと、一瞬で分かる。
北実「すごいな、ここ。」
南実「人、多っ!」
米太「テンション上がるぜ!!」
俺たちがきょろきょろしていると、
やけに通る声が飛んできた。
?「おっ、なんだなんだ? 見ねえ顔だな!」
振り向くと、
体格のいい男が、腕を組んでニヤッと笑っていた。
?「新人か?ははっ、安心しろよ。」
その言い方が、いかにも
先輩風吹かせたいですって感じだった。
バルド「自己紹介しとくか!バルドだ。このギルドじゃ、まあまあ古株だ!」
北実(自分で言うんだな……)
すると、横からひょこっと顔を出す小柄な男。
ソフ「えーっと、ソフでーす!細かいことはよく分かんないけど、冒険者やってまーす!」
語尾がふにゃっとしていて、
立ってるだけでどこか間抜けだ。
そして、ピースしながら言う。
ソフ「あ、ちなみに俺、方向音痴です!あと罠もよく踏みます!」
バルド「言わなくていい!」
次に、フードを被った男が前に出る。
雰囲気は暗いが口を開いた瞬間、印象が変わった。
ロッカ「僕はロッカです。一応、先輩たちと同じパーティーで……まあ、主にツッコミ役ですね〜」
そう言いながら、
バルドとソフをちらっと見て肩をすくめる。
ロッカ「……先輩方が自由すぎるのでね。」
最後に、しっかりした様子の少女が一歩前へ。
ユスティナ「ユスティナです。至らない点も多いですが、先輩方と一緒に活動してます。」
丁寧に頭を下げたあと、
バルドとソフの方を見る。
ユスティナ「……先輩、あまり騒ぎすぎないでくださいね。」
バルド「おいおい、固いなぁ!」
ソフ「えへへ、先輩だから許される!」
バルド「で、俺たちのパーティー名は──いつか強くなる隊だ!」
ドヤ顔で言い切る。
その瞬間。
レイヴンが、わずかに視線を動かした。
レイヴン「……お前ら、まだその名前使ってるのか?」
バルド「あ?」
ソフ「おっ?」
ロッカ「……あ。」
ユスティナ「……」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、ソフの顔がぱぁっと明るくなった。
ソフ「え!? レイヴンじゃん!!久しぶり〜!! 元気だった!?」
ものすごい勢いで距離を詰める。
ソフ「ねえねえ! 最近どこで何してたの!?相変わらず無口! それでそれで──」
レイヴン「……近い。」
明らかに嫌そうだ。
バルド「ははっ。昔、同じ依頼で何回か組んだんだよな!」
ロッカ「正確には、先輩たちが一方的に絡んでただけですけどね…」
ユスティナ「はい…ですね…」
ソフは、まったく空気を読まずに続ける。
ソフ「ねえレイヴン!今度また一緒にやろうよ!俺、前より強くなった気がするんだよね!」
その次の瞬間。
ソフの足が、ふわっと浮いた。
ソフ「え?」
気づいた時には、
ソフは床に転がっていた。
ソフ「わっ!? あれ!? 俺今、立ってたよね!?」
ロッカ「うわ〜、また先輩投げられてる。」
ユスティナ「……先輩。ですから、距離感を……」
ギルドの喧騒の中で、
先輩面したがる冒険者たちと、
それを全く気にしないレイヴン。
俺はなんとなく思った。
──この「いつか強くなる隊」、
これからも色々やらかしそうだな。
その後、
流れで俺たちは「いつか強くなる隊」に
冒険者ギルドの中を案内してもらうことになった。
バルド「よしよし! じゃあ先輩が教えてやるよ!」
ソフ「新人講座だね! 俺も説明するよ! ……たぶん!」
北実(この二人、めちゃくちゃ嬉しそうだな……)
バルドは胸を張って、
掲示板の前に立つ。
バルド「まずはここだ!依頼掲示板! 冒険者の命綱!」
壁一面に貼られた紙。
魔物討伐、護衛、採取、配達……
内容も難易度もさまざまだ。
ソフ「ランクが上がるとね!
