ある倉庫の一角で、黒づくめの男たちから逃げるコナン、蘭、小五郎、安室の4人の中で緊張が走る。男たちから追い詰められたコナンは蘭の前に庇うように立った。
「毛利先生、ここは僕が引き付けますからコナンくんたちを連れて逃げて下さい。コナンくんは警察へ連絡を」
「…分かった」
「何言ってんだバカ!弟子をほっといて逃げる師匠がどこにいるだ!」
「ですが先生早く逃げないと…」
パァーン!
「蘭姉ちゃん隠れて!」
銃声が聞こえた瞬間、コナンは蘭の腕を引っ張り隙間に隠れ、警察に電話をした。蘭が様子を覗くと、男たちが安室に銃を向けていた。安室は拳を強く握り、小五郎はネクタイを外した。
「ふぅ…やっと追いついたぜ。さぁその男を渡してもらおうか」
「兄貴に連れてくるって言っちまったからな〜。ちゃんと渡してもらわないと困るんだよ」
「毛利先生…いざとなったら先生だけでも逃げて下さい」
「ふん!俺がそんなことするわけねーだろ!」
小五郎がそう言った瞬間、男たちは安室たちを撃ってきた。安室と小五郎は弾を避けながら近寄り腕が届く距離まで近づいた。
そして安室は一人の男の腹に右ストレートを打ち込み、その勢いで後ろにいたもう一人の男を殴ると、安室はしゃがみ足を引っかけ転ばした。
一方小五郎も男たちを次々と背負い投げなどの技をかけていく。
(安室さんもだけどおっちゃんもすげー)
そして起き上がってきた男にさらに左ストレートを打ち込み、両腕をおさえこんだ。
「は!安室さん、危ない!」
パァーン!
銃声がなると、安室の左頬から一滴の血が流れた。安室が振り向くと、ほかの男たちが倒れている中一人の男が安室に銃を向けていた
「くっ、やってくれるじゃねぇか」
「一体僕に何の用ですか…」
「何の用?それはあんたがいちばんよく分かってるんじゃないのか?なぁ探り屋のバーボン」
「…?!」
コナンは驚き、蘭と小五郎はよく分からないという顔をした。
「なぜその名を…。その名を知っているということは、僕がコードネーム持ちだと知っていてこんなことをしていると解釈しても?」
「あぁもちろんだ…」
「こんなことをして、ただで済むと思っているのか」
安室の雰囲気がいきなり冷たいものに変わり、小五郎と蘭が戸惑いを見せるのがわかった。
「ふん、ただで済む?その心配をするのはあんたの方じゃないのか?なぁ裏切り者のバーボン」
「っ…」
「NOCのアンタを誰が庇ってくれるかねぇ。少なくとも俺たちにとっちゃああんたを殺してわるいことなんてひとつも無いのさ」
「チッ…」
「あ、そうそう。ついでにそこにいる嬢ちゃんとボウズも貰っていくぜ。高く売れそうだからな」
男がそう言った瞬間、コナンは蘭を険しい顔をしたのに対し、安室は男の認識の甘さにため息をついた。
「何を馬鹿なことを。この子達はベルモットのお気に入りですよ?この子達に手を下した瞬間、あなたたちの命は無くなりますがいいんですか?」
男はいきなり大物の名前が出てきたことに不味そうな顔をし、1歩後ずさった。
その瞬間、窓がパリンッと割れる音がしたかと思うと、男が持っていた銃が弾け飛んでいった。
「「?!」」
安室は驚くも急いで自分も銃を取り出し男へ向かって撃ち、コナンも出てきたかと思うとサッカーボールを作り蹴飛ばした。
「安室さん!大丈夫?!」
「あぁ。何とかだいじょ…?!コナンくん危ない!」
「え?」
パァーン!
「うっ」
安室は失神していたはずの男がコナンに銃を向けていたのに気づき、慌てて庇った。
「安室さん!なんで!」
「子供を守るのに理由なんていらないだろう?」
「っ…」
安室は撃たれた左肩を抑えながらいった。コナンが悲痛な顔をすると、ちょうど警察が来たようで次々と男たちを連れていった。
「おい!大丈夫か?!」
「毛利先生、蘭さんは無事ですか?」
「あぁ。俺と蘭は大丈夫だ。けどお前その怪我…」
「今から病院に行くので大丈夫です。それよりコナンくん、警察呼んでくれてありがとう」
「ううん大丈夫だよ。それよりごめんね。怪我させちゃって…」
「大丈夫だよ。僕がしたくてやった事だ」
「安室、お前は一体何危ないことに突っ込んでるんだ」
「…それは後で詳しくお話させていただきます」
「安室さん…」
コナンが心配そうな顔で安室を見つめると、安室は小五郎から少し離れ、ある男に連絡をした。
「赤井か?一応礼を言っておく。必ず貸しは返させてもらうからな。まぁいつから待っていたのかは知らないが」
『ほぉ…、まさか君の口からそんな言葉が聞ける日が来るとはな…。長生きはするもんだ』
「バカにしてますか?それにあなたまだ若いでしょう」
『まぁ何らかの原因にせよ、組織と関わるのはこちらにも益がある。そんなに気にするな。こっちは違法捜査という借りがあるからな』
「そんなことを言うならきちんと最後まで報告書を書いて欲しいものですね」
ピッ安室はそう言うと一方的に電話を切り、今度は風見に電話をかけた。
「…風見か?俺だ。1発発砲した。それと狙撃も1発。証拠が残らないようにしっかりとやれ」
『分かりました。降谷さんは怪我とか大丈夫なんですか?』
「1発撃たれた。今から病院に行く。迎えに来てくれるか?」
『…分かりました。すぐ行きます』
「あぁ…」
ピッ安室は電話を切ると、コナンたちと一緒に準備された車へと向かった。
車まで来ると安室は助手席に座り、コナンと蘭と小五郎は後部座席に座った。
「すみません先生。先に病院に行ってもよろしいですか?」
「あったりめぇだ!お前そんな怪我してんのに病院に行かないなんて有り得ねぇだろうが!」
「ちょっ、お父さん…」
「で?組織、コードネーム、お酒、たしかバーボンとベルモットだったよな。あとは…探り屋だったか?あ、そうそう。なんで蘭とこのボウズがあのベルモットとか言うやつのお気に入りなんだよ」
「…聞かなかったことにさせて貰えませんか」
安室が申し訳なさそうに言うと、小五郎は前を向きながら呆れたように言った。
「ここまで巻き込んどいて聞かなかったことには流石に無理があるんじゃねぇのか?自己防衛もしなきゃならねーしな。そんくらいのことくらい分かるだろう?…潜入捜査官なら」
「「「?!」」」
「Non Official coverノン・オフィシャル・カバー。略してNOC。これは外国の非公式の謀報員や潜入捜査官に使われる言葉だ。だがお前がさっき話してた奴との会話の内容を考えるとお前はアメリカの謀報員じゃない。…公安だな」
珍しく当たる推理に、コナンと安室は息を飲んだ。
「…まさかそこまで見破られるとは思いませんでした」
「お前が俺に弟子入りしたのはその組織を探るためであって探偵だからじゃない。探偵の弟子になっとけば組織の情報が入ってくる可能性もあるからな」
「さすが毛利先生ですね…」
車の中に思い沈黙が立ち込める。コナンはなにか言おうと何回か口をパクパクさせた後に口を開いた。
「それで安室さんは大丈夫なの?組織に裏切り者って伝わってないよね?」
「多分大丈夫だと思うが、兄貴に言ったという奴がいたから分からないな…」
「分かった。じゃあ安室さん、悪いんだけど携帯貸してくれない?」
「え?」
コナンが言うと、安室たちは驚いた。
「どうしてだい?」
「どうしてって…ベルモットに電話をかけるからだよ」
「え、ちょっボウズ、あのベルモットに電話かけてどうするんだよ」
「そうだよコナンくん。危ないよ」
「大丈夫。安室さんさっき言ってたじゃない。僕と蘭姉ちゃんはお気に入りだって。まぁそれがわかって、なんであの時あそこにベルモットがいたのか分かったけどね」
小五郎と蘭が止めるとコナンは言った。
「でもコナンくん…」
「大丈夫だよ、安室さん。それに僕は貸しをあんたに作ったままなんてやだからね」
「…分かった」
「みんなは静かにしててね」
コナンはそう言うと安室から携帯を受け取り、ベルモットへ電話をかけた。
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