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北実side
差し込む光で、俺は目を覚ました。
北実(……朝か。)
体を起こすと、
寮の中がいつもより少し騒がしい気がする。
廊下に出ると、
すでに何人かが起きていて、
どこか落ち着かない様子で行き来していた。
米太「なあ北実、今日だよな?エイラが言ってた訓練。」
南実「絶対すごい人来るって!あの言い方、ただ事じゃないし!」
日向「浮かれすぎですよ。でも、気持ちは分かります。」
翡翠もそっと頷く。
翡翠「昨日からちょっと緊張してる…!」
利亜「ボク、朝からワクワクなんね!ちゃんと姿消せるかなぁ。」
そんな風に話しているうちに、
自然と全員が揃う。
エイラが現れ、
いつもより少しだけ気合の入った声で言った。
エイラ「それでは皆さん、準備はいいですか?」
全員が頷くのを確認して、
俺たちは寮を出た。
朝の街はひんやりとしていて、
石畳を歩く音がやけに大きく響く。
誰かが先に歩き出し、
誰かが少し小走りになり、
それでも全員、同じ方向を向いている。
城へ向かう道。
会話はあるのに、
どこか落ち着かない。
北実(どんな訓練なんだろう…)
そんなことを考えながら、
俺たちはソワソワした足取りのまま、
朝の城へと向かっていった。
城の訓練場に足を踏み入れた、その瞬間──
奥のほうに、見覚えのある人影が並んでいるのが見えた。
北実(……あれ?)
よく目を凝らす。
そこにいたのは、
レイヴン、ラン、リン、ルン、レン、ロン、
そしてフルーネとカリナ。
俺は思わず立ち止まった。
南実「え、ちょっと待って。あれ、全員見覚えあるんだけど?」
米太「うわっ、ほんとだ!え、あいつらがゲスト!?」
利亜「レイヴンさんいるんね!ってことは、つよつよ確定なんね!」
翡翠は目を輝かせて、一歩前に出る。
翡翠「わぁ!すごい人たちだね! なんかキラキラしてる!」
日向は一瞬だけ目を細めて、
相手の様子をじっと観察していた。
日向「……なるほど。そういうことですか。」
向こうもこちらに気づいたらしく、
反応はそれぞれだった。
ロンが真っ先に声を上げる。
ロン「わっ! きたきた!やっほー!」
レン「勇者のみんなだー!」
リン「久しぶりだね。」
ルン「…なんか前より4人くらい人数多いな。」
ルンは腕を組んだまま無言でこちらを見ている。
フルーネはふわっと微笑んで、
やわらかく手を振った。
フルーネ「おはようございます。今日もいいお天気ですねぇ。」
カリナ「いや〜、朝から訓練場とか元気だね。」
ロンはじっと俺たちを見てから、
ぱっと笑顔になる。
ロン「ねえねえ!みんなってつよいの!? すごいの!?」
翡翠もつられて、元気よくうなずく。
翡翠「うん!ヒスイたち、がんばってるんだよ!」
レイヴンは壁にもたれかかりながら、
俺たちを一瞥して、短く言った。
レイヴン「……来たか。」
その一言で、
場の空気がきゅっと引き締まる。
北実(……やっぱりこいつだけ、空気が違う。)
どうやら、
エイラが言っていたゲストというのは
この人たち全員のことらしい。
エイラは一枚の資料を掲げて、はっきりと告げる。
エイラ「それでは、説明しますね。固有スキルは昔から決められている分類に従って分けられます。これは、この世界で長い時間をかけて整理されてきたものです。」
そう言って、エイラは一つ目の分類を読み上げた。
エイラ「まずは、強化・回復型です。物や人を強化したり、弱体化させたり、回復させる能力ですね。」