もらえるお金も増えるんだよ!……あと危険度も上がる!」
レイヴン「そのくらい当たり前だろ。」
ソフ「うっ……」
ユスティナ「補足しますね。ランクは実績制で、地道に依頼をこなすのが一番です。無理な依頼を受けると、命を落とすこともありますので……」
急に真面目な話になって、
バルドとソフも一瞬だけ黙る。
次に連れていかれたのは、
カウンターと、奥の訓練スペース。
バルド「ここで登録とか報告な!あと、揉め事起こしたら即出禁だからな!」
ソフ「俺、三回注意された!」
ロッカ「誇ることじゃないですよ先輩。」
そんな感じで、
あちこち回りながら説明を受けていると──
ふと、バルドが俺たちを見て言った。
バルド「にしてもさ。」
ソフ「うん?」
バルド「人数多くね?」
北実「まあ……そうだな。」
バルド「しかも、装備も揃ってるし、雰囲気が新人って感じじゃねえよな。」
ソフ「……あれ?そういえばレイヴンが一緒にいるのも変だよね?」
ソフが首を傾げる。
ソフ「レイヴンってさ、あんまり人と組まないじゃん?」
その言葉に、
周りの空気が一瞬だけ止まった。
ロッカが、俺たちの顔を順に見る。
ロッカ「……えっと、もしかして…」
ユスティナも、はっとしたように目を見開く。
ユスティナ「皆さん……ただの冒険者、ではありませんよね?」
俺は少し迷ってから、正直に言った。
俺「俺たちは……勇者として、この世界に召喚された。」
一拍。
次の瞬間──
バルド「は?」
ソフ「え?」
ロッカ「……え?」
ユスティナ「…………」
バルドは固まったまま、
ゆっくり口を開く。
バルド「……勇者?あの、魔王倒すやつ?」
ソフ「えっ、伝説の!?え!? 今!? 目の前!?」
ロッカ「……ちょっと待って情報量が多すぎる…」
ユスティナは、
一歩下がってから、深く頭を下げた。
ユスティナ「ご無礼をお許しください。
まさか……勇者様方とは……」
バルド「い、いや!俺は別に信じてないとかじゃなくてな!?」
ロッカは額に手を当てて、ため息をつく。
ロッカ「……道理で。雰囲気が普通じゃないと思った。」
レイヴンは、少し離れたところで腕を組み、
興味なさそうに言った。
レイヴン「今さら気づいたのか?」
バルド「うるせえ!!」
ギルドの喧騒の中、
一気に空気が変わる。
先輩面して満足そうだった二人は、
今度は別の意味でそわそわし始めていた。
バルド「……あー、その……改めて言うとだな。」
ソフ「僕たち!応援してるからね!! 勇者!!」
北実(急に距離感がおかしい。)
ロッカは苦笑し、
ユスティナは小さく微笑んだ。
ユスティナ「この出会いが、良い縁になりますように。」
俺は、少しだけ肩の力を抜いた。
冒険者ギルドでの最初の知り合いが、
この面々で良かったのかどうかは、
正直まだ分からないけど。
少なくとも、
退屈しないことだけは確かだった。
その後、
なぜかそのまま「いつか強くなる隊」と一緒に街をふらつく流れになった。
バルド「せっかくだしよ!街案内もしてやるよ、勇者様!」
北実(完全にご満悦だな……)
ユスティナ「……街中ですし、あまり目立つ行動は控えてくださいね。」
通りを歩くと、
露店の呼び声や、鍛冶屋の金属音が耳に入る。
バルドは、
「ここは武器屋だ!」
「この酒場は情報が集まる!」
と、やたら張り切って説明してくる。
バルド「俺たちもよく使うんだぜ!……金がある時だけな!」
ソフ「俺はだいたい覗くだけ!」
北実(それ利用してるって言うのか?)
ロッカ「先輩たちは、情報だけ集めて満足するタイプなので。」
途中、子どもが走り抜けたり、
荷馬車が通ったりするたびに、
ギルドとは違う街の顔が見えてくる。
ソフ「ねえレイヴン!この前の路地、覚えてる!?あそこでさぁ──」
レイヴン「……覚えてない。」
ソフ「えぇ!?俺、三回転んだのに!?」
バルド「それ忘れられて当然だろ!」
俺はそのやり取りを横目で見ながら、
ふと思った。
北実(勇者とか魔王とか関係なく……)
こうして歩いている時間は、
ただの街歩きで、
ただの仲間同士みたいだ。
ユスティナが、
少し後ろから俺に声をかけてきた。
ユスティナ「……勇者様方も、緊張されているのでは?」
俺「まあ……少しはな。」
ユスティナ「でも、こうして街を歩けるうちは、まだ平和ということですね。」
その言葉に、
俺は小さく頷いた。
バルド「おっ!次はあそこ行くか!」
ソフ「え!? あそこ!?俺、前回怒られたとこじゃん!」
ロッカ「自業自得…」
笑い声が、通りに溶けていく。
いつか強くなる隊と、俺たち。
