私にとっての「幸せ」ってなんだろう。
今のままだとダメなことくらいわかっているけど、具体的な打開策があるわけでもない。
このままじゃいけないと思っていても、何も変わらないまま時間は過ぎてゆく。
毎日が同じことの繰り返しで、退屈さを感じているわけではないけれど、どこか物足りない気がしてならない。
「幸せになりたい」なんて贅沢は言わないから、「今の自分が好きになれるようになりたい」と思う。
きっとそれは簡単なようで難しいことだとも思う。
だからといって、何か特別なことをしようとも思わない。
そもそも特別ってどういうものなのかもよくわからないのだ。
ただ漠然と「みんなとは違う何か」を求めているだけかもしれない。
「もっと自分に正直になりなさい」
そう言われることもある。
その言葉の意味はよくわかるつもりだし、私だってできることならそうしたいと思っている。
だけど、それができないからこんなにも悩んでいるんじゃないか……。
「自分の気持ちに嘘をつくなって意味だよ」
私の話を聞いた友人はそう言った。
「無理なものは無理じゃん?」
私が反論すると彼女は困ったような顔になった。
「あんたの場合は、ちょっと違うかなぁ……」
「えっ?」
「なんかさ、あんたには『強さ』がないんだよねぇ~」
「…………」
「その点うちの旦那様の方が断然強い! だから安心してついてきなさい!」
「あっはい」
「ところで、あんたがここに来るまでどんな生活してきたのか知らないけど、今からどうするつもりなんだい? あてはあるのかい?」
「いえ特にないですね」
「そうか、じゃあとりあえずうちに来ないか? あたしゃこれでも一応冒険者ギルドの職員だしね。何か仕事くらい紹介できると思うんだけど」
「それはありがたいんですが、僕お金持ってないのですが大丈夫ですか?」
「ああ、それなら心配しないで良いよ。金がなくても働ける職場なんていくらでもあるし、それにうちの店は給料は安い代わりに飯代も宿代もただだよ」
「そうなんですか!?」
「まあ、その代わり朝早くから夜遅くまでの超ハードワークだけどね」
「うっ……」
「それでも良ければ雇ってあげようじゃないか」
「よろしくお願いします!!」
こうして僕は異世界に来て初めての仕事を手に入れることが出来たのだった。
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