私と少女が多目的トイレに入って行く。
「じゃあ始めよっか」
両手をゲームコントローラを持つような手の形の儘、少女に手を伸ばしていく。柔らかな形をした私の手が柔らかな壁に着弾する。指の薄い肉が薄い胸板に触れ、骨と骨がぶつかる。黒いキャラ服の上を滑らせると洗濯板のような肋骨が際立つ。手の甲で洗濯板を撫ぞるのを辞め、親指で持ち換える。洗濯板3枚ほどしかない厚みから発せられる熱で手を温める。小動物特有の高体温が陰鬱に冷凍された手と心を温める。手を重力に任せ、横腹を擦る。細い。臓物を見てみたくなるほど。親指で肉を臍に寄せてみる。柔い。こんなに肉が付いているのに…臓物が見たい。リョナを吟味してみようと思って、幾らか見てみたが、こんな発想が出るほど狂わされてしまった。臍を寄せると中指が脊椎にくっついてしまう。柔らかな肢体とのギャップに恍惚する。親指を回して腰椎から頸椎に向かって撫でる。両腕に触れずに私の肘が登ってゆく。無いはずの丘を目にしながらクライミングをする。私は日和山の登山者。
私の中指が登山道を登ると同時にキャラとキャミがフェードアウトしていき、2柱、太陽が静山の上に降臨した。人差し指の腹が肩甲骨に達して、親指は腋に達して、二の腕、肘、手首と黒と花が抜けていく。神の半身が公園の小さなトイレに舞い降りた。神とはこういうものを謂うのであろう。人体がそこにはあった。しかし、それは神だった。華奢ながらも妖艶を纏った愛らしさは寒そうに、所在無さげに左下を見ている。
四指で僧帽筋の肉付きを診る。やっぱり薄い。然し、筋肉は少しだけあるようで、若干の反作用を感じる。親指で鎖骨リンパ節を流してゆく。大胸筋の始まりと云うことも在り、太陽が少しだけ天を仰ぐ。これでもかなりの可動域を持つ程度には肉が付いているのだと云うことを実感させてくる。烏口突起に達する。其処から小胸筋に親指を降ろしていく。僅かながら膨らみが見られる。あぁこれが異性と云うものなのだな…此処は凝りやすい場所である。実際、私もくすぐりの時の弱点は此処になる。太陽が近い。2つの太陽が上に、外に、下に親指と同時に動く。まだ幼系なもので此れぐらいでは特に何の反応も得られないようだ。前鋸筋から仮肋へと指を滑らせる。斯くすると太陽が静山の上に乗っていることがハッキリと判る。私は小さくとも山であるモノを鳴らし、動かしたのだ。いや、正確には山も、山の持ち主も鳴いていないか…
…………グウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
「山の下の平野にポツンと在るユグドラシルを引っこ抜いた跡」からその音は聞こえた。たまたま持っていたお握りを山と神と太陽の持ち主である山に献上する。受け取った日和山は宣う。
「結局ぅ「くすぐりポイント」って何なの?」