目的も立場も違うけど、
この時間だけはただ、
同じ街を歩く冒険者だった。
露店通りを抜けて、
鍛冶屋の前で足を止め、
訓練場を遠目に眺め、
薬屋の匂いに引き寄せられては覗き込む。
俺たちは、
「いつか強くなる隊」と一緒に、
街の中をあちこち巡っていた。
バルド「ここは修理屋だ!武器ぶっ壊したらまず来い!」
ソフ「俺、三回お世話になった!」
ロッカ「それは誇らないでください。」
ユスティナ「……依頼で消耗する前提なのが、
少し不安ですが。」
歩くたびに、
この街が暮らす場所なんだと実感する。
しばらくして、
通りの端に、少し落ち着いた建物が見えてきた。
石造りで、派手さはない。
けれど、どこか重みのある雰囲気。
日向「……資料館、でしょうか?」
入口の看板に、
そう書かれていた。
バルド「お、珍しいな。俺たちもあんまり来ねえぞ。」
ソフ「字、多いからね!」
ロッカ「それが理由ですか……」
俺たちは顔を見合わせて、
そのまま中へ入る。
中は静かだった。
外の喧騒が嘘みたいに消えて、
紙と石の匂いだけが漂っている。
壁には古い地図。
棚には年代ごとに分けられた本。
この世界の歴史や、国の成り立ちが並んでいた。
それぞれが興味のある棚へ散っていく中、
俺は、ふと一冊の本に目を留めた。
背表紙に書かれていた文字。
北実(これって…)
胸の奥が、わずかにざわつく。
前にエイラが、
600年前に人魔大戦が起こったと言っていた。
俺はその本を棚から抜き取り、
近くの机に腰を下ろす。
表紙は擦り切れていて、
何度も読まれた痕があった。
静かな資料館の中で、
俺はゆっくりとページを開く。
俺は、静かにページをめくった。
紙は黄ばんでいて、
ところどころ文字がかすれている。
かなり古い本だ。
おそらく、人魔大戦が起こった当時に書かれたものだろう。
人魔大戦
それは、人間と魔族の存亡を賭けた、
未曾有の大戦であった。
戦いの始まりは、
魔族による一方的な宣戦布告である。
魔族は人間を「下等なる存在」と断じ、
世界を支配するため、
人間を滅ぼすことを目的として侵攻を開始した。
突如として襲いかかる魔族の軍勢。
村は焼かれ、
都市は蹂躙され、
罪なき人々の血が大地を赤く染めた。
人間は、
理不尽な暴力に抗うため、
やむなく武器を取った。
勇敢なる兵士たち。
知恵を尽くす賢者たち。
そして、
民を守るために立ち上がった無数の英雄。
戦いは熾烈を極め、
昼夜を問わず続いた。
魔族は強大な魔力を振るい、
恐ろしい魔物を操り、
人間を恐怖で支配しようとしたが――
人間は決して屈しなかった。
希望を失わず、
互いに手を取り合い、
知恵と勇気で魔族に立ち向かった。
戦争は二年以上に及び、
多くの犠牲を払いながらも、
ついに転機が訪れる。
*それが*双子の勇者の出現である。
選ばれし双子の勇者は、
神より授けられた力をもって戦場に立ち、
我々人間の軍を導いた。
彼らの存在は、
人々に希望を与え、
絶望の戦場に光をもたらした。
数多の戦を経て、
双子の勇者はついに
魔族を率いていた魔王のもとへ辿り着く。
激戦の末、
魔王は討ち倒され、
魔族の軍勢は統率を失い、敗走した。
こうして人間は勝利を掴み、
世界は再び安寧を取り戻したのである。
魔族はその力を恐れられ、
以降、世界の脅威として語り継がれることとなった。
この大戦は、
人間の正義と勇気が、
邪悪なる魔族を打ち破った
偉大なる歴史として、
永遠に語り継がれるべきものである。
……そんな内容だった。
俺は、しばらく黙ってページを閉じる。
北実(なるほどな……)
エイラが言っていた話。
それがこれなんだろう。
魔族が先に仕掛けてきて、
人間が必死に抵抗して、
最後は双子の勇者が魔王を倒した。
──だから今も、
双子の勇者が特別視されている。
そう考えると、
全部が一本の線でつながった気がした。
俺は特に違和感も覚えず、
ただ静かに思った。
北実(……すごい話だな。)
この世界の平和は、
そんな壮絶な戦いの上に
成り立っているんだ、と。
俺は本を机に置き、
もう一度だけ表紙を見てから、
ゆっくりと席を立った。
本を閉じたあと、
俺はそのまま資料館の中を見回した。
気づけば、
みんなそれぞれ好き勝手に動いている。
米太は分厚い本を持ち上げては
「これ絶対筋トレ用だろ!」とか言ってるし、
ソフは地図を逆さに持って
「この国、ひっくり返ってない?」と真顔で聞いている。
バルド「だからそれ逆だって言ってんだろ!」
ロッカ「先輩、その説明もう三回目…」
