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一生誰にも言わないと和樹は言った、私ももう会わない方がいいと言った、それなのにどうして?今頃?何考えているの?
冷蔵庫を開けて缶ビールを眺める、酔っぱらってしまいたかった。家を出て行きたかった、何より和樹に会いたくなかった
それから私はずっと夕方までピリピリしていた、飲み物をこぼした斗真を叱りつけ、幼稚園の出来事を必死で話す正美に上の空で、しまいには正美が愛想をつかせてどこかへ行ってしまった
夕方、子供達を乗せて康夫達と待ち合わせをしている焼肉屋に憂鬱な気持ちで向かった。炭火焼コンロの前に康夫と和樹が座っている
和樹が「元気そうだね」と私に微笑んだ、私も微笑み返した、でもそこから私は彼と目を合わせられなかった
私がサラダを混ぜていると康夫が私の肩を抱こうとして、思わず向いに座る和樹の目を意識して、体を引いてしまった
「どうしたっていうんだよ?」
康夫が不思議そうに自分のシャツを嗅ぐ
「俺、汗臭くないぞ?」
私はずっと和樹の顔を見ないで会話した、そのうち康夫が仕事の話を始めてホッとした
彼はご機嫌で和樹と話しこんでいるし、私は忙しそうに子供達が肉を食べる世話をする。私はずっと和樹の顔を見ないで時々二人の会話に相槌ちを打つ
私が二人を送っていくので康夫は二杯目のビールを飲み終え、和樹もビールのお代わりを注文する
「子供達のお水を取って来るわ」
私は席を外す
「一人じゃ無理だよ、和樹、行ってやって」
康夫は最後の一滴まで味わおうとしているみたいにジョッキを逆さまにして、残ったビールを飲み干しながら言った
和樹頷いてが立ち上がる、仕方がないのでお水のセルフサービスコーナーまで二人で歩いて行く
「予定日はいつ?」
「どうして出産予定日を訊くの?」
「・・・それが普通だろう?尋ねるものだよ・・・
俺が君達と距離を置いたら、康夫が変に思うよ」
私は水を汲むのに全集中しようとした、コップを持つ手が震える
「12月15日よ」
「12月・・・15日・・・」
被害妄想かもしれないけど和樹が頭の中で逆算し、受精した日を考えているのが感じられた
自分とあんな事をしておいてすぐに康夫と・・・と思われていたらどうしよう・・・もしかしたら和樹はそれを確かめに今夜私達の前に現れたのかもしれない
「近いうち・・・・東京に出張するんだ・・・・期間はわからない」
「そうなの?」
私は驚いて彼の顔を今日初めて見つめた
暫く私達は見つめ合った
ああ・・・彼はまた康夫と違うタイプのハンサムだ・・・本当にこの人と私はあんな事を・・・・
「・・・・最後に・・・君に会いたかった」
彼は私を熱心に見つめている
「君のことをずっと考えていた・・・」
「え?」
「あの夜の事を・・・」
私はぞっとして言った
「やめて!私は酔っていた!あなたが飲ませ過ぎたのよ!あれは過ちだったの!あってはいけないこと!」