名前が次々と呼ばれていく。
エイラ「北実さん、南実さん、米太さん、加奈登さん、那知さん……それから、ランさん。」
ラン「はい!」
エイラ「ランさんは、怪我だけでなく、壊れたものそのものを元に戻せる珍しい力です。」
ランは少し照れたように笑った。
エイラ「次は、放出・影響型です。自分の魔力を別の形にして放ったり、人や物に直接影響を与える能力になります。」
エイラ「日向さん、嗣行さん、廉蘇さん、瑛太さん、利亜さん。」
利亜「ボクのもここなんね!」
日向「……影響を与える、という意味では確かにここですね。」
廉蘇「ふん、まあ分かりやすい分類だな。」
エイラ「続いて、変化・変身型です。姿形や性質そのものを変える能力ですね。」
エイラ「日和さん、愛蘭さん、帝偉さん、普巳さん、国雲さん、翡翠さん、レンさん。」
翡翠「ヒスイここー!」
エイラ「レンさんは、自分の体を瞬発型・攻撃型・回避型の三つに切り替えて使い分ける能力です。」
レン「そう!状況で切り替えるの、結構楽しいんだぜ!」
国雲「物理法則をちょっと変えるのも、変化扱いアルか。」
エイラ「次は、操作・自動型です。人や物を操ったり、自動で能力が発動するものですね。」
エイラ「空斗さん、紅葉さん、太希さん、清雨さん……それから、カリナさん。」
カリナ「虫操るのも、まあ操作だよねー。」
エイラ「はい。カリナさんは、直径20センチ以下の虫を操る能力ですね。」
太希「自動発動の結界も、ここか。」
清雨「煙を動かすのも操作アルね。」
エイラ「続いて、創造・消滅型です。物を作り出したり、消したりする能力になります。」
エイラ「零王さん、リンさん、ルンさん、ロンさん、フルーネさん。」
零王「ボクもここなんね!」
エイラ「リンさんは、物を一時的に存在しない状態にする能力ですね。時間が経つと元に戻ります。」
リン「……便利だけど、疲れるんだよね。」
エイラ「ルンさんは、矢を放つ時に命中までの軌道が光として現れる能力です。」
ルン「命中率かなり上がるから便利だな。」
ロン「ロンはね!ロケットとかの爆弾、ばーんって作れる!」
エイラ「はい。ロケットや花火、爆弾などを作り出す能力ですね。」
フルーネ「私は、植木鉢から意思を持つ植物を生み出せます。」
エイラ「一つの植木鉢につき、一体まで、ですね。」
エイラ「最後は、特殊・特質型です。他のどの分類にも当てはまらない能力になります。」
エイラ「陸斗さん、海斗さん、帝夜さん、宮雷さん、叶英さん、琉聖さん、湾海さん、枢臣さん、レイヴンさん。」
枢臣「弾に魔法を込めるのも、確かに分類しづらいよな。」
全員の名前が呼び終わり、
訓練場には改めて緊張感が満ちた。
エイラはにこっと笑う。
エイラ「以上が、正式な能力分類です。このあとはこの分類ごとに、訓練していきますよ!」
ロン「やったー!つぎはなにするの!?」
翡翠「ヒスイ、がんばる!」
俺は自分の立ち位置を確認しながら、息を整えた。
北実(分類がはっきりした分、自分に求められる役割も、見えてきたな。)
本格的な訓練は、
これから始まる。
分類が終わると、エイラは軽く手を叩いた。
エイラ「ではまず、それぞれの分類ごとに分かれて、能力を発動する練習をしてみましょう!」
訓練場の空気が、一気に実践前のものに変わる。
俺たちは、分類ごとに分かれて並んだ。
強化・回復型の列では、
魔力の流し方や、対象の認識方法を中心に確認していく。
エイラ「北実さんは重さを、南実さんは速さを、ですね。対象をよく見て、魔力を一点に集中させてください。」
俺は目の前に置かれた、剣を見つめる。
意識を向けると、剣の存在感がじわりと増す感覚があった。
次の瞬間、剣が地面にめり込む。
南実「うわ、ほんとに急に重くなるんだね。」
南実も、小石を軽く放り投げる。
石は、弾かれたように飛び、壁に当たって跳ね返った。
南実「おぉ……これ楽しい!」
北実「楽しんでる場合かよ……」
一方、変化型のほうでは
翡翠「ヒスイ、もうちょっと寒いとこ行く!」
翡翠は冷気を放つ魔法装置の前に立ち、
少しずつ体を慣らしていく。
翡翠「さっきより、平気になった!」
日和「すごーい!じゃあ、私は!」
一瞬、日和の姿がふわっと変わり、猫耳と尻尾が現れる。
日和「にゃっ! かわいいー!」
それぞれの場所で、笑い声と驚きが飛び交っていた。
基礎練習が一段落すると、エイラが再び前に出る。
エイラ「では次は能力を使った戦闘練習です!」
エイラは杖を振る。
地面から、巨大なツタがうねり、
岩が盛り上がるように姿を現した。
エイラ「こちらは、攻撃や制御の練習用です。もう一方は、兵士さんや皆さん同士で、回復・補助能力の練習を行います。」
俺たちは二手に分かれた。
俺たちが配置につくと、ツタや岩との模擬戦が始まる。
ツタが、音を立てて迫ってくる。
日向「制御、いきます!」
日向が手をかざすと、
ツタの動きが一瞬鈍る。
利亜「今なんね!」
姿を消した利亜が、ツタの影に回り込む。
廉蘇「利亜、そこどけ!」
廉蘇の超音波の衝撃と共に、ツタが弾け飛ぶ。
その中で──
南実が、妙に目を輝かせていた。
南実「ねえ北、ちょっと思いついたんだけど。」
北実「……嫌な予感しかしないんだけど。」
南実は、俺の襟を掴む。
北実「は!?ちょ、待──」
南実「速さ、最大!」
次の瞬間、俺の体が投げ飛ばされた。
北実「なっ!?」
空中で、必死に剣を握る。
反射的に、能力を使った。
北実「重さ……全部、乗せる!」
剣が、異常な重量を持つ。
落下と加速が重なり──
地面ごと叩き割るような衝撃が走った。
ツタと岩が、一気に砕け散る。
一瞬、訓練場が静まり返る。
俺「おい、南!!こういうことすんなら 先に言え!!」
南実「ごめんごめん!でもさ、今の、すごくない!?」
エイラ「……!今のは、能力の組み合わせ技ですね……!」
レイヴン「……実戦向きだな。」
その場の空気が、一気にざわついた。
別の場所では、
那知が兵士の疲労した腕に手を当てている。
那知「少し時間はかかるが、確実に回復する。」
太希の結界は、
攻撃が来るたびに自動で展開し、
兵士たちが感嘆の声を上げていた。
一通りの訓練が終わる頃には、
全員、汗だくになっていた。
エイラ「今日はここまでです!お疲れさまでした!」
解散の声と同時に、緊張が解ける。
寮に戻ると、気が抜けたのか、
また自然と能力を使い始める。
南実「ほら、ちょっと速くするだけなら大丈夫だよ!」
米太「おぉ!? 速ぇ!!」
翡翠「ヒスイ、ちょっとだけ適応するー!」
日和「待ってお兄ちゃん!お兄ちゃんも猫になってー!」
日向「落ち着いてください!絶対に嫌ですからね!?って、足はやっ──」
日和「捕まえたー!」
俺はそれを眺めながら、苦笑した。
北実「ほんと、元気だな。」
ひとしきり騒いだあと、
それぞれの部屋へ戻る。
俺もベッドに横になり、目を閉じる。
北実(能力の使い方も、組み合わせも……まだまだ、伸びしろはありそうだ。)
そう思いながら、
俺はゆっくりと眠りに落ちた。
to be continue