ユスティナ「……静かにしてください、ここ資料館ですよ?」
日向は古い魔法理論書を読みながら、
「なるほど……」と小さく頷いているし、
南実は展示されている古代武具を見て、
「これ動いたらヤバそうだな」とか言ってる。
いつの間にか、
調べ物というより
半分ふざけて、半分本気で、
そんな空気になっていた。
しばらくして。
?「……あれ?」
聞き覚えのある声がした。
振り向くと、
本棚の間から小さな影が現れる。
エイラだった。
エイラ「あ、やっぱり北実さんたちでしたか。皆さんも、調べ物ですか?」
俺「まあ、そんな感じだな。」
エイラは胸の前で本を抱えていて、
どうやら本当に資料を探しに来ていたらしい。
バルド「おっ、この子が君らの案内役か!」
ソフ「勇者の保護者みたいな人だよね!」
エイラ「ほ、保護者ではありませんっ……!」
少し慌てながらも、
エイラは小さく笑った。
そのまま自然に輪に混ざって、
俺たちはあれこれ話し始める。
この街の昔の話。
資料館に残っている変な記録。
「いつか強くなる隊」が昔やらかした失敗談。
ソフ「いやー、あの時は本当に死ぬかと思ってさ!」
レイヴン「……何回目の話だ。」
ロッカ「定期的に蒸し返されますからね。」
エイラも、
エイラ「そんなことがあったんですね……」
と興味深そうに聞いていた。
どれくらい時間が経っただろう。
低く、重たい音が響いた。
教会の鐘だ。
資料館の空気が、
その音で一気に引き締まる。
その瞬間。
エイラが、
ほんの一瞬だけ──びくっと肩を跳ねさせた。
北実「……?」
エイラ「あ、い、いえっ!ちょっと驚いただけです!」
慌てて笑顔を作る。
エイラ「その……音が大きいと、びっくりしちゃうだけなので……!」
北実(……怖がり、なのか?)
深くは追及せず、
俺は軽く頷いた。
日向「もうこんな時間なんですね。」
ユスティナ「そろそろ戻ったほうが良さそうです。」
バルド「おう!今日はなかなか楽しかったな!」
ソフ「また一緒に来ようね!今度はちゃんと調べるから!」
ロッカ「……そのちゃんとが不安だけど。」
夕方の鐘の余韻が残る中、
俺たちは資料館を後にした。
街は、
少しずつ夜の色に染まり始めていた。
寮に戻ると、
昼間の静けさが嘘みたいに、空気が一気に緩んだ。
米太「ただいまー!」
米太の声を合図にしたみたいに、
みんなが談話スペースに集まってくる。
ソファに倒れ込む米太、
テーブルに肘をついてくつろぐ日向、
椅子を引きずりながら座る南実。
バルド達とも別れ、
いつものメンバーだけになったことで、
場の雰囲気は完全に寮モードだった。
米太「今日めっちゃ歩いたよなー!もう足が棒なんだけど!」
日向「自業自得でしょう。途中で無駄に走るからですよ。」
南実「でも楽しかったよね。街、思ってたより色々あったし!」
そんなやり取りをしていると、
扉の向こうから小さな足音が聞こえた。
エイラだった。
エイラ「皆さん、お疲れさまです!」
手を軽く振りながら、
いつもの調子で近づいてくる。
エイラ「明日の予定なんですが……ちょっとした訓練を行うことになりました!」
その一言で、
場の空気がぴしっと変わる。
北実「訓練?」
エイラ「はいっ!明日はゲストの方をお迎えして、皆さんの固有スキルを本格的に見てもらいます。」
日向「ゲスト……?」
南実「え、誰それ?」
エイラは少しだけ意味ありげに笑った。
エイラ「それは、当日のお楽しみです!」
米太「なになに!?なんか強そうな人!?」
翡翠「……ヒスイ、ちゃんとできるかな?」
太希「実戦に近い形なら、いい機会だな。」
利亜「ボク、頑張るんね!見えなくなる練習いっぱいするんね!」
琉聖は少し不安そうにしながらも、
静かに頷いていた。
琉聖「……動物さんたちの声、ちゃんと聞けるようにしないと!」
ワクワクする声と、
少しの緊張が混ざった空気。
それからしばらく、
明日の訓練の話や、
今日の資料館での出来事、
ソフの間抜け発言の再現まで飛び出して、
気づけば笑い声が途切れなくなっていた。
嗣行「そろそろ寝ないと、明日起きられないぞ。」
嗣行の一言で、
ようやく解散の流れになる。
それぞれが自分の部屋へ向かい、
廊下には足音だけが残った。
俺も部屋に戻り、
ベッドに腰を下ろす。
北実(明日は、固有スキルの訓練……か。)
楽しみと、
ほんの少しの不安を抱えたまま、
俺は目を閉じた。
寮の夜は、
静かに更けていった。
to be continue
暇つぶしで作ったこの世界の硬貨の画像載せときます。(チャットGPT産)