コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
真っ暗で何もないこの世界を照らす
私の希望 たった一つの光 だから あなただけはーー
in学校
A「花芽ちゃん!」
「この仕事って、こんなかんじでいいんだよね?」
花芽「うん、それで大丈夫だよ。よくできてる。」
にこっと微笑む花芽
A「ありがとう!」 照れながら笑う
手を振ってその場を去っていった。
A「花芽ちゃんって本当に頼りになるよねーっ!」
お友達が寄ってくる
B「わかる、高嶺の花って感じ😍」
B「でも、クラスの子とかと絡んでるところってあんまり見ないよね。」
コツコツと一階の廊下を歩く花芽
その顔に笑顔は宿らない
飲み物を買いに校舎外にある自販機へ
小銭を入れようとする
『チャリーンッ』
小銭を落としてしまう
「あっ」
男の手がその小銭を拾い上げた
浦野「あいよ」
花芽の手にとその小銭を渡した
「浦野くん」
同じクラスメイトの浦野。襟足まで伸びている髪をちょこんと結んで、いつも澄ました顔をしている。
「ありがとう」
いつものニコニコした顔で、笑いかける
浦野「……。お前っていつも、何考えてんのかわかんねえ顔してるよな。」
‘ピクッ’ 思わず口がぽかんと開く
「えぇ…。心外だなぁ…」
『ピッ』 自販機のボタンを押す
「そんなふうに見えるなんて」
『ガタンッ』いちごミルクの容器が落ちてくる
「小銭。拾ってくれてありがとね。」
少し濡れたいちごミルクを取り出してからそう言って、花芽はその場を去った。
『キーンコーンカーンコーン』
夕方の日がさす帰り道を、ポツポツと歩いてゆく花芽
(何考えてるかわからない、ね)
「「はなめねえちゃーーーん!!!!!!」」
とんだ大声で名前を呼ばれ、振り返ると
「レイちゃん」
花芽の心が、ふわふわと軽くなる
レイ「ねえちゃん今帰り?」
「そうだよ」
私のことを“花芽お姉ちゃん”と呼ぶこの子は
近所の家に住んでいるレイちゃん
小学5年生だ。
レイ「母さんが、姉ちゃん最近元気かなーって言ってたぞ!」
レイ「姉ちゃん中学校で大丈夫か⁉︎」
「うん。ちゃんとやってるよ。」
レイ「ホントか〜?? 姉ちゃん優しいからすぐ無理するだろ。」
「私には分あっちゃうんだからな!」
「ホントだよ。特に困ったこともないよ。」
レイ「それならいいけど…」 疑わしげな目で、こちらを見てくる
「でももし姉ちゃんが困ってたら、私がとんで助けに行くからな!!」
そう叫ぶレイちゃんに、思わず笑みをこぼす花芽
「ええ、それはとっても嬉しいな。」
「でも私は、レイちゃんと一緒にいるだけで幸せだよ。」
レイ「私も姉ちゃんといるときはすっごく楽しいぞっ!!」
そういって太陽みたいな笑顔で笑うレイちゃん
それにつられて私も楽しくなってしまう
レイちゃんだけが 私の太陽
レイちゃんの話を聞きながら帰る道中に、空は真っ赤に染まる
私は笑顔になってしまう
レイ「またね!はなめ姉ちゃん!」
そう言いながら大きく手を振るレイちゃんに
笑顔で手を振りかえす
レイちゃんが、私が生きていく希望である
『ガチャン』
薄暗いアパートの一室に夕日の明かりだけが差し込む
ドアへと寄りかかり座り込む花芽
どこか虚な目をしてぼーっとしている
(今日も疲れたなぁ)
(でも、レイちゃんに会えて良かった。)
ぐらっと立ち上がったかと思えばヨロヨロと歩きだす
ふとテーブルに目をやると、雑に置かれている二万円が目に入る
(香水くさい。家に来てたのか) 少し顔をしかめる
ふわっ
そのまま床に倒れ込んでしまう
嫌な記憶のフラッシュバック
(レイちゃん…。)
(私の、ただ一つの光…)そのままそっと目を閉じた
今日の天気は曇り こころなしか少し肌寒かった
『ざわざわ』
放課後になり、生徒は部活や下校の時間になる。
爽やかに歩いていた浦野に
「浦野くん」と声を掛ける
振り向いた浦野くんに、笑顔で
「また明日」と伝えた
浦野「おう、また明日」ちょっと意外そうな顔でそう言った。
そんな木曜日。
毎日同じ帰り道。昨日レイちゃんに会った道にでると、黒服の男がすごい勢いで遠ざかってゆくのが見えた。
その前には、赤いランドセルの女の子が、へたりと地面に座り込んでいる。
(あの背格好は、レイちゃん?)
「レイちゃん?」
そう声を掛けた
「レイちゃっ、、、」
はっとする 自分の体からすっと熱が引いていくのがわかる
そこにいたのは、腹部を刃物で刺されたレイちゃんだった
「レイちゃん!!!!!」
反射的に走り出していた
その倒れこみそうな小さな体を、あわてて受け止めた
「レイちゃん!!!レイちゃん!!!!」
頭が真っ白でとにかくパニックだった
刺されたところから出てきた血で、地面には血溜まりができている
「そうだっ、救急車よばなきゃっ」
手が震える
レイ「はな、、め、、、、ねぇ、、ちゃん?」
「レイちゃん!?」
「待ってて、今救急車呼ぶから!」
『プルルルップルルルッ』
「お願いレイちゃん!死んじゃ嫌‼︎」
レイ「そんな、、、泣かないで、、?」
「へっ?」
自然と目から涙がこぼれ落ちていたことに気づく
「あぁっあ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!!」
何かが切れたかのように、嗚咽が溢れる
『もしもし 火事ですか?救急ですか?』
「あ”っあ”あ”ぁ」
『落ち着いてください。火事ですか?救急ですか?』
「きゅっ救急です!助けてください!
「幼馴染の女の子がッ、刺されていて…ッ”」
『呼吸はありますか?出血はしてますか?』
「呼吸はあります…。出血がひどくて、、、」
レイ「はなめねぇちゃん…。だいじょぉぶ?」
‘ハッ’
「レイちゃん!?安心して、今救急車呼んだからっ!」
「もう大丈夫だからねっ!?」
涙でいっぱいのぐしゃぐしゃの顔で、レイちゃんに手当てをする
レイ「あぁ。わたしがねぇちゃんのことまもるっていったばっかなのに…」
「そんなことどうでもいいよ‼︎無理にしゃべらなくていいから‼︎」
「大丈夫だからっ」
そっと弱々しいレイちゃんの手を握った
レイ「ねぇちゃんに、、、かなしいおもいさせちゃった、、」
「ごめんね、、ねえちゃん」
「レイちゃん‼︎レイちゃん‼︎」
じわじわと、レイちゃんの体が冷たくなってゆくのがわかる
「嫌だよ‼︎レイちゃんが死んじゃったら私、もう生きていけない…」
レイ「はなめねぇちゃん。わたし、、ねぇちゃんのこと、、だあいすきよ、、、」
「レイちゃん!!!!!!!」
『ピーポーピーポー』
そんな 木曜日だった。
『ポツッ、、ポツ、、』
『ザーーーーーーッ。』
喪服の人々
レイの遺影
人形のように動かない花芽
殻の抜けたような眼差し
「花芽」
そこにいたのは浦野
彼も近所だったのだ
同じく葬式に呼ばれていた
「お前もレイのこと知ってたんだな」
「…今回のことは、本当に残念だったな。」
「お前が最後に立ち会っていたんだろ?」
‘ピクッッ’ 『ガッ』気づけば、衝動的に胸ぐらをつかんでいた
「「あんたに何がわかる…!!!!!」」
今まで見たことのないような花芽の顔に、浦野はおどろく
‘ハッ’
「ごめん……」 さっとその手を離した
「さよなら、、」
そのまま、おぼつかない足取りで花芽は帰っていってしまった。
(『だあいすきよ、、、』)
フラッシュバック
「レイちゃん」
(あなたはもう、この世界にはいないのね)
『ガチャン』 家に帰ってきた
(レイちゃん、私の光。
台所から、包丁を取り出す
(レイちゃんがいない真っ暗世界なんて、なんの価値もないよ)
雨が上がった
一筋の光が、部屋に差し込んだ
(さよなら)
『グサッ』
雨上がりの空の光を浴びて、彼女は死んだ
その背中に、黒い翼を宿して