テラーノベル
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――今日は、私の5歳の 誕生日。
……ほんとは、少し前。
「陛下は今、お忙しいようで…」
そう 聞いていた から、
ちゃんと 待ってた。
でも――
「セラフィナ様、本日は誕生日のお祝いですよ」
「おいわい?」
大広間の扉が、ゆっくりと開く。
(……わぁ)
ひかり。
花。
甘い におい。
「……すごい」
思わず、声が もれる。
「遅くなって、すまなかった」
低く、よく知っている声。
「ぱぱ!」
魔王は、いつもより柔らかい顔で、
わたしを 抱き上げた。
「五年だ」
「お前が、この世界に生まれてから」
その声は、誰よりも誇らしげだった。
「忙しくて、日をずらした」
「だが」
魔王は、はっきり言う。
「祝わぬなど、ありえん」
(ぱぱ……)
ぎゅっと、抱きしめられる。
(くるしい)
でも、いやじゃない。
「セラフィナ様、おめでとうございます」
リリアが、少し泣きそうな顔で頭を下げる。
「りりあ、いつもありがとう。だいすき。」
リリアは、完全に涙ぐんだ。
「クロウ」
魔王が、視線を向ける。
「警備は?」
「万全です」
クロウは即答するが――
視線は、完全に わたし固定。
「……おめでとう、ございます」
その声、ちょっとだけ優しい。
「ありがとう」
そう言うと、
クロウの耳が、赤くなった。
(?)
そして。
「姫」
「……いや」
少し照れた声。
「セラフィナ」
ノエルが、一歩前に出る。
「誕生日、おめでとう」
「これ」
差し出されたのは、
小さな、白い箱。
「ひらいて、いい?」
「もちろん」
中には、
小さな花の形のペンダント。
「魔力を抑える石だ」
「……きれい」
「君が、少しでも楽でいられるように」
ノエルの耳も、赤い。
「……ありがとう」
「俺からも」
アルトが、慌てて前に出る。
「これ!」
包みを開くと、
小さな木彫りの人形。
「……俺が作った」
「すごい!」
アルトは、完全に照れて俯いた。
(ふたりとも、へん)
「……」
魔王が、その様子を見ている。
無言。
重い。
「ぱぱ?」
「……ふむ」
魔王は、わたしを抱いたまま言う。
「よく、覚えておけ」
「この娘は」
ぎゅっと、腕に力がこもる。
「魔界の宝だ」
「――誰にも、渡さん」
(?)
でも、その声は
どこか――
嬉しそうだった。
音楽が流れ、
ケーキが運ばれる。
「ふーって するの?」
「あぁ」
「いっしょにしよ?」
魔王、クロウ、ノエル、アルト。
全員が、少し身をかがめる。
「せーの」
「ふーっ!」
ろうそくの灯が、消えた。
拍手。
笑顔。
視線、全部、わたし。
(……なんか、あつい)
でも。
あたたかい。
その夜。
わたしは、知らなかった。
この誕生日が――
溺愛が“守護”から“執着”へ変わった日
だということを。
そして。
五歳の姫は、
世界で一番、愛されて眠った。
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