(黒髪の男の横顔が止まってる)
待ってください……あの日は渋谷のハチ公前にいました……友人から急に連絡が入って、約束の時間に着けそうにないって……ぶらぶら歩く……雨がぱらぱら降ってきた……雨宿りどこでしようか……あの服屋の前を通り過ぎた……
あの日あの街で待ち合わせをしなかったら、友人の仕事が長引かなかったら、折り畳み傘をバッグに入れてたら、店に入らなかったら、あの店員が現れなかったら、この服があの店にまだ入荷されてなかったら、すでに売り切れてたら……
それが、全部同時に現実なんだよ。
その日だけが特別な日じゃない。今だって、いつだってそうだ。「今この瞬間」、私は右を向いてカウンターを見る現実を選んでみた。左は選ばなかった。だから、あのボトルの並んでるのが見える。これが私の「選んだ」現実の風景だ。でも、「その瞬間」左の壁を見る現実を選ぶこともできた。そっちを選べばまた違う、ああいった窓枠やポスターや人が、私の現実になってたのだ。
ある選択をして、またはし続けて大金持ちになる現実もあれば、別な選択をして、またはし続けて、一文無しになる現実も同時に存在する。今の仕事をしてるのも現実だけど、別な仕事をしてる現実もある。今の奥さんと出会った現実もあれば、別な人と出会った現実もある。今の子供と出会った現実、出会わない現実……
そしてどの「現実」にも、「真実」が分有されてるんですね。
「真実の三角形」が「3次元にある全ての現実の三角形」に分有されてるようにね。
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