テラーノベル
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ご本人様とは全く関係ありません。
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動画に映るのは、動くイラストとテロップ。画面の中で笑うのは、キャラクターの“桃”であって、本当の桃じゃない。
でも——
「ねえ、今笑ってたでしょ?」
「笑ってない」
「絶対笑ってた!」
マイク越しの声だけで、空気が伝わる。
リスナーは、顔なんて見えていない。
それでも、誰がどんな顔で笑ってるのか、なんとなく分かる。
それがsxxnだった。
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収録中。
「はい、じゃあ次のコーナーいきまーす!」
桃の声は、いつも通り明るい。
でもその裏で、ほんの少しだけ息が乱れているのを、紫は聞き逃さない。
(今日、ちょっと無理してるな)
「ちょっと待て」
紫が割り込む。
「え?どうしたの急に」
「一回休憩」
「え〜まだいけるって!」
「いけない」
空気が一瞬止まる。
他のメンバーも「お?」って感じで黙る。
「声、上ずってる」
「……」
「リーダーなんだから、ちゃんとコンディション管理して」
いつも通り、少し冷たい言い方。
でもそれは、マイク越しでも伝わる“気遣い”。
「……バレた?」
桃が小さく笑う。
「バレるでしょ」
「やっぱ紫には敵わないな〜」
「別に勝ってない」
「勝ってるって〜」
そんな軽いやり取りで、空気が戻る。
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休憩中、通話は切らずにそのまま。
「ねえ紫」
「なに」
「さっき止めてくれてありがと」
「別に」
「あのまま続けてたら多分グダってた」
「だろうな」
即答。
「……ちゃんと見てるね」
「当たり前」
少し間があって、
「メンバーなめんな」
って、ぼそっと付け足す。
その一言に、桃はふっと笑った。
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顔は出てない。
本当の姿も、表情も、誰も知らない。
でも、
声のトーン。
言葉の間。
小さなため息。
それだけで“その人”が伝わる。
そして——
「じゃあ、再開!」
「今度は無理すんなよ」
「はいはい、マネージャーさん」
「違う」
「保護者?」
「違うって」
「じゃあなに?」
少しの沈黙。
「……相方」
その一言だけが、静かに落ちた